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類い希なる資質と業界のポテンシャルが「面白い」。<Archetype*Ventures北原氏インタビュー>

化学バーティカルSaaS企業Sotasはシードラウンドとして、Archetype Venturesなどから1.1億円の資金を調達しました。新たな挑戦に向けて代表の吉元裕樹とArchetype Venturesの北原宏和氏が、Sotasの未来について語り合いました。

吉元:北原さん、今回は多くの出資候補企業の中からSotasを選んでくださり、ありがとうございます。北原さんには、お会いしてからずっと変わらず、いつも的確なアドバイスをいただき、僕の相談にも乗っていただきました。
 
北原氏:初めてお会いしたのは、昨年の5月だったから、もう1年くらいですね。きっかけは、サーキュラーエコノミーハブでしたね。

当時からサーキュラーエコノミー領域を探索していたのですが、スタートアップ領域だとそんなに多くなくて。いい人いたら紹介してください、と代表の加藤さんにお願いしていたんです。
 
吉元:僕もサーキュラーエコノミーハブに参加させていただいていて、そこで北原さんをご紹介いただいたのがきっかけです。
 
北原氏:約1年前から、2ヶ月ないし1ヶ月毎に1度くらいの頻度で、投資が決まるまでに合計10回くらい会って話しましたね。


第一印象は、「面白くなりそうだな」

北原氏:初めてお会いした時に思ったのはまず「希有な人」。スタートアップのマネジメント経験者で、化学というドメインの知識が深く、そこで起業しようとする人という掛け合わせはとても珍しく、「面白くなりそうだな」と感じました。 

吉元:初めてお会いした当初は、事業についてはまだこれから考えていくという段階でした。
 
北原氏:一番よいタイミングで知り合えましたね。まだすべてがこれからという段階でしたが、それ故に、ディスカッションを重ねて、見据えた事業の方向性の摺り合わせができたと思います。
投資家の立場としては、投資させていただく前に、起業家と議論したり、お互いの相性を見られる時間があるのは非常にありがたいことです。

北原さんはどの投資家さんとも違うニュータイプ

吉元:北原さんの第一印象は聡明な方、そしてきっちり判断軸のある方と感じました。
僕たちスタートアップが、ベンチャーキャピタルに相談を持っていくときの投資家さんの反応のタイプとして、まずは「面白いね、一緒にやろう」と賛同してくださる方、「ちょっとこれだと厳しいかもね」と率直に伝えてくださる方、北原さんはどちらとも違う。「この状態だと難しいんだけど、ここのところをもっとクリアにしたら見えてくるものあるよね」という感じで、道筋に光りを指してくださる。ご自身のこれまでの知見を元に客観的に判断し、でもそこで終わりではなく、前向きなアドバイスをいただけたのがすごくありがたかったです。

北原氏:サーキュラーエコノミーというこれから立ち上がっていく市場だけにフォーカスして参入していく以外にも事業構築のルートはある。海外のサーキュラーエコノミーないしケミカルの領域で伸びているスタートアップを調査して参考にしてみてはどうか?とアドバイスをさせていただいた時も、吉元さんはすぐ行動に移してくれました。

想像を超えていた「行動力」、動きながら調整する力

北原氏:吉元さんの話す過去のエピソードや、一緒に働いた方のお話しなども伺って、行動力に強みがある人だということは理解していたのですが、事業を進めていく中で、さらにタフな行動力を目の当たりにして、正直驚きました。あまりの働き振りにちゃんと息抜きを入れて切り替えられているのかと、逆に心配になることもあります(笑)
 
吉元:(謙遜)
 
北原氏:スタートアップのアーリーフェーズって、もちろん動きを決める前の緻密な分析も必要だろうけれど、それ以上に、動きながら確認していくことが重要だと思っています。もちろん事業設計はロジカルにすべきですが、そこで考えすぎてチャンスを失うこともあり得るし、頭でっかちになって柔軟性に欠けてしまうこともある。
 
吉元:このレガシーな化学産業というドメインで、サプライチェーンを変革するという大仕事をするには、この行動力こそが肝だと思っています。誰よりも僕自身が動いていかないメンバーもついてこない。そこは先頭切ってしっかりやっていきたいと常に意識しています。
 
