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マリカの永い夜/バリ夢日記

📙『マリカの永い夜/バリ夢日記』
吉本ばなな 1994

🇮🇩
医師を辞めたばかりの「ジュンコ」を乗せた飛行機は、バリ島を目指している。となりの席で毛布に包まってくうくう寝ている元患者「マリカ」は多重人格者である。ジュンコが「どこか旅行にでもいく?」と言った時、マリカはバリ島へ連れて行って欲しいと哀願したので、今こうして一緒に夜の中を飛んでいる。
「これ以上悲しいことが、マリカの身の上に起こりませんように。」
🇮🇩
「オレンジ」はいつのまにか「マリカ」のそばにいて、「ペイン」の面倒をみて「ミツヨ」に忠告したり、生意気だった。「ハッピイ」は復讐をするためにたくさんの人と寝た。・・・今、この辺にはいない、でも感じる。感じるけど遠い感じ。蓮の花を見つめるマリカ。
マリカには越えなくてはいけない悲しいことがいくつもある。バリ島で過ごす陽射しと柔らかな日々は「マリカ」の世界を融合させていく。オレンジは、マリカへ手紙を出した。マリカとペインがいちばん好きだった「トーベ・ヤンソン」の幸せな家族のことを書いた本の中から作った、最後の手紙だった。もうマリカは、マリカの体から出られない。もう探しにも行けない。
🇮🇩
ジュンコは、はじめてマリカとダブルベットで一緒に寝た。ものすごくリアルな夢をジュンコはみた。暗い暗いバリ島の夜道を、全く知らないし、でもよく知っているような気がする男の子と歩いていた。
・・・「前にもこういうことがあったわね、オレンジ。」
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窓の外は朝で、すべてを洗い流すような光がはるかな海を照らしはじめていた。疲れ果てた私たちのベッドにも、さんさんと降り注ぎはじめていた。

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