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アメイジング歌舞伎マン 四月大歌舞伎感想①昼の部

なんとチケット申し込み日付を間違えてしまい
割に高額な一等席を二枚も取ってしまった……
二枚とも別の日程かつ昼と夜で別の演目ではある。
せっかく取ったんだから頑張って行くぞ!というわけで一回目に観に行った昼の部にアメイジング歌舞伎マンがいた!という感想です。
破産したらどうしよう

双蝶々曲輪日記 引窓


歌舞伎役者の顔芸を堪能できる演目だ。
顔芸って言っていいのかわからないが、
お相撲さんの役の人の表情が浮世絵みたいにパキパキ切り変わるのがマジでカッコいい。

登場人物ほぼ全員が「人格者」で、
互いへの気遣いあいが心地良く、アツい。
レストランのお勘定の時の茶番(誰が払うかを半ばキレながら主張するやつ)ってあるけど、
昔うちの祖父母もやってたなぁと老婆役の人を見て懐かしく思った。
みんな優しい。

舞台中央の「引窓」のついた大道具は現代の日本家屋にはないが、雨戸みたいなものなのかな?
昔の日本家屋にはこういうのがあったんだなぁと勉強になった。

七福神


さて今回が人生で5回目の歌舞伎観劇であるが、
今回始めて、あ!あの人、前にも見たことある!を体験した。
坂東新悟さんというらしい。
少し面長で東北にいそうな、鶴田一郎のイラストの女性みたいな涼やかな女性の女形をされる俳優さんだ。

今回は毘沙門天という七福神の役をされていた。
やっぱキレイだった。


それとイヤホンガイドが七福神の紹介をしてくれるのだが、
日本語のユニークな点として、
天皇や神様にだけ使う最上位の尊敬語がある。
〜あそばされる、みたいなヤツ。
個人的に賢い人間フェチなので、日本語にくわしい者がそうした珍しい日本語を使いこなすのにシビれた。

夏祭浪花鑑


アメイジング歌舞伎マンが出てきた
アメイジング歌舞伎マンとは片岡愛之助のことである。

アメイジング歌舞伎マンは、
宿敵をやっつける大立ち回りを演じたり、
2秒おきに寄り目になって見栄を切り、
泥だらけになってみたり、
頭から水を浴びたり、
全裸になって(安心してくださいふんどしは履いてますよ)
全身の入れ墨を見せつけたり(安心してくださいレオタードは着てますよ)
とにかくスゴかった。
一つ前には上品な女形をやっていたし。
まさに「アメイジング歌舞伎マン」なのであった。

これまでも驚くべき役者はたくさん見てきたが、
本物の「スター」を目の当たりにしているという迫力があった。

歌舞伎役者の家に生まれ、自身にも役者の才能があり、自分でも歌舞伎で生きることを志し、実際に歌舞伎のキャリアを積んだ者とは、ここまですごいのか……
時間が許せば観客全員にヨッ!どこから来たんでえ!とかいって話しかけてきそうな「余裕」があった
見たことがない人はぜひ見た方がいい

また、300年前に作られたという演目なのだが、
作劇の珍しさも注目に値すると思った。
悲劇、でもなければ喜劇でもない、
冒険譚でもない、成長物語でもない、
ならず者の物語というだけじゃないけど、
英雄の物語だけというわけでもない……
「美意識」の着眼点が現代では珍しいところにあると感じた。
イヤホンガイドは「殺しの美学」と言っていた。

あらすじとしては、
マジでカスでクズの舅にしつこくインネンをつけられ、最初のころはうまくかわしていたが、いよいよどうすることもできなくなり、殺すしかなくなる、後に引けなくなるといった状況だ。
そうした状況で、もはや個人として持っていた生き方や良心などは二の次三の次になり、
ともかくこの舅にトドメを刺して、見つからないよう死体を隠さなければ、という恐怖と使命感にかられて奮闘する青年の「集中力」「没頭感」を、
夏祭りの日本的なトランス・ミュージックを背景に、
演劇で表現するべき瞬間として切り取っているのが珍しかった。

また、「侠客(きょうかく)」という概念も教わった。
イヤホンガイドが「現代では説明が難しい」と言っていた通りだと思ったが、
昭和生まれの私はかろうじて人物像を構築することができた。
ケンカに強くて、街のならず者を放ってはおけない善性があって、ちゃんとした生い立ちじゃないけど、たくさんの人から慕われていて、女子供もいつも助けてもらってて、この人のことが大好きで……というヤツだ。
最近ではこう描写されるキャラクターを見かけることは確かにないと感じたが、
私も劇中に登場した「つりふねのさぶ」のオッサンのことが好きになれて嬉しかった。

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