北原氏:事業立ち上げフェーズでは、6-7割の精度で、動きながら適宜調整していくのは重要ですね。
 
吉元:僕の北原さんの印象は最初と大きく変わらないですね。
そうそう、僕が北原さんの存在のありがたさを特に感じる時、それは株主さんとの定例MT。あまり最初にご発言されることが少ない印象です。
 
北原氏:
 
吉元:それはあえてだと思っていて。他の株主さんのご意見も見て、全体を俯瞰されてから、この流れってみんなこういうことを話しているよね、というコメントでまとめて頂いていると思っています。
 
「既存産業に深く刺しに行く」という事業は、スタートアップが苦手としてきた領域だと思います。でもそこを信じてくださってSotasならいけると投資を決めていただいた、本当にありがたいです。

2人は「同じ船の乗組員」ときにはバチバチも。

北原氏:それにしても起業家と投資家の関係性って難しいですね…よく使われる表現かもしれないですが、「同じ船の乗組員」。Sotasにとって、そういう存在になりたいなってのは純粋に思っています。

投資家って、何社ものスタートアップに投資するわけなので、あえて悪く言うと、別に1社がうまくいかなくても他がホームランになれば良いというポートフォリオで考えているケースもあると思います。でも、そういう気持ちじゃいけない。投資家にとっては数ある投資支援先スタートアップのひとつとも言えるけれど、それぞれの起業家からすれば、すべての人生をかけた事業です。その仲間のひとりとしてコミットする。そこは常に意識しています。

起業家と投資家は、事業を進めている時は同じ方向を向いていられるのですが、たとえばファンドレイズのタイミングなどは、投資家としてできるだけ良い条件で出資したいという気持ちは正直あります。その時には、シビアに議論することもあると思います。だけれどそれが終わったら、引きずらずにすっきり切り替える。そして同じ船の乗組員として、事業に貢献していきたいですね。

吉元:起業家と投資家って、ビジネスライクでバチバチもあるでしょうが、一方でそうでない時は、腹割って話せないと。「しょせん投資家と経営者の関係」なんてマインドになってしまうと、あまりうまくいくイメージがないですね。

北原氏:そのあたりの切り分け方って、結構重要ですよね。

吉元:資金調達がある程度終わって、事業に向き合う仲間となったら、ダメなことも率直に報告する、そこは絶対腹割って話すべきと思っています。というのも、投資家さんは、何十社、何百社も見ておられるので、ある意味傾向と対策がわかるのでは…と。3ヶ月早めに話をしていたら、何とか事なきを得られたのに、話せず時間が経ってしまい、時すでに遅し…というケースもあると思うんです。だから僕は、悪いことこそ早めに話していきます。

北原氏:Badニュース/Goodニュースという意識を持ち過ぎないという考え方もひとつですね。

吉元:今の事業の状態を単純に、フラットに、ありのままに、投資家に伝えるというスタンスですか?

北原氏:Goodニュースをピックアップするという気持ちはわかるけれど、そうした切り分け方をすると、反対にBadニュースというのも自然と生まれてくるわけで。Badニュースって株主に報告するのを少し躊躇しますよね。そういう場合には、この事業が今どうなっているかを伝えて、今どうすべきがベストなのかをフラットに議論するというスタンスで株主と向き合うと良い対話できる場合もあるのではないかと思います。


僕としては、北原さんはアニキ的な存在(照)

吉元:関係性…いや難しいですね…ニュアンスはわかるのですが…すごく難しいんですけど、良い意味で、どう言ったらいいかわからないのですが、アニキ的な感じでしょうか(照)
 
投資家の皆さんには色々と相談させていただいていますが、北原さんとは特に頻繁にやりとりさせて頂いていますし、お会いしている回数も多いと思います。これからもっと強烈なハードシングスがたくさん待ち受けていると思いますが、そういったハードな未来の中にあっても、北原さんにご相談できるというこの関係性は、僕にとっては今、本当に心強いです。
 
北原氏:他にも色々な良いアニキ達がいて、吉元さんを支援していると思いますが(笑)いまはそういうアニキかな?でも、フェーズが進んで、たとえば株主が増えたりすると、また関係性は変わってくると思います。アーリーフェーズだと、整っていなくてもある程度理解してもらえるけれど、ミドル・レイターと進んで、事業が軌道に乗ってくると、期待値も上がって行っていく。何も考えずにBadニュースを出していると、「なんでそんなこと起こるんだっけ?」など、不要な緊張を産んでしまうこともあったりします。
 
