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君の心に刻んだ名前

久しぶりに嗚咽した映画だった。時は1988年、戒厳令が解除された台湾での二人の高校生の恋愛物語。最初は親友同士だったのがお互いを愛するように。BLなんて生やさしいものじゃなかった。同性愛がどうなんて見ている途中でどうでもよくなった。恋が愛に変わる時、少しの唇の拒絶が深い傷を生む。震える身体、身悶えする心。愛しているのに愛していると言えないもどかしさ。そのどれも一つ一つが愛おしくて切ない。恋愛とはそんなものだ。そうだ、悲しんだ。それだ例え男と女だったとしても、青春の間のそれは苦しいものだ。相手のことを思えば思うほど、どうしていいのかわからなくなってゆく。男同士なら尚更だった。この作品を観たというのは、どうも違う。まるで長い長い小説を読んでいるかのような、そう、読後感が生じた。スクリーンに映し出された美しい青年たちの戯れがより一層最後を予感させ胸が締め付けられる。バイクで叫ぶシーン、海で泳ぐシーン、一緒に眠るシーン。拒絶のシーン。繰り返される思い出が過去のものになっていく。内容もさることながら俳優も素晴らしかった。エドワード・チェン(陳昊森)とツェン・ジンホア(曾敬驊)。特にジンホアは素晴らしい。思春期特有の危うさを持った役で見ていてハラハラした。他にも映画やドラマや活躍中なのでチェックしていきたい。この映画は、純粋な青年たちの愛の形をどこまでも密度を濃くして描いた秀作だ。「君の心に刻んだ名前」タイトルが回収される最後の最後まで観て欲しい。


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