871ンスタライブ #025(熊谷涼花)

#871ンスタライブ  #025
2021年1月8日(金)

映像監督の熊谷涼花さんを迎えてお届けした第25回目。映像のお仕事をすることになった経緯や、二人の出逢いや関係性について、そして仕事に対する話など。かなり情熱的な話が繰り広げられた。グッとくる一時間の様子を是非。

主催:柳井貢(以下:871)
ゲスト:熊谷涼花(以下:熊谷)

(871) こんばんは。
年明け、仕事なり学校なりが始まってから初めての金曜日の人も多いのかな。僕は緊急事態宣言の煽りもあって、言葉悪いけどクソ忙しかったですね。

ぶっちゃけ、LINEのオープンチャットをどう使ったらいいのか凄い悩んでます。とりあえずTwitter、Instagramでも告知をしていますが、敢えてオープンチャットの中だけで発言することも作れたらいいのかなーって思ってるんですけど、何を言えばいいのかも悩ましいところなので、考えながら運用してみます。

で、今日は『Saucy Dog』(以下:サウシー)とか『ユレニワ』とか、奇妙礼太郎さんとかのMVや映像を撮ってもらった熊谷涼花さんを呼んでいます。

(熊谷) こんばんは〜!

(871) 観てた?

(熊谷) 観てました!いつも“熊ちゃん”ばっかりなので、熊谷さんって呼ばれると恥ずかしいですね(笑)

(871) 直接喋ったり、カジュアルな時は熊ちゃんでいいけど、お呼びしてますっていう時に熊ちゃんだとね(笑)

(熊谷) そうですね(笑)確かに(笑)

(871) ごめんね。打ち合わせすっぽかしちゃって。

(熊谷) 全然!忙しかったんだろうなぁ〜って皆で察しながらやりました(笑)

(871) 昨日の夜あたりがちょっとえぐかったのよ。だからLINEは既読してたんだけど、スケジュールが調整できたことが自分の中にインプットされないままにスルーしちゃって。ほんっとごめん。

(熊谷) 全くです!だって皆、あの時間はハラハラしながらニュース観てましたもんね。

(871) 本当ね。
ちょっと、改めて話しましょう!
a.k.a.熊ちゃんです!

(熊谷) こんにちは(笑)

(871) 「神戸の方でしたっけ?」ってコメントきてるけど、神戸の方なの?

(熊谷) そうなんです。兵庫県神戸市出身です。

(871) ほんと!まあまあ都会っ子やな。

(熊谷) でもどっちかというと、明石とかあっち寄りです。

(871) 長田とか?

(熊谷) そうですね。でももっと西です。なので神戸って言っちゃダメな範囲の出身なんですよ(笑)

(871) はは(笑)浜っ子、浜っ子って言って、お前山側やから浜っ子ちゃうやん、っていう(笑)

(熊谷) そうそう(笑)海見えないじゃん!みたいなタイプなので(笑)兵庫県出身です、って言うようにしてます(笑)

(871) あれ、いくつなん?

(熊谷) 今は32歳です。今年33歳になる年です。

(871) なるほど。今、映像だけ?

(熊谷) 今はもうバイトもしてないです。

(871) バイト辞めれたん?

(熊谷) 辞めれました!柳井さん様様ですけど(笑)

(871) ははは(笑)

(熊谷) いつだったかな〜。でも一昨年くらいまで映像系のバイトではありましたけど、たまにしてました。安定してなかったんで(笑)不安で、家賃分だけでもって思って、毎月5~6万ぐらいはバイトで稼いでましたね。

(871) なるほどね。
音楽の映像をやりたいなって思ったのは学生時代の時?