Badニュースがあるとき、もちろん伝えることは伝えるんだけど、それをどんな風に、どういう手順で伝えるか、ここはオープンに投げた方がいい、とか。「普通に共有すると株主目線だとこういう受け止め方をされる」という感じで、話していたりします。


類い希なる資質と業界のポテンシャルが「面白い」。

北原氏:まずは経営者である吉元さん自身の資質ですね。深いドメイン知識と、優しく寛容なところはもちつつ、仕事に対してはシビア、そしてハードシングスを乗り越えていける力強さとレジリエンス、客観的に見て、ここは卓越していると感じました。

事業としては、業界の構造を変えられるかがSotasのポテンシャルであり、チャレンジだと思う。化学産業のサプライチェーン、動脈だけでなく静脈にも入っていく。そして業界の構造改革において大企業の動きは重要ですが、サプライチェーンを通して絶対的な補完関係にある中小企業のDX。その二つを両立できるか、面白いチャレンジだと思います。僕のスタンスとして「投資できるな」と感じました。

本当はもっと早く投資したかったのですが、ファンドの立ち上げの関係で予定より遅くなってしまい。ですが吉元さんからは「北原さんと一緒にやりたいので待っています」と言ってもらい、とても有り難かったです。
 
吉元:ほかのベンチャーキャピタルともお話しさせて頂く中で、大手VCさんから投資の意向を示してくださったこともありました。結果として、方向性の違いもありお断りすることになったのですが、それ以上にArchetype Venturesさんを待ちたいという気持ちが強かったです。
 
北原氏:そのときは率直に嬉しかったですね。いい人に出会えたなと思いました。


「血を分ける」という覚悟で。

吉元:僕が北原さんに投資をお願いしたいと思った決め手は、まず海外も含めこの領域への解像度の高さ、知見の深さです。サーキュラーエコノミー領域の日本における第一人者であり、そこに対する絶大な信頼感があります。

吉元:起業家にとって投資家は、命をかけた事業の株を渡す相手です。まさに「血を分ける」という表現が一番しっくりきています。北原さんには、この方だったら自分の大切な血を分けて、一緒にやって頂きたいと感じました。
 
北原氏:「血を分ける」、ぐっとくるものがありますね。
 
吉元:それから、昨年12月プラスチックジャパンという展示会に出展した際、なんと北原さんも応援に来てくださり、さらに僕らと一緒に展示ブースに立って、お客様にセールスしてくださった。えーっと、投資前ですよ(笑)
 
北原氏:自分で売れるかどうか試したかったんです。プロダクトや業界に深い理解がない自分でも、価値を伝えられるくらいバリュープロポジションが研ぎ澄まされているか、そしてそれはお客さんに届くのかを直接見たくて。
 
吉元:僕も当然ながら、メンバーもとても勇気づけられました。
 
北原氏:この先Sotasのプロダクトがさらに研ぎ澄まされていくと、引き合いも増えてくると思いますが、目の前の数字を追いすぎて、将来に繋がらないところをがんばりすぎると、いつの間にか他のプレーヤーが入ってくるリスクもある。大きな変化に繋がるところを、常に見据えて動くことが重要だと思います。

この半年で、プロダクトの当初の構想になかった機能が追加されていくことを、最初に吉元さんから聞いた時は、仮説からずれるなと思ったし、まずは最初の構想をやりきってほしいという気持ちはあった。だけれど、このSotasという船は吉元さんが船長。すべてを現場で体験して、一番分かっている人の見ている世界の様子から描いていく必要があると思います。
 
吉元:業界の構造を変える、ということがSotasのポテンシャル、そしてその真逆にあるのが中小企業のDX。業界構造がこれまで変わらなかった要因はまさにここで、中小企業のデジタル化やDXの遅れが、現在の業界構造に繋がっている。この二軸を両輪で同時並行でしっかりと回していく、そうすることで化学産業全体のサプライチェーンを変革することに全てを懸けていきます。


北原さん、ありがとうございました!

Archetype Ventures
北原 宏和 氏
東京大学法学部、Carnergie Mellon University Heinz College of Public Management, University of Southern California Gould School of Law卒業。総務省にて地域活性化、Boston Consulting Groupにて情報通信、金融、製造などの幅広い業種での中期経営計画策定、新規事業開発プロジェクト経験を経て、Archetype Venturesに参画。


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