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【23,000字】忙しいビジネスマンのためブラジリアン柔術トレーニングの教科書【有料note】

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加齢で筋肉やホルモン分泌は衰えます。だからこそ筋肉をつけられたり、ホルモン分泌を促す作用のあるトレーニングは年齢を重ねるにつれ健康に生きるためには重要性が増すと言えます。

スタンダードなトレーニングでは筋肉に刺激を与えるため重量で過負荷をかける必要があります。(≒重たいものを持つ必要がある)

一方で、スタンダードなトレーニングは関節痛に悩んだり関節が摩耗している方にはしんどいものがあります。関節の消耗のような身体的な理由でストロングスタイルでずっと取り組むのは厳しいし、トレーニングで疲弊してしまっては肝心の柔術の練習に支障が出てしまいます。そんな30代、40代でも関節を労わりながら効果が見込めるトレーニング法があります。(後述)

また、トレーニングや柔術でも土台になるのは姿勢。姿勢改善でトレーニングも柔術の上達もどちらの効率も上げていきましょう。

柔術は幅広い年齢で楽しめる競技

私にとってライフワークともなっている柔術ですが、柔術は趣味としても幅広い年齢で楽しめる競技です。とはいえ身体は年齢に伴って衰えていくもの。30代、40代の方が若者と同じことをやってしまうと怪我につながってしまったり、成果が思うようにでないこともあります。

20代では全く気にならなかったような小さな支障、エラーが出始めるのは35歳くらいからではないでしょうか。なるべく早期(10代、20代でも)から本noteの内容に気をつけながら競技に取り組むことは確実に今後の柔術人生においてプラスに働きます。

全般的な柔術のためのトレーニングの考え方やメニュー等は下記のnoteをご参照ください。

加齢とともに放っておいたらどんどん衰えていく筋肉。逆に言うと効率的にトレーニングを柔術の練習に組み込むことで、技術練習の質を保つ上で重要な体力が向上したり、怪我をしにくくなったりといった効果が見込め、結果、柔術におけるパフォーマンス向上につながります。周囲との比較においても飛躍的にパフォーマンスを向上させることができるでしょう。今回は上記をベースにしつつ、時間がない中柔術にはげむ「忙しいビジネスマンのため」という切り口で解説します。

たとえあなたが50代以上であったとしても、「もうおじさんだから」と諦めず、トレーニングに取り組みましょう!

本noteの構成

このnoteの構成は下記のとおり、

・アンチエイジング

・トレーニングを継続するために

・姿勢の重要性について

・ビジネスマン柔術家の柔術の傾向と対策(どんな試合展開で何の要素が必要なのか)

・ビジネスマン柔術家が取り組むべきトレーニング実践編

・結局ビジネスマン柔術家は何をすればいいの?

といった構成で「忙しいビジネスマンが(仕事や生活に支障なく)柔術で強くなるために何をしたらいいのか」をわかりやすく解説することを目的としています。もちろん、ビジネスマンだけでなく将来忙しいビジネスマンになる(かもしれない)若者も本内容を取り入れて「選手生命を長くする」というのは確実にやったほうがいいでしょう。

アンチエイジングとしてのトレーニング

トレーニングで老化に抗う

トレーニングをしないと20〜30歳を100%として1年につき1%ずつ筋肉量は減っていきます。60歳のときには20歳の半分以下の筋肉量になってしまいます。筋肉だけでなく骨密度も低下するので「転倒→骨折→寝たきり」のコンボが炸烈する可能性は大です。柔術で例えると「ヒップスローでスイープ&マウントを奪われた挙句バックまでやってしまって大量失点」でしょうか。

これがトレーニングをしない人間の末路です。トレーニングをしないと老化スピードは速まります。棺桶直行できればまだマシですが、家族に負担を掛けるのは気が重いです。柔術のためだけでなく家族のためにもトレーニング。家族のいない方も保険料負担軽減のためにトレーニングをやりましょう。

性欲への解決法とアプローチ

そんなに公で話すものではないですが、性欲大事ですよね。あなたが元気いっぱいならこの章は読む必要はありません。元気にお過ごしください。

トレーニングはモチベーションもアップさせてくれます。その「やる気」の源となるのが男性ホルモンともいわれるテストステロン。テストステロンは活力に関して重要な役割を持つ性ホルモンであり、男性にとっては性欲、骨密度、体脂肪、筋量、筋力の増減に関与するだけでなく、赤血球や精子の生成にも関わる大切なホルモンです。

体感も少なからず感じていることかと思いますが、テストステロンは加齢で低下します。闘争心にも大きく影響し、トレーニングの効果自体にも大きな差が出ます。男女の筋肉のつき方の差もテストステロンの分泌量にあります。

男に戻るためにもトレーニング

「もう男じゃなくなってしまったのか。。。」と悩んでいるマスター世代の方も少なくないでしょう。

テストステロンはメンタルヘルスを健康に保つ上でも非常に重要です。テストステロンはストレス過剰でも低下してしまいます。テストステロンが低下することによってやる気も奪われるという悪循環。残念ながら現代社会からストレスを完全に取り除くことは難しいです。しかし、減ってしまうなら増やせばいい。打破するにはテストステロンを高めるアプローチが必要です。

成功者に性欲が強い人が多い件。皆さんテストステロン値も軒並み高いようです。結果論にもなりますが、試合に勝つ事でもテストステロンは上昇します。だからこその行動力であり、それがさらなる成功へと繋がるのではないかと思っています。私の周囲にいるトップ柔術家も経営者も非常にアクティブで性にも積極的。信じられないくらいのバイタリティです。

テストステロンでバイタリティを獲得する

彼らを突き動かすものはなんなのか?その要素を突き止めて取り入れれば成功者に近づくことが可能かもしれません。

そこでテストステロンです。テストステロンは分泌量が正常値であってもその上限近くと下限ではかなり幅があります。やる気が湧かない、性欲が低下するなんていうのも低テストステロンが原因の可能性があります。テストステロンの分泌は20代をピークに、その後加齢とともに衰えていきます。若い頃を思い出してください。漲っていませんでしたか?テストステロンの分泌は普通は徐々に加齢とともに衰えていきます。

40歳代から60歳代にかけては、男性の社会的責任とストレスが公私ともども高まる時期です。そのため、人によっては、ある日突然テストステロンの分泌が急激に減ってしまうために、自律神経失調のような不定愁訴を生じてしまうことがあります。これが、男性更年期です。

けっこうこわい男性更年期障害

「男性にも更年期がある」という説は、欧米では1940年代から様々な提唱と多くの検証がされてきましたが、21世紀に入り社会の成熟化や高齢化にともない抗加齢医学の関心が高まり、今では世界的な認知となりました。

なお、これまで「男性更年期障害」という表現が広く知られてきましたが、不定愁訴のひとつである「鬱症状」と「鬱病」の切り分けなど男性更年期障害の病態は複雑です。そこで、加齢と男性ホルモンの分泌低下に伴う症状として正確に定義するため、様々な議論を経て現在は「10日症候群」と呼ばれています。女性が加齢に立ち向かうように、男性も不能に立ち向かいます。