(熊谷) そうですね。自分語りで恥ずかしいんですけど、柳井さんが大阪で『cutman-booche』さんのPVを撮るってなった時、私が大学3年生とか4年生とかだったので…、もう10年前とかですね。その時の大学の先生が、「PV撮るから興味ある人来なよ」みたいに言ってて、お伺いしたのが初めてです。それまでもカメラアシスタントのアルバイトはずっと大学生でしてて、カメラマン志望でやってたんですけど、cutman-boocheの現場はすっごい覚えてます。柳井さんがめっちゃキレてて(笑)

(871) ははははは(笑)

(熊谷) PVってこんな情熱的に作るものだと思ってなくて(笑)監督とすっごい「いや、こっちの方がいいよ!」みたいに言ってるのがめっちゃかっこよくて。「えー…!PVいいなぁ…!」って凄い思ったのを覚えてます(笑)

(871) なるほどね。松平さんに連れてこられてたよね?

(熊谷) そうです。松平さんが私の大学のゼミの先輩でした。コメントで質問下さってるんですけど、私は関西大学っていう普通の四大出身で、映像系の大学出身ではないんです。cutman-boocheのPV撮影の時に、制作で来てた女性の方がいらっしゃって。その人が「うちの会社、映像系で募集してるよ」みたいなのを教えてくれて、応募して受かって大学卒業後は関西のテレビの仕事をしてました。

(871) あ、そうなんだ!

(熊谷) 『よ〜いドン!』やってました。カンペ振ったり、芸人さんとお仕事して、みたいな。

(871) へえ〜!

(熊谷) でも早い段階で、“これは映像の仕事じゃないな”って気づいてて。テレビの仕事はテレビの仕事、っていうジャンルだったなと。そういうタイミングでチラチラあのPVの現場を思い出すんですよ(笑)柳井さん達が喧嘩しながら映像作ってたり、照明さんが「ちょっと待って!!」とか言って時間を一生懸命作ったりしてるのを思い出して。めっちゃかっこよかったな〜って思ってる時に、私の師匠になるんですけど、MV監督のスミスさんっていう、『フジファブリック』さんとか『氣志團』さんとかのPVを撮られてる監督さんが、急にTwitterで「弟子募集しまーす」みたいなのを書いてて。これだ!!と思ってDM送って、あれよあれよと上京したのが24歳とか25歳とかの時ですね。

(871) スミスさんの手伝いをするようになったのも、そういう飛び込み的な感じなんだ!

(熊谷) そうです!スミスさん、定期的に募集して下さってて。私達は一期生です。

(871) そう考えると、熊ちゃんと柳井の縁はやっぱ凄いね。俺、cutman-boocheの現場をそんなに印象深く思ってもらえてるとは強く思ってなかったし、この後喋るけど再会したのが、『天才バンド』の『君が誰かの彼女になりくさっても』だよね。あれ、オーダーしつつ本人達は出ません!とか言って(笑)

(熊谷) ははは(笑)めっちゃ最高なんですよね!あのPV!皆さん是非、観てください!

(871) そこでスミスさんにオーダーしたら、打ち合わせについてきたのが熊ちゃんだったっていう(笑)

(熊谷) 私もうその段階から、「あ!あの、cutman-boocheの撮影でめっちゃキレてた人だ!!」って思ってて(笑)

あ!もう一個だけ話してもいいですか?cutman-boocheの印象深いエピソードで、PVの撮り方も印象深かったんですけど、私みたいなペーペーで経験値無いやつが手伝いに行ったのに柳井さんがわざわざ、ありがとうっていうメールを下さったんです。で、ライブがあるからって梅田シャングリラに呼んでくれたんですよ。一緒に手伝いに行った友達と一緒に見に行ったんですけど、こんなことあるんだ!って思いました。で、打ち上げも参加できるならちょっとでもおいでよ、って言われて行ったら、皆が「ありがとう〜!」って言ってくれて。「えー!すごーい!」って思ったの覚えてます。

(871) ほんと!俺は全然覚えてないけど(笑)

(熊谷) 憧れだー!って思いました(笑)あの世界が。
で、スミスさんの弟子をやって2年目、2016年くらいの時にスミスさんに天才バンドのお話がきて、柳井さんと打ち合わせした時に、「あ、あの人だ!」と思ったんですけど、ビビって全然お話できなくて。