立たないけど立ち向かう。これいかに。テストステロン、どうすればいいの?テストステロンを高めるアプローチ、簡潔に伝えていきます。スクワットです。プラスして肥満傾向のある場合は有酸素運動。柔術とトレーニングと適切な食事と休養。

テストステロンの原料はコレステロールです。したがって、前提として栄養摂取が基本です。もちろん、コレステロールの過剰摂取は問題があり適度な運動を維持することと、十分な睡眠、規則正しい生活リズムを整えストレスを溜めない健康的な生活習慣が必要です。

人並み以上にテストステロンの分泌を増やすには、規則正しい生活リズムとストレスを溜めない生活習慣を基本に、日々の食生活とトレーニング量をバランスよく増やして、維持することが重要です。結局、アスリートを目指すことになるのではないでしょうか。

明るく快活で前向きな人が、健康的な習慣を続けていれば、落ち込む出来事があっても気持ちを切り替えてストレスを生活に持ち込みません。自ずとテストステロンの分泌が高まり、その精神作用で明るく快活、チャレンジで前向き⋯という好循環になっているのです。もちろん、筋肉の発達と体脂肪率の削減、シェイプアップにも好循環です。

テストステロンにアプローチする食事やサプリメントなどはまた別noteで書いていこうと思います。

トレーニングを継続するために

「トレーニングが重要」とは言っても、やらなきゃならないことでも先延ばしに、後回しにしちゃうのが人間。忙しいからこそ気をつけることもありますし、トレーニングそのものに楽しみを見つけて継続していきましょう。トレーニングによる効果は継続することでこそ最大化されます。

運動によって幸せになる

20分以上運動をすると、エンドルフィン(幸せホルモン)が分泌され高揚感が増します。筋肉量の増加を抜きにしても、柔術やトレーニングを行うことでその場でのご褒美もあるわけです。報酬系への好循環。

トレーニングで作られた乳酸が脳細胞と結合し、不安を緩和する分子として機能します。運動による身体の変化は内面からも変化をもたらしてくれます。米国シダーズシナイ医療センターの研究報告によると、最近では孤独感も緩和してくれることがわかってきました。

柔術をやりに行けば孤独は感じないと思います。おひとりさまで家で孤独を感じても柔術道場に行けば孤独は感じないのではないでしょうか。ジムや道場行きましょう。社交の場としても機能します。

定期的な運動によって内因性カンナビノイドの結合部分の増大により脳が敏感になり喜びを感じやすくなり、孤独感の解消にも繋がります。トレーニングでもオキソトキシンは分泌されますし、人と触れ合ってもオキソトキシンは分泌されます。つまり柔術ってアンチエイジングにいいスポーツ。でも加齢の波は押し寄せます。抗わねばなりません。

忙しいビジネスマンこそウォームアップ

若い時はやらなくても問題を感じなかったウォームアップ。(若くてもちゃんとしてる人はやっていると思いますが)加齢によって筋組織の硬さや可動性に問題を抱えているので重要性がより高まります。怪我のリスク低減だけでなくパフォーマンス向上にも繋がりますのでやっておきましょう。

頸部のウォームアップ

首、肩回りの怪我は命にも関わるのでしっかりやりましょう。

柔術のクラスで1時間空けるのが精一杯で仕事終わったら駆け込みで参加してるからアップしてる暇なんかねえ!というビジネスパーソンの方、移動中でも仕事の隙間時間でも構いません。動かしておきましょう。

ウォームアップの効果は30分しか続かないと言われたりしますが、タイミングがベストでなくてもやらないよりやった方がマシです。

・頭部を後に傾ける。
・頭部を横に向ける
・頭部を横に傾ける
・頭を前に傾ける
・顎を胸に引き寄せる
・顎を突き出す
・肩をすくめる
・肩を後方に引いて胸を張る

私たちは日中、PCやスマホの画面を眺めて頸部や眼球の動作が限定されています。(今noteを書いている私も同様です。凝り固まっています)

現代生活では首を動かすシチュエーションが少ないです。首の回旋なんかも見られません。柔術ではカラダの機能全般を必要とされます。無負荷の状態であっても横を向いて首を痛める方もいらっしゃいます。しっかり可動性も筋温を高めておくことと、紹介する首回りの動作を行なって自分のカラダの状態を把握しておくことは大切です。

それぞれ5〜10回程行いましょう。
行う前より首の動きもスムーズになり視野も広がるはずです。

全身のウォームアップ

インチワーム(尺取り虫くん)

全身をウォームアップするすぐれた可動性エクササイズです。ヨガやクロスフィットでよく取り入れられています。首のアップは電車待ちや電車内でも行える可能性がありますが、流石にこれやってたら盗撮されてSNSにアップされそうな予感。

ミニループを用いた仰臥位(仰向け)でのヒップフレクション

股関節屈曲動作、股関節伸展筋、体幹部を刺激できる優れたエクササイズです。

柔術では股関節が重要。そして股関節をしっかり使うためには体幹部との連動が重要。そのどちらにもアプローチできる効果的なエクササイズです。
ミニループの購入はお馴染みこちら。サンクトバンドです。
ディスカウントコード【SJSYMD】入力で10%オフ。

バンドの機能で考えるならあまり強度が高くないものがオススメです。
(バンド伸ばした位置で負荷が強くなるので伸ばし切れないほどの負荷は不適切です)

殿筋のストレッチ

股関節は球関節なので多様な動作が可能です。外旋、内旋なと多方向に動かします。

コペンハーゲンorサイドプランク

股関節内転筋と腹斜筋に対してのアプローチ

コペンハーゲン

主動筋(メインで働く筋肉)
内転筋、腹斜筋、腰方形筋
サブ 三角筋、腹直筋

サイドプランク

主動筋(メインで働く筋肉)
腹斜筋、内転筋
サブ 中殿筋、三角筋

ミニループを用いたヒップアダクション

姿勢の重要性について

トレーニングの効果を引き出すためにはフォームが大前提となります。
フォームが間違っている場合、目的とした効果が得られないだけであればまだマシですが、怪我の原因となったりすることもあります。

正しいフォームを取るためにはカラダの連動や姿勢が大切です。

とはいえ姿勢は土台であり姿勢が整っているだけで筋肉が付くことも強くなれるわけではありません。

姿勢ってなんだ?

字だけみると勢いのある姿。姿勢が崩れていては動きに制限がかかる。姿勢とは準備であり、正しい構えのようなものです。

関節のアライメント、体幹部の安定性、足底圧、股関節のポジション、呼吸、さまざまです。掘り下げて語っているととてもではありませんがここで書き切れるボリュームではありません。

奥深い内容ですが、少し触れていきましょう。すぐに体感できるものばかりです。

理屈が分かってもできないならどうするか?

活動や競技においてカラダをコントロールする際のキーポイントとして頭頸部、手指、手関節、足底、末梢からの運動連鎖があります。

技術習得以前にカラダが思ったように動かない、そんな悩みもあるでしょう。何が問題なのか?複数要素が絡み合っていることですが、そのひとつにカラダの操作が間違っているケースは多くあります。

分離と共同がパフォーマンスの発揮に重要と私は過去のnoteで何度も言ってきました。では、例えば腰椎部、どうやって安定させればいいのでしょう?

エアーではできても、対人競技でリアクティブに反応しなきゃいけないのが柔術。その中で体幹部はこう、股関節はこうって意識しながら行うことができるのは打ち込みくらいでスパーリングや試合では不可能です。それらが自然と出来る様になるまで落とし込んでいく。それもひとつの考えです。ただもっと簡単に出来る方法があります。

運動連鎖を利用して入力を簡単にするんです。カラダは連動しています。一つのことが色々なことに影響を及ぼすのです。

サイドコントロールする時の自分の手首の向きは小指と親指方向どっちがいいのか?

その辺を調整するだけでパフォーマンスは変わります。知識の有無で変化が生じるわけです。読めば強くなる。

ちなみにヒップエスケープの際は手首の向きは親指方向にすることで力は発揮しやすくなります。さてさて、深すぎるカラダの説明をはじめます。

呼吸の重要性

呼吸が大事だという認識はみなさんあると思うのですが、

・鼻呼吸の方がいい

・呼吸を忘れるとスタミナに影響する

・落ち着くために深呼吸する

くらいの知識だったりするのではないでしようか。動作のきっかけにも筋肉の収縮にも大きく関わってきます。柔術にも重要だということです。試してみましょう。

・努力性の呼気は重心を下げる。(腹筋群が働く)

・努力性の吸気は重心を上げる。(背筋群が働く)

体幹部の回旋可動域も呼吸だけでその場で大きく変化します。

体幹は手首で決まる

体幹部を丸めたい、反らしたい。動きにはコツがあります。

例えば、親指方向に手首を返すと体幹部は丸まりやすくなりますし、小指方向に返すと体幹部は反らしやすくなります。

この辺の詳細が知りたい方は松浦先生のセミナーをご覧ください。めちゃくちゃカラダの仕組みが理解できて面白い&机上の空論だけでなく使いやすいテクニックが満載です。

ちなみに来年、松浦先生と一緒に本を出す予定です。

姿勢を整えるならスクワット

姿勢を整えるためにもスクワットは効果的です。

ここでの「いい姿勢」とは一般的な身体に負担の掛かりにくい姿勢と定義します。「解剖学的肢位」と言われるものです。「負担の掛からない姿勢」などというものは実はなく、姿勢は変化させられることが大切です。たとえいい姿勢であったとしても、ずっと同じ姿勢であればどこかしらに負担は掛かってきます。

「いい姿勢」は他人から見て映え、かつ身体機能的に破綻のないものです。この姿勢を身につけるためには、位置感覚や筋力を養う必要があります。これを養えるトレーニングがスクワットなのです。

スクワットにおいて注意すべき点はもちろんあります。スクワット時に膝が内側に入ったり、しゃがんだときに腰が曲がったりするのはその最たる例です。

正しいフォームでスクワットを行えば背筋も伸びますし、猫背も治ります。臀筋も引き締まって膝も伸びゃすくなるので普段の姿勢もよくなります。ただし、スクワットによって姿勢がよくなるのは、正しいフォームで行っていることが前提で、間違ったフォームで行ってしまうと悪い方向に普段の姿勢も増強されることも多分にあります。姿勢を整えるためにも、まずスクワットフォームを整えましょう。

正しいフォームはPANDA GYMで教えています。オンラインパーソナルも実施できますのでお気軽にお声がけください。

ビジネスマン柔術家の柔術の傾向と対策

ビジネスマン柔術家の柔術の傾向と対策(どんな試合展開で何の要素が必要なのか)についてです。

柔術では基礎筋力があることは有利に働きます。技術レベルが拮抗した場合、差をつけるのは筋力。筋力レベルが高ければ相対的に持久力も増しますし、余裕も生まれます。車で言えば筋肉はエンジン技術がドライビングテクニック

100の力の人間が100の力を発揮する場面では力の発揮にコミットする必要がありますが、150の力の人間が100の力を発揮する場面では50の余裕があり、その余裕で怪我の予防や他に注意力を回せます。だからパフォーマンスも高まるのです。

身体の操作性を高める

身体の操作性を高めるという視点でも、トレーニングは有効です。例えば、スクワットであればスクワットを通じて姿勢や重心のコントロール、股関節、膝関節、足関節の連動や位置感覚など色々学べるのでスポーツも上手になるのです。

ただ、足を速くするスクワットも柔術が上手くなるスクワットもありません。スクワットと足の速さに相関関係はありません。筋肉バカ思考になってはダメです。当たり前ですが、スクワットを一番挙げられる人間が一番足が速いわけではありませんし、柔術の順位がスクワットの重量で決まるわけでもありません。

テクニックの幅を広げるためにも筋力アップ

一方で、筋力が上がればテクニックの幅も広がるのは事実。テクニックと筋力は切り離せるものではなく、技術は筋力がないとできないものです。筋力向上のために陸上選手もスクワットを行います。柔術選手もほぼ全ての選手がトレーニングを取り入れています。

筋力だけあっても技術がなければ競技パフォーマンスは上がりません。競技能力を向上させるためには技術練習もしましょう。それによってトレーニングで作ったエンジンを使いこなせるようになるのです。

「競技のためのスクワット」も行うスクワット自体は一緒です。ただ競技練習がメインであくまで筋力向上のための補助として行います。加齢により筋力レベルも低下します。しかしトレーニングを行えば何歳からでも筋力は向上します

筋力差がもっとも競技に影響するのがマスター世代

つまりトレーニングを行なっていない人間とトレーニングを行っている人間の差がアダルト以上に大きくなるのがマスター世代です。加齢で衰えるのは主に下肢の筋肉。大きな差がつきます。

「今を楽しむという観点でみれば『試合は勝敗じゃない』」

とは言っても試合では勝った方が楽しいでしょう。人生を全て注ぎ込む必要はないけど試合においては勝敗にこだわる事が楽しむコツでもあります。勝つために、柔術を続けるためにトレーニングを行いましょう。

筋肥大、筋力向上を目指す

トレーニングを行うときは、追い込みすぎないのがポイントです。免疫系への影響もありますし、実技練習にも支障が出るためです。

また、オールアウト(トレーニングにおいて筋肉を使い切った状態)は、神経系にとっても筋の収縮する組織にとっても、ダメージが大きすぎます。オールアウトや筋肉痛をなるべく発生させずに、筋肥大や筋力向上を目指すトレーニングが柔術家と親和性の高いプロトコルといえます。

とはいえ、トレーニング導入時や筋肥大に重点を置く時期は筋肉痛は生じます。無駄な追い込みは不要であってもラクをしろという話ではありません
筋肉は日常生活ではありえない刺激を受けたときに、その刺激に適応するために肥大します。ありえる刺激、では適応反応は起こりません。柔術で受ける以上の刺激を与えましょう。

そこの「ぎりぎりありえない」ラインの刺激を狙っていくのがトレーニングのコツです。「ありえなさすぎる刺激」を与えたらめちゃくちゃ筋肥大するのかというと、そうではありません。適切な負荷を見抜くことが重要なのです。

トレーニングは基本に忠実に

基本的にはやはり、機能的に破綻していない動きが重要です。一部の関節に過度な負担がかかったり、身体を捻じって無理やり挙げたりするのは故障に繋がるし、そもそも重量が扱えません。トレーニングの原理原則のひとつである「漸増性の原則」(段階的に強度を上げていくこと)が成長に繋がるのですが、それができません。

正しいフォームを維持しながら重量を伸ばしていくことこそが、トレーニングの最短距離です。ちゃんと重量を扱いながら、目的の筋肉に負荷を載せてトレーニングすることが大切です。正しいフォームであれば必ず重量は伸びます。数値化することで成長を実感できますし、肉体的な成長も目に見えることでしょう。

追い込まないトレーニング&追い込みすぎるトレーニング

肉体はトレーニングの負荷に身体が適応することで成長します。筋肥大は、トレーニングにより物理的なストレスを与えて筋線維を損傷させ回復過程で筋線維が肥大するものと、化学的なストレスを与えて成長ホルモンを分泌させて肥大をする2つが基本的なメカニズムです。ずっとボリュームも負荷も増やさない同じトレーニングでは身体も変わりません。その動作に身体が慣れてしまい、それ以上に適応する必要がなくなり、むしろ成長が後退する可能性すらあります。そのため、トレーニングではフォームが崩れる手前くらいまで、つまり「あと1回挙げられるかどうか」というところまで動作の反復を頑張る必要があります。ワンモアレップですね。

反対に、追い込みすぎるとそれはそれで身体へのダメージも相当なものになります。決して「やればやるだけいい」というわけではありません。一般的にはトレーニング強度が足りなすぎる人が多いので、トレーニング業界では「追い込んだほうがいい」ということが強調されるのかもしれません。

忙しいビジネスマン柔術家が取り組むべきトレーニング実践編

筋肉を付けるためにベストの方法は高重量を扱って高頻度でトレーニングを行います。

トレーニング時間は1〜8時間程確保しましょう。睡眠時間は8〜10時間程度、毎日同じ時間に起床、就寝して酒やタバコは控えます。筋肉を付けることだけ考えるなら柔術はマイナスになりますが、こちらでは柔術のためなので毎日5時間は行いましょう。

回復のため、バラエティに富み、それでいて必要な栄養素が過不足なく摂取できるようにします。サウナなどの交代浴やマッサージも取り入れます。

とまあ書いてみましたがまともな社会人がこんなことできるわけありません。

非現実的。こんなスケジュールで動けるのはプロアスリートかニートか仕事を早期退職して時間を持て余している優秀な方でしょうか。諸々考慮した上で何が適切なのか。

結局のところベストよりベターやグッドくらいで継続することが正解です。
短期的に成果が出ても続けなければ効果も失われます。

トップ選手の手法は不適切

トレーニングを指導する側としてアダルトの選手とマスター世代の選手では取り組む内容は同じ柔術家というカテゴリーであっても全く違います。トップ選手が行っている手法が適切とは限りません。というかほとんどの人に不適切です。人間強度が違うんです。回復力も違います。

怪我予防やパフォーマンスアップのトレーニングで怪我をしては元も子もありません。ウェイトトレーニングは基本的にはリスクの低い運動です。ただ不適切な負荷やフォーム、頻度で行えばリスクは高まります。

関節に負担が掛からないトレーニングからイメージするのは自重のトレーニングや加圧トレーニングでしょうか。

自重なら関節に優しく効果的なのか?

負荷設定は適切な設定が望ましい。負荷設定は目的に応じてですが、自重は調整が難しいので自重のスクワットはラクだけど、懸垂はラクではないでしょう。

負荷を調整できるバーベルやダンベルといったフリーウェイトなら1キロ〜600キロまで幅広く設定できます。ボディコントロールを高めるために自重が効果的、そうですね。ただそれは筋肉を付ける手段として適切ではありません。

ボディコントロールを高めるためにはマット運動、カラダの機能性を意識したウェイトトレーニングを行いましょう。

加圧トレーニングの是非

まず前提として加圧トレーニングは効果的です。ただリスクのある行為ではあります。そして効果を出せるような加圧トレーニングは無茶苦茶にキツいものです。世間のイメージで加圧だと重いものを持たずに成長ホルモンを分泌させられてしなやかな筋肉を付けられる。要するにラクに筋肉が付くと思ってる方が多く見受けられますがそれは間違いです。

合理的な方法論はあってもラクに筋肉が付く方法はありません。加圧トレーニングは効果を出すためにやるととんでもなく痛くて通常のウェイトトレーニングとは全く違ったキツさです。普通のトレーニングの方が全然ラクです。

成長ホルモンの分泌も加圧ではないウェイトトレーニングであっても同様に分泌されます。巻いてちょっと自重の体操をやるくらいで成長ホルモンが分泌されるとしたらコンプレフロス巻いてる人はみんなマッチョになりそうなものですが、実際そんなことはありません。

通常のウェイトトレーニングより一般的な加圧トレーニングで高い効果が得られるという事はほぼないよう感じます。少なくともサービスとして提供している加圧トレーニングではないでしょう。ハードな加圧トレーニングならありえるかもしれませんが、確実に拷問です。

加圧トレーニングは身体的な問題で大きな負荷を掛けられないケースで医師の監修の上でやるとかはありです。(トレーニングより効果が無くてもやらないより効果はある。)

そもそも効果があるなら世界中のアスリートが利用しているはず。否定ばかりで何をすればいいの?誤解を解きたいだけで否定は好きではありません。

トレーニングはフィードバックしやすい

誤解を恐れずに言ってしまえば、トレーニングにおいては紫帯くらいには道場行かなくてもなれちゃうわけです。下記のnoteくらいでもよいのです。

ただカラダのセンスがない場合、フィードバックする目としてコーチやトレーナーがいると伸び方は全く違います。

関節に優しいトレーニング

トレーニングでは筋肉、腱、関節、神経に対してストレスを与えます。カラダはそれらによる適応反応で強くなっていきます。ただトレーニングによって得られる適応のスピードも適切なアプローチもそれぞれ異なります。

関節は消耗品です。一度壊れたものは元には戻りません。不可逆です。
だから壊れないように使わないといけない。加齢により筋肉も弾性が低下するので断裂等のリスクがあります。

マスター世代の柔術家は関節に優しい内容や適切な頻度、負荷設定でトレーニングを行いましょう。強度や負荷が高過ぎると強くなるどころか体にとってマイナスに働きます。とはいえラクなトレーニングで成長する事はありません。合理的でムダがない事はキツくないわけではないのです。ただ努力が無駄にならないという点では徒労にならず済みます。

忙しいビジネスマンがトレーニングを続けるためには、運動することへの喜びを感じつつ、関節もいたわって長くトレーニングができる動きや負荷設定などを覚えることが非常に重要です。