(871) そうだね。「なんか見たことある子なんだけど、どこで会ったんだっけな」くらいの感じだった記憶がある。

(熊谷) 最後の撮影日に、メンバーが出ないのに千葉まで柳井さんがわざわざ来て下さったんです。「撮影ありがとうございました」みたいな。凄い良いPVで、曲も良くて、スミスさんも凄い素敵な映像撮ってて、柳井さんがそうやってわざわざ挨拶に来て…ってなり、今しかないな!と思ってその時に初めて、「cutman-boocheの時に実はお会いしてて…」って言ったら、柳井さんが「あ〜!!」みたいな。「あ、これは!嘘の“あ〜”だな!」と思いながら(笑)そこでTwitterをフォローし合って、柳井さんが私に「いつかまた、お互い大きくなったら仕事しようね」みたいなリプライをくれたのが凄い嬉しかったです。それから2018年とかのサウシー初ツアーがあるタイミングで、ご連絡頂いてっていう感じですよね。

(871) 奇妙さんよりサウシーの方が先だっけ?

(熊谷) それはぶっちゃけて話すと、私が自立したいなと思ってスミスさんのアシスタントも辞めたタイミングに、仕事欲しいです、みたいなことをネットに書いてたら、柳井さんが「1回お会いしてお話しませんか?」みたいな連絡を下さったんです。「お話したいです」って言ったら「じゃあ今日ライブがあるのでよかったら現場来てください」みたいなことを言ってくれて、行ったのが多分『THE ORAL CIGARETTES』さんのO-EAST公演とかで。柳井さん何の仕事くれるんだろう、と思ったら、「何かしたいことある?どういう映画が撮りたいの?」って言われて(笑)え!何だこの質問は!!と(笑)「もちろん一番はMVを撮りたいんですけど、やっぱり私は自分でちゃんと見たものを撮っていきたいかもしれないです」みたいな話をちらっとしたら、奇妙さんのPVのお話と、「うちからから今度出る3人組のバンドがいて、もしかしたら相性いいんじゃないかと思うから、一回ライブ行ってみない?」みたいな感じで、サウシーは始まりましたね。

(871) ほぼ(奇妙さんと)同時っていう感じだったんだ。

(熊谷) そうです。だからもし私が「○○撮りたいです」とか(名指しで)言ってたら、サウシーじゃなかったかもしれない。そう思うと、運命とか縁だなって思いました。

(871) 奇妙さんの方は、当時当て振りもしないスタイルだったし、作るものにこだわりも強かったから、言い方悪いけど、ある程度アーティストなり柳井なりが「こうして下さい!」って言ったら「はい。分かりました。そうします。」って言ってくれる人じゃないと作れなかった。監督はこういうものを作りたいからって喧嘩する時間はなかった。で、サウシーの方はなるべくずっと同じ人について回ってほしいっていうのがあったから、ある程度暇な人じゃないと嫌だっていうのがあったの(笑)

(熊谷) ははは(笑)言ってましたね!(笑)

(871) それが両方ハマって、これはもう熊谷捕まえておくしかない!と思って、

(熊谷) 有難く捕まえられました(笑)

(871) 最近は自分が細々発注するわけじゃないし任せてるけど、俺からすると熊ちゃんが「『Little Glee Monster』の仕事しました!」とか言ってて、売れやがって、みたいな複雑な気持ち(笑)

(熊谷) ははは(笑)いやいや(笑)でもリトグリちゃんもサウシーと同じ感じでずっとやってて。柳井さんみたいに、スミスさんからお世話になってる方がお仕事くれて、一緒に成長させてもらってるなって勝手に感じてます。

(871) お世話になった人とか、キッカケになった人が色々いるわけじゃん。そこにある程度配慮しなきゃいけないなって思ってるから我慢してるけど、自分の本音を言うと、俺が捕まえたって思っていたいみたいな欲求はある(笑)