スロトレのススメ(負荷が抜けないテクニック)

トレーニングの負荷を関節で受けるのか、筋肉で受け止めるのか?どちらか、ではなく比重の話で、しっかり筋肉を使ってあげましょう。関節を痛めつけるのが目的ではなく筋肉を鍛えるためにトレーニングを行なっているはずです。

トレーニングのベテランになると、思ったほど重量を扱っていないのにすごい体なのはなぜ?それは、薬だろ。いや、テクニックがあるんです。トレーニングの中で無駄がない。

ただこちらは高等技術です。それなりの年数や経験が必要となります。位置付けとしてトレーニングはあくまで補助であるわけです。効率の良い方法はないのでしょうか?あるんです。誰でも、効かせられて筋肉を付けられるトレーニング法、それがノンロック&スロートレーニングです。

ノンロック&スロートレーニング

トレーニングで変数となる要素は

・負荷(重量)

・可動域

・スピード

・レップ数(回数)

・セット数

です。このうち、「スピード」をコントロールします。上げ下ろしを何秒で行うか、テンポを調整するのです。これだけでも筋肉への負荷の乗り方が変わります。その上で関節をロックせず行います。

ノンロック 実践編

メトロノームのアプリを使うと簡単にコントロールできます。頭の中で同じ感覚を数えるというのは意外と難しいです。最初は余裕をもってできていても、疲れてくると早くなったり、遅くなったりしますが、メトロノームは正確です。

自重スクワット

ターゲットの部位
主動筋(メインで働く筋肉)
大腿四頭筋、殿筋、内転筋
サブ 脊柱起立筋
動作 股関節、膝関節の伸展 全ての動作の基礎を強化

シングルレッグデッドリフト

主動筋(メインで働く筋肉)
ハムストリング、殿筋
サブ 腓腹筋、ヒラメ筋
動作 股関節を軸とした伸展動作。膝関節の動きを伴わないので股関節意識を作りやすい。

ダンベルショルダープレス

主動筋(メインで働く筋肉)
三角筋(前部、中部)、上腕三頭筋
サブ 大胸筋上部、腹直筋、脊柱起立筋
動作 肩関節の屈曲、肘の伸展。前鋸筋や腹直筋との繋がりを感じられる。

プッシュアップ(ニーリングプッシュアップと通常のプッシュアップ)

主動筋(メインで働く筋肉)
大胸筋、三角筋(前部)上腕三頭筋(手幅によって使われる比率が変化する)
サブ 腹直筋、大腿直筋
動作 肘、肩の安定。トップでのベース姿勢の強化に。

レッグレイズ

主動筋(メインで働く筋肉)
腹直筋(下部)、大腿直筋
サブ 骨盤底筋群
動作 体幹と股関節の屈曲。ガードポジションで足を効かす、相手を煽る動作。

ディップス

主動筋(メインで働く筋肉)
上腕三頭筋、三角筋(前部)、大胸筋
サブ 広背筋
動作 肩の屈曲、肘の伸展。肘の安定に。

プッシュアップ (片側加重)

主動筋(メインで働く筋肉)
大胸筋、三角筋、上腕三頭筋
サブ 腹斜筋、腹直筋、中殿筋
動作 片側に加重が偏るシチュエーションは多くあります。その際体幹部の側屈も伴います。そんな動作。

バックエクステンション(床)

主動筋(メインで働く筋肉)
脊柱起立筋、僧帽筋、広背筋
サブ 大殿筋、ハムストリング
動作 体幹の伸展動作。前方向に引かれる動きに対してバランスを取るために胸を張る際などで使われます。

ダンベルカール

主動筋(メインで働く筋肉)
上腕二頭筋、上腕筋
サブ 腕橈骨筋、前腕屈筋群
動作 腕の屈曲。実動作で腕の屈筋は必要となります。

ダンベルプルオーバー

主動筋(メインで働く筋肉)
広背筋、大胸筋、上腕三頭筋
サブ 腹直筋
動作 脇を締める。抑え込みや基本姿勢で必要。

ツーハンズベントオーバーロウ(オルタネイト)

主動筋(メインで働く筋肉)
広背筋、僧帽筋、上腕筋
サブ 上腕二頭筋、脊柱起立筋、ハムストリング、殿筋
動作 引き付ける動作。言わずもがな重要です。

スプリットスクワット

主動筋(メインで働く筋肉)
殿筋、大腿四頭筋、ハムストリング
サブ 腓腹筋、ヒラメ筋
動作 左右非対称の姿勢での前後左右をコントロールした上での上下運動
トップでのバランス強化にも繋がります

種目の可動域と負荷がかかる範囲は一致しているのか?

ダンベルフライを例にとりましょう。

真上まで上げ切ったポジションでは大胸筋が働いていません。そこには無駄が存在します。トレーニングではしっかり負荷が掛かる美味しいところ、言うなればスイートスポットも存在します。

重力を利用したトレーニングでは基本的に垂直方向にのみ負荷が発生します。なので、胸等を鍛える際には仰向けになりベンチプレスを行うわけです。

立位で行うと大胸筋の機能と負荷が一致しません。肩関節の屈曲方向に対して負荷は掛かりますが、内転動作に対しては効果がありません。なので種目によってはめいっぱいに動作を行うとターゲットの筋肉から別の筋肉や関節に負荷が移行してしまったりします。その可動域では筋肉の負荷が抜けてしまう。筋肥大で考えた場合、セット中は負荷が続くことが望ましいのです。

スクワットを例に考えてみましょう。スクワットはしゃがんで立つ動作です。動作中ではどこがキツくてどの位置がラクでしょうか?

しゃがみきらないくらいがしんどいかと思います。固い人だとその人にとって一番深いところでしょうか。

ラクなのは共通して直立、立ち上がったところですよね。立ちっぱなしは可能ですが、しゃがみっぱなしはなかなか厳しいものです。

ノンロックでは意図的にキツいところで行います。立ち上がりきらない範囲でスクワットを行なっていくのです。

これは可動域の話。次はテンポ(スピード)です。

意識せずにトレーニングを行うとスクワットで10回行うのに20秒程度でしょう。上手なカラダの使い方をしてボトムで伸張反射を用いればもう少し速いでしょう。

筋肥大においての上手なトレーニング

いわゆる「上手なカラダの使い方」とは適切なタイミングでの出力と脱力の組み合わせによるしなやかな動きを指します。一方で(筋肥大のための)上手なトレーニングではじわっとした筋力発揮がポイントになります。真逆なんです。いわゆる「運動神経のいい人」はトレーニングが下手だったりします。(もちろん練習で上手になってはいきますが)

筋肥大の一要素としてTUT(Time Under Tension)があります。筋肥大への一要素として筋肉の緊張時間を40〜60秒程度確保するというものです。

具体的には3秒でしゃがんでしゃがんだところ(以下ボトム)で1秒静止し3秒かけて立ち上がります。

8回×3セット、といったトレーニングであっても、

1秒で上げ1秒で下ろす場合、トータル16秒

ですが

3秒で上げ、1秒止め、3秒で上げる場合だと56秒

緊張時間が全く違うわけです。TUTで見ると56秒かけるケースの方が効果的なわけです。

じゃあもっとTUTを長くすればより効果的なのか?というとそれはキツいだけで効果は変わりません。最小量で効果があるならそれが効率的。他の事に(種目や余暇に)時間を割きましょう。

筋トレで筋肉を太くするためには、速筋線維への刺激が重要。筋トレで太くなるのは主に速筋線維だからです。また加齢で衰弱するのも速筋線維です。そのため、スタンダードなトレーニングでは高重量を用いることで最初から速筋線維を刺激して早々に速筋線維を使い切ってしまうアプローチをとります。

ノンロックでは持続的に力が入るので、筋肉の内圧の上昇により血流が抑えられ、酸素濃度が下がっていきます。持続的な力の発揮によって血液循環が抑制され結果、低酸素状態が生じるのです。

遅筋線維は酸素が十分にないと活動できません。速筋線維は酸素があまりなくても活動が可能です。酸素濃度が下がると、遅筋線維が早く疲弊します。速筋線維がサポートとして動員されることで、速筋線維の強化が可能になるというのがこのトレーニング法の仕組みです。

リズミカルに動ける軽負荷だと筋肉のポンプ作用によって血流がよくなっていきます。それにより筋肉内の酸素濃度が高まり、老廃物の排出も促進されるため、遅筋線維の活動が高まります。

TUTを意識することでスピードと重量が抑えられるため腱や関節への負担が小さく、整形外科的な外傷・障害が起こるリスクがきわめて低くなります。動作を確認しながら行うこともできます。

そして少ない反復回数でよいという点です。プロトコルにもよりますが、1レップあたり4〜12秒で4〜12レップ。

3セット行えば十分な効果があります。

同じだけの効果があるとしたら効率的な方法の方が多くの人にとって望ましいのかと思います。無駄にキツくする必要はありません。

ノンロックでの動作が安定してきたら

ネガティヴ動作はスローに、ボトムは静止してからポジティブ動作は爆発的に挙上します。(反動は用いないことが前提です。反動を抑制する意図でボトムでの静止があります)

フォームが崩れやすいのでまずは丁寧に動作スピードをゆっくりとした方法で行いましょう。

脱力のコツ

無駄な力みは連動やスピードを損ない、スタミナの消耗を招きます。ですのでリラックスして適切なタイミングで筋力発揮しましょう。と言うは易し行うは難しい。

梅干しを想像したら唾液が出ますよね?力を抜こうと意識したらその部位は緊張します。どうしろって言うの。

さっきは筋肥大のトレーニングでは力を抜くな、効かせろって言われてたのに急に脱力しろって言われても。使い分けが大切なんです。脱力対力みの論争ではなく、用途次第。

そんな脱力のコツ。

柔術ではパワー発揮を断続的に繰り返すシチュエーションが多くあります。
そのため単純な筋持久力や心肺機能だけでなく、間欠的持久力、身体操作による無駄を減らす技術、対人競技ならではの駆け引きの部分が所謂スタミナと表現されるものです。その中で身体操作にアプローチできるのがケトルベルトレーニング。

イサミから山田プロデュースのケトルベル、販売しています!!家トレや道場でご利用ください。使ってくれると嬉しいです。

他の器具でも出来ますが、ケトルベルトレーニングの考え方は面白く参考になるものもあるかと思います。無かったらダンベルで代用ください。もちろん、PANDA GYMにはケトルベルのご用意もございます。

脱力を意識して“力み癖”を解消する

パワー発揮のための筋力トレーニングでは、筋力だけではなく、スピードや筋出力を行うタイミングも重要になります。柔術の場合、外的要因によってとっさに動作しなければならない場面もあり、瞬時に爆発的なパワーを発揮することが求められます。

狙った筋肉に効かせることが重要となる筋肥大や筋力向上のためのトレーニングにも細かいテクニックは多々ありますが、パワー発揮の向上を目的とするトレーニングでは、繊細な重心のコントロールや、動作の切り返しなどの技術が必要となり、ただ漠然とトレーニングを行っているだけでは、高い効果を望むことはできません。

脱力してしゃがみ、一定の位置で脚力を発揮して飛び上がるジャンプ動作など、一定の動作から別の動作へ切り返す局面での、適切な出力のタイミングを身に付けることができます。これは動作の最中に長く出力しなければならない筋肥大のトレーニングでは得にくいもので、積極的にトレーニングを行うアスリートが陥りがちな“力み癖”の解消にもつながります。

競技中に安定して高いパフォーマンスを発揮するためには、不必要な体力の消耗を抑えことが重要になります。パワーを発揮しなければいけないときに、パフォーマンスを実現するための必要最低限の出力を行うことで、長時間にわたって活躍できるようになります。

「ケトルベルスイング」では出力と脱力のポイントがわかりやすく、ボトムとトップの2回、切り返しを行うタイミングがあります。負荷の掛かり方が断続的で慣性を上手に使うトレーニングです。

ケトルベルを使ったトレーニングは基本的に30~50回のハイレップで行いましょう。高回数を設定することによって、動作の途中で脱力して身体を休ませなければ持続できなくなり、身体の操作性を身に付けることができます。回数やセット数に捉われず、動作の“質”を意識するようにしてください。 

実際の出力と見た目の力感は違う

注意しなければいけないのは、“脱力”といっても、全身から完全に力を抜くわけではないということです。体幹や四肢から力を抜いてしまうと、ケトルベルの重さに振られてバランスを崩してしまいます。姿勢を支持するための適切な筋力を発揮しつつ、切り返しのタイミングでパワーを発揮することを意識してください。

重心が一箇所に乗りすぎてその場に居着いてしまうと、次の動きに移る際、重心をニュートラルな位置に戻したり体を流した方向に動かすか、バランスを制御する為に大きな筋力発揮が必要となります。そのバランスを崩さない能力、崩れきってしまう手前で修正する能力を養う為にもケトルベルトレーニングは有用です。目的を見極めて柔軟にケトルベルトレーニングを取り入れてください。ケトルベルは万能なツールではなく、筋肥大にコミットするならマシンやバーベルの方が有効です。

また、実際の出力と見た目の力感は異なることも理解する必要があります。

体幹部や四肢の固定ができていないと、身体の末端部で生み出したパワーが身体のどこかで吸収されたり、緩衝されたりしてしまい、相手に十分に伝わらないこともあります。ハイクリーンなどはわかりやすい例ですが、対象に十分なパワーが伝わっていれば、バーは非常に軽く感じられ、腕などの末端部に力を入れずとも持ち上げられます。大切になるのは力の伝え方で、適切な最小限の力を適切なタイミングで発揮することです。トレーニングでも柔術でも常に最大限の力を発揮すればいいわけではないということを念頭に置いてトレーニングを行ってください。

スイング 

両手でケトルベルを持ち、股下を通しながら肩の高さまで上げる動作を繰り返します。ボトムとトップの2箇所で出力します。それ以外の場面では脱力しており、重りは慣性で上下しています。

ワンハンドスナッチ

片手でケトルベルを持ち、前方でスイングしながら頭上に上げます。①と同様に、ボトムとトップの2箇所で出力します。遠心力で振られないよう、体幹を保つことを意識してください。(体幹部を保つ為にも足裏の重心を制御します)

脱力のための姿勢

アライメントを適切にすることで脱力も促せる。そもそも骨格構造を上手に使うことが脱力の骨(コツ)

アライメントが正しくなければ骨を力で支えることになり、運動前から緊張することになります。そりゃ力みからは逃れられません。

ちなみに呼吸を吸うか吐くのどちらからスタートするかだけでも運動連鎖は変化します。カラダって面白いですよね。

瞬発力のトレーニング

スローで鍛えたら次は瞬発力を鍛えます。

スロートレーニングでは速筋繊維へのアプローチを行ないました。これで若者に負けない筋肉量を獲得できるでしょう。

でもスピードが足りない。エンジンである筋肉を鍛えたのになぜ?速筋を鍛えたら速く動けるんじゃないの?

早く動くには早く動くスキルがあります。車で例えるとドライビングテクニックの部分です。それにはSSCの活用が必要。

スピードとはバネのある動きなのでその動きを鍛えてあげる必要があるわけです。

ではバネのある動きをしていればトレーニングはいいかというと、体作りの刺激としては足りない部分もあります。なので、まずスローなトレーニングでエンジンの大きさ(筋肉量)と傷害予防にアプローチして土台を作りましょう。

こちらのトレーニングは限界近くまで反復しません。

理由としてはスピードや質が低下した状態での反復を避けたいためです。
ですので各6回程度を目安に取り入れましょう。(スピードが落ちた段階で中止します)

シザージャンプ

スプリットジャンプ

チーティングシットアップ(起きるまで)

チーティングシットアップ(立ち上がるまで)

シャフトスイング

結局忙しいビジネスマンが強くなるには何をすればいいの?

加齢で衰える筋肉と柔術において必要とされる筋肉は重複しています。つまり大きなアドバンテージとなる。鍛えていない人は弱化していくのでより差が付くわけです。貧富の差に近い。読者の皆さんは富める者を目指しましょう。

ビジネスマンならではの強みを活かそう

若い時は時間と体力はあっても金が無くて選択肢に限りがあり、金はあっても時間と体力が無いビジネスマン世代。アドバンテージを活かしてガツガツプライベートレッスンを入れて、サプリも飲みましょう。

技術は繰り返すことで身につきます。だから反復練習をする。ただ、間違ったものを反復していたとしたらどうなるのでしょう。間違ったものが身に付きます。

癖が付いていない状態と癖が付いた状態での修正では必要な反復回数も大きく変わります。なので正しい先生に習う事が大切です。

間違ったものを覚えてしまったあなた、諦めることはありません。正しいものを認識してはじめましょう。そんなわけでPANDA GYMでパーソナルのトレーニング指導も行なっています。是非どうぞ。

質を高める戦略

正しいものをちゃんと行うことがポイントです。適当にやっているアップ、それも反復。マイナスに働きます。アップも丁寧にやることが全体の質を高めます。

矛盾するようですが、量こそ質に繋がるのです。高い質のものを多くの量で反復することが重要です。数をこなすことで正しい動作が身につくのです。

忙しいビジネスマンに必要なものはなんだ?

どこで差がつくのか?トレーニングをしないと加齢によって筋力が低下します。アダルトでは起こり得ない現象ですが、マスターの同カテゴリーでは加齢によって低下していく人間とトレーニングによって向上していく人間の争いとなります。トレーニングしてることが大きなアドバンテージとなるでしょう。トレーニングによる筋力向上は年齢に関係なく起こります。

実は身体操作の部分は伸び代が多くあります。カラダの教科書を読みましょう。触りだけですが、努力値に対して見返りが大きい、トレーニングや柔術ですぐに使えるテクニックを紹介しましょう。

ビジネスマン柔術家に必要なガードワーク、パスガード

マスターの傾向としてクローズガードやハーフガードが主流。パスガードもベーシックなものが多いです。

そこで必要となる、マスター世代で重要となるのはいわゆる抗重力筋と呼ばれる筋肉です。抗重力筋は、大きく下記の5つです。

  1. 背中 脊柱起立筋、広背筋

  2. 腹筋 腹直筋、腸腰筋

  3. お尻 大臀筋

  4. 太もも 大腿四頭筋

  5. ふくらはぎ 下腿三頭筋

この背中・腹筋・お尻・太もも・ふくらはぎの抗重力筋が前後に働きながら重力に対してバランスを保っていることになります。

抗重力筋は加齢で衰える筋肉と呼ばれていてトレーニングの有無で差が出やすいのです。片方は衰えていくが、片方はトレーニングによって成長する、結果大きな差が広がります。ここはアドバンテージを作れる穴です。長く続けたい、競技で優位に立ちたいのならトレーニングをやらない手はありません。

そして仰向けやトップの場合、膝、手での支持も多いため腹斜筋、三角筋、上腕三頭筋、前鋸筋、首回りの筋肉が非常に重要になります。

マスターは

  1. 抗重力筋の強化

  2. 肩回り、股関節回りの可動性を高める努力

  3. 胸郭、腰椎回り、骨盤の連動を意識したトレーニング

この3つを行う事で大きな差が生まれます。(技術練習は大前提)

この中で立ち技の頻度が少ないゲームプランであれば下腿三頭筋のトレーニングは不要かもしれません。

柔術家の傾向

トップ選手であっても踏み圧がまばらだったりします。他のスポーツだと踏み圧とパフォーマンスに相関関係が少なからずあるのですが、柔術はそれがありません。ちなみに柔道家は仮性扁平足が多いです。(出典:足底アーチが柔道の技術力に与える影響

柔術は足裏が接しないシチュエーションの多い非常に珍しいスポーツです。そのため、他のスポーツと違った身体操作や運動連鎖が必要になります。正直特異的です。

立って行うスポーツは上肢の動きにこそ差があれ下肢の動きは共通項が見られます。足裏が接地している競技では母子、腹筋の連動が重要となりますが、足裏の設置のない柔術におけるシチュエーションでは足裏の代わりに内転筋、腹筋の連動がポイントになります。

ですので内転筋と腹筋を連動させたサイドプランク、コペンハーゲンなどのトレーニングも効果的となります。

徒手抵抗のサイドプランク

徒手抵抗のアダクション

徒手抵抗のフレクション&アブダクション

こちらで紹介している効果的な徒手抵抗。これは誰でもできる訳ではありません。トレーナーであっても、です。

解剖学や関節可動域などちゃんと理解していない方や力比べのような形になってしまうパートナーでは筋断裂のリスクもあります。PANDA GYMのパーソナルではこのような徒手抵抗のトレーニングも取り入れています。

心肺機能の強化

マスターの5分という試合時間。短いですよね。先行型が勝つ可能性が高いく、逆転があまりありません。(アダルトと比較して)駆け引きの少ないゲームプランが成立する。よって心肺機能の重要度が低い可能性があると言えます。ただ健康面を考えて心肺機能は鍛えておきましょう。柔術は有酸素的要素もあるので日常生活で積極的に歩くくらいでよいでしょう。

頚椎、骨盤、足底

どうしてもデスクワークやスマホの操作で首が前に出てしまうので頚椎のポジションを整えましょう。

骨盤の前傾や後傾を理解しましょう。まずニュートラルなポジションを覚えましょう。最適な骨盤のポジションはシチュエーションに応じて変化します。

足底を刺激することも大事です。足底のアーチやらはまた今度。

脱力の仕方

トレーニングで力み癖が生じてしまうとエネルギーのロスがおおきいという課題があります。しかし、能動的に力を抜くことは難しい。

梅干しをイメージしましょう。唾液が分泌されます。そもそもが意識するだけで筋活動は行われる。つまり、肩の力を抜いて、と考えるだけで肩に力は入ります。

そこで別の部位に意識を持っていきましょう。

例えば、お腹を引き締めてみる。

どうでしょうか?肩の力は抜けやすくなるはずです。

次は呼吸をしてみましょう。呼気で強く吐いていきます。

お腹に力が入るでしょう。

首の位置が前方にあると頭を支えるために首が緊張します。ここで力を抜こうとしても中々難しい。顔の位置を引いて体幹部の上に頭を載せましょう。首の力が抜けやすくなるはずです。

出力する際に必要な部位だけが緊張しているか?必要な部位以外は脱力。
不必要に全身を緊張させないようにしましょう。

トレーニングでは高重量を扱う際、固定(安定)という能力が要求されます。かたやスポーツでは可動が要求されます。

柔術においてパワーが必要とされる局面はあるのですが、柔術競技では力に頼らず動きを意識しましょう。トレーニングを行なっていれば力まずとも結果的な力の発揮は行えますし向上します。

トレーニングで気をつけるポイント

・ノンロックトレーニングや比較的高重量を扱わないトレーニングの際、適度な筋力発揮を心がける(≒むやみに色んな所に力を入れないようにする)

たとえば、「脚のトレーニングで首まで力まない」といったあたりです。意外と余計なことをしてしまっていることは多い。

・上肢か下肢、どちらかにのみ力を入れる

=>上述と同じで、力が必要な部位でなければリラックスさせることを心がけましょう。

・スキルトレーニングを行う

単純に重たいものを上げるトレーニングばかりでなく、動きのトレーニングも行いましょう。手軽なものだとちょっと回数多めの自重トレ。

そして綺麗事をいっても緊張下では力むものです。力んでも動ききれる体力を付けるのが近道の人もいるかもしれません。

・軽負荷プライオ

リズミカルな反復です。可動域が拡がって力も抜けやすくなります。やってみましょう。

忙しいビジネスマンこそ重要なコンディショニング

トレーニングと同じくらい重要なのが、その前に行うコンディショニングです。正しくトレーニングをしたいのならば、自分の身体が正しく動くようにしておくことが重要です。その方法論として、まず世間で一般化しつつある筋膜リリース。こんなもの存在しません。このあたりは本当に物申したい。

ということで「筋膜リリース」に物申したこちらのnoteもご参考に。

拙著にもかなり詳しく書きましたのでご一読ください。下記少しだけ引用します。

ファシアとは「結合組織」のことで、人体はその表面から「表皮」「真皮」「浅層脂肪組織」「浅層ファシア」「深層脂肪組織」「深層ファシア」「筋肉」とあります。俗に言う「筋膜リリース」で「筋膜」と言われているのは、この「浅層ファシア」「深層ファシア」のことで、これは「筋肉を覆っている膜」のことではありません。「表皮」から「筋肉」までは結構離れていて、また一言に「筋膜」といっても筋肉の膜は「筋外膜」「筋周膜」「筋内膜」があります。表面をゴリゴリするだけでは筋膜はリリースされません。位置だけでなく構造として筋膜はとても硬いのでほぐせるようなものではありません。
でも、筋膜リリースの方法で可動域が改善したりする感覚はあると思います。何が起きているのか?細胞外マトリックス(ECM)にアプローチすることで、ファシアの状態を改善して可動域や痛みのコントロールを行います。圧迫により深部までアプローチしてファシア内の基質の流動性を高めます。

スクワットの深さは人間性の深さ 戦略思考とやり抜く力を鍛える最強のトレーニング

これが筋膜リリースの手法によって起きている作用。つまり「筋膜リリース」という言葉は間違っていますが、その手法を用いたケアに効果はあるということです。

圧迫がケアやウォームアップに効果的であり、その圧迫を行うための道具として私が愛用しているものに、コンプレフロスというものがあります。ゴムバンドを巻きつけて、筋肉を圧迫をするためのツールです。

圧迫により筋肉自体の動きがよくなり、また神経の過剰な興奮を抑制してくれます。より具体的には、怪我の治りやダメージを受けた筋肉の回復が早くなること、そして筋肥大の効果が期待されています。要約すると、フロッシング(トレーニング前にコンプレフロスで圧迫すること)を行うことでトレーニングを行うための身体の準備ができます。また、ケアとして行っても疲労回復に効果的です。

手と足の裏には感覚情報を取得するセンサーがあります。その感度をアジャストしてくれるのが「圧迫」です。アップの時間がもったいなく思うかもしれませんが、継続するためにも、継続して結果を出すためにも大事です。

あなたがビジネスマンだとして、重要な商談に準備なしで臨むでしょうか?トレーニングも柔術もしっかり準備を行いましょう。

コンプレフロスを用いたウォームアップ、コンディショニングの詳細は下記noteを御覧ください。

↑なんかを見ながら同じことをダラダラやるだけで、かなりしっかりしたケアになるはずです。

クールダウン

クールダウンは疲労回復・障害予防に非常に有効です。運動によって興奮している神経・筋肉を鎮静させる働きがあります。

運動終了後、筋肉の中にたまった疲労物質を排出する効果が期待できます。硬くなった筋肉をゆるめ、柔軟性を回復させると同時に、運動で傷ついた筋組織への修復も進めることができるため、傷害予防につながります。

ゆっくり自重でスクワット10回

筋肉の伸びを感じながらフルレンジで行います。
心拍数を徐々に落としていきます。

ストレッチ

運動で使った筋肉を伸ばしましょう。負荷がかかった筋肉は硬くなっています。

・前屈、後屈

・膝関節の屈曲、伸展のストレッチ

クールダウンにおいても前出の首のストレッチは行うと良いでしょう。

かなり長くなってしまいましたが、アスリートもビジネスマンも怪我が一番の大敵です。怪我をしないためにもウォームアップ、クールダウン、コンディショニングなどケアは必須。楽しみながらトレーニングを取り入れ、素晴らしい柔術ライフを送る方が1人でも増えたら嬉しいです。

PANDA GYMでは柔術向けクラスの開催やパーソナルトレーニング指導でフロスの巻き方も教えられます。是非お声がけください!


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