(熊谷) スミスチルドレンですけど、柳井チルドレンです(笑)皆コメントで書いてくれてるけど、まさに「サクセスストーリー」ですよね。私が一番まだ信じきれてないなって思います。こんな話。

(871) まだまだこれからですよ。「熊ちゃん、納品1ヶ月でMVの納品お願いしたいんやけどいけるかな?」って言って「1ヶ月は無理ですね」って言われる時が来て欲しいよね。

(熊谷) 売れたいですね。サウシーで言うと、日吉“JP”純平さんとか白石達也さんとかがどんどん色んな仕事してて、やっぱお互いが得じゃないとダメだなって思います。私だけ、まだチルドレンのままなので、もっと修行を積んで、積んだ物をちゃんとサウシーだったり、ユレニワに返していきたいとすっごい思ってます。それぐらい大切ですね。

(871) JPくんも白石くんもすごいなぁって思うし感謝もしてるし。けどそこと比べて熊ちゃんがどうとか全く思わないけどね。

(熊谷) 本当ですか。そうやって言って貰えると嬉しいです。

(871) そこが複雑なわけさ。サウシーのツアーのドキュメントを撮るってなったら基本的に熊ちゃんに来てほしいから、ある程度お暇でいてもらわないと困るっていうか、ある程度優先してもらわないと。でもいつかそこはジレンマがくると思うし、そうなった時に熊谷のことを120%わかってる弟子みたいな人がついてくるでも全然いいんだけどね。ただ、デカい仕事してるからいいっていうことも全然ないしね。

(熊谷) 丁度今コメントでも「売れるってどこまでいったら売れたなんですか?」ってありますけど、本当にそうですよね。

(871) だって、ミュージックビデオの監督のギャラって製作の総予算が上がったところでさ、監督は作りたいものにお金をかけるから結局手元にいくら残るんや、って。

(熊谷) サウシーの最近でたアルバムに収録されている楽曲の『今更だって僕は言うかな』のPVを撮らせてもらったんですけど、それこそ予算がちょっと限られてて。でも柳井さんが、「熊ちゃんはやりたい人いる?」って聞いてくれたんです。私はいつもお世話になっている「祭」っていう制作会社の松下くんっていうプロデューサーさんをお願いして一緒に作らせてもらったんですけど、マジで愛がなかったらあんなクオリティーで出来なかったなって私も思っています(笑)愛と、メンバーの努力と、柳井さんや牛山さんや、A-Sketchの皆さんの協力がなかった出来なかったなって凄い思いました。

(871) そうだね。伝わりきらないかもしれないけど、今出てきた松下くんっていうプロデューサーはさ、それこそオーラルとかで柳井が仕事しまくってる「祭」の家泉さんの後輩っていう人間関係もあって、熊ちゃんのことも応援してるけど山下くんのことも応援してるみたいな背景の中で、そんなに潤沢にあるわけじゃないけど、全然なかった予算をちょっと小増しにしつつ、その分俺がむっちゃプレッシャーかけるっていう(笑)

(熊谷) そうですよね(笑)そこが柳井さんって凄いなって思いました。やっぱり、ある程度決まってる額の中でやらなきゃいけないけど、こっちが「こうやりたいから、もうちょっとだけこうしてもいいですか?」って言ったらちゃんと判断して、ダメな時はダメって言うんでしょうけど、今までダメって言われたことない気がします。

(871) くれって言われたら払うよ、基本。

(熊谷) そうなんですね(笑)

(871) いくらでも使えとは言えないけど、俺ね、結構ギャラも予算も値段を言ってくれる人の方が好きなのよ。

(熊谷) え!そうなんですか。

(871) それって、その額以上の仕事をする自信がないと言えないじゃん。

(熊谷) 確かに。

(871) このぐらいの予算の中でやらなきゃいけない、っていうのがないことはないけど、より良いものを作って、より売上を立ててっていうビジネスモデルでもあるから。ライブはキャパの上限が決まってるビジネスモデルだけど、CDは買ってくれれば買ってくれるだけ、サブスクで聴いてくれれば聴いてくれるだけ売り上げ立つから上限は決まってないっていうか。その中で、どこまで制作費に突っ込むかっていうのは賭けではなくて、良いものが作れるならそこに投資をすればいいじゃんと思ってる。頼まれた予算の中で良い感じでやりますっていう人より、絶対いいもの作るんでこの額は用意してくださいっていう人にお願いしたいじゃん。

(熊谷) それ、柳井さん当たり前な感じで言ってくれますけど、結構"柳井さん論"だなって思ってます。今日その話言ってもらえてよかった。

(871) いやいや。俺だって若手の若手とかには、「ごめん、これだけでやって」っていう時も全然あるけど、基本は聞くじゃん。「柳井さん、あれの請求書いくら出したらいいんですか?」って言われても「え、いくらでほしいの?」みたいなさ。

(熊谷) 聞いてくれますよね。

(871) 「いくらでも良いですよ」って言われちゃうと、え?300円でもいいの?みたいな気持ちになっちゃう。

(熊谷) そりゃそうですよね(笑)

(871) それが嫌なんだったら、1日稼動で1万円なのか3万円か5万円なのか、自分の仕事の値段を言える人であってほしい。かける時間とかも含めて、自分の技術とか能力、ノウハウ、アイディアとかを仕事にする人にはね。そういう人と仕事したいかな。

(熊谷) 勉強になります!(笑)
でも、投資するっていうのが柳井さんっぽいなって思いました。私とかに対しても投資してくれてるなっていう。それこそ柳井さんとお仕事を始めた当初なんて、私マジでお金なくて。でもサウシーの仕事したくて。そしたら柳井さんが、「先にツアーについていく分のお金を振り込んであげるから、それだったら大丈夫?」とか、熊ちゃんはどうしたいの?熊ちゃんはどうなったらできるの?っていう部分を踏まえてやってくれたので、私も適当にはできないというか。もとから適当にはしないですけど、より返さなきゃなとも思うし、頑張りたいなって思えてそれが今まで繋がってるのが嬉しいなって思います。

(871) それはそう思ってやってますね。どんどんインターネットが4G、5Gってなってデータの通信量が増えていく中で、映像の重要性が上がってくるのは目に見えてる。その中で機材とか企画力っていうのはリファレンスが山ほどあるから、それなりにかっこいいものってある程度の知識と技術があれば作れる。そうなった時に、何に一番違いがあるんだろうって思うと俺は経験量だと思っていて。熊ちゃんが、サウシーの初ワンマンから武道館に至るまでの時間を一緒に費やして、サウシーのことを見てきたっていう経験量は他のディレクターにいくら払おうが得られないものなんだよね。この3~4年で見てきた熊谷だから撮れるものがあるだろうっていうのを買うために、たかだか30万とか50万円のギャラを前払いするのなんか、俺からしたら全然安かったりする訳じゃん。

(熊谷) え〜〜。嬉しい〜〜。

(871) 探してもないんだもん。そんな暇な良い感じのディレクターが。

(熊谷) ははは(笑)それはあります(笑)

(871) 俺からしたら、それだけ音楽なりアーティストなりに愛情があってまだ駆け出しで多少のペイメントをすれば、時間を投資してくれるっていうディレクターがそこにいたってことだよね。ちゃんと熊ちゃんがこっちの期待以上に応え続けてくれたから、今こうやって関係が続いてるっていうか。

(熊谷) ありがとうございます。柳井さんが言ってたことで本当にそうだなって思ったのが、最近、皆うまいんですよね、サウシーのファンの人とかがフォローしてくれて、カメラを持った写真とかをアイコンにしてる方がいらっしゃると、やっぱりライブとかを撮ってたりするんですよ。めっちゃ上手いわ!うまいし若いし、私は、ばばあだし、違う付加価値つけないと負けてまうわ!って(笑)もしかしたらその付加価値が、ずっと見てきた経験量とかそういう部分なのかなって思いました。考えてきてなかったんですけど。

(871) 経験量はものすごい大事。例えば、もの凄いアイデアマンでお金の計算も上手で作戦立てるの上手で音楽マーケットのことをすごくわかってる人が、サウシーのマネージャーをやりたいって出てきたとする。でも過去何年のストーリーとかメンバーの考え方とか感情とかを知ってるか否かで言うと、俺とか一緒にやってるマネージャーとかの方が確実に分かってる訳じゃん。そこを担保しながらも出てくるやつに負けないように、こっちもマーケットとか今のトレンドの売り方とかプロモーションの仕方の勉強も頑張るんだけど、そこがそれぞれの仕事をしてる人にとっても資産になっていくんだろうなって思うんだよね。俺がそこそこのディレクターに、ドキュメントをツアー毎にとっかえひっかえお願いしてたら、あの『今更だって僕は言うかな』のビデオはなかったわけじゃん。

(熊谷) そう思います。カメラマンとかもずっとサウシーのライブを撮ってくれてた子とかなので。私には私のサウシーがあるし、その子にはその子のサウシーがある。さっき話した山下くんとかも野音のパッケージやってくれたので、そこからの歴史とか、それぞれあるなって思います。

(871) 今回限りだろうなっていう人にそんなギャラも払わないけど、熊ちゃんに関してはちゃんとうまく続けば、将来のサウシーにとっての資産でもあるし、俺にとっての熊ちゃんの存在自体が資産になるなと思った。だから熊ちゃんに撮ってもらう為に多少の前払いするのなんかめちゃくちゃ容易い、俺からしたら。

(熊谷) 私以外にも、他のチームでそういう方がいらっしゃるのかな、と思うんですけど、そういうのって何か基準があるんですか?柳井さんの中でポイントみたいな。挨拶できるやつ、みたいな感覚。

(871) わぁどうなんだろう。ちょっとわかんないけど、ガッツみたいなとこかな?読みが外れることも全然あるんだけどね。こいつは将来的にこうなってくれたら凄い自分にとっても凄くありがたい人材になりそうだから、どんどん仕事振ろうとか、状況によっては仕事と別の形でギャラ作ろうみたいなこともあるんだけど、それが全部当たることもないし、借金肩代わりするみたいなこともあったし。

(熊谷) えー!(笑)そうなんですね!すごい!

(871) まあでもあれかな。損得勘定も働いてるし、プラスアルファ一緒に仕事してて気持ちいいかどうかみたいなことかな。オーラルとかサウシーのヘアメイクの鈴木智之くんっているじゃん?俺、ともくんめっちゃ好きなんだけど、ともくんの象徴的な良いところは、撮影で「演奏シーン1回カット!メンバーさん休憩です!」ってなった時にさ、アシスタントさんは水出す、ヘアメイクさんは汗ふく、みたいな流れの中で、ともくんはギタースタンドを持って出れるヘアメイクなのよ。

(熊谷) そうですよね!(笑)PV撮影の時にモニター持ってくれたりしますもんね。

(871) 自分のセクションをプロフェッショナルにやりこなすのは勿論、最低限必要じゃん。だけど現場で起こりうることって役割通りには動いてくれないっていうか、お見合いする場面って絶対あって。ライブの現場で、ステージドリンクがなくなった時に水を出し直すのは基本的にはマネージャーの仕事かもしれない。でもマネージャーがそれに気づかない時なんていくらでもあって、その時に楽器さんとか、音響さんとか、ステージ周りにいる人が水を出すとか、他のセクションの人がやってもいいじゃん。全体のエンターテインメントして質が上がるなら。気づける方がいいし気づけたことはやろうよって思うから、そういう自分の役割を決めきらずに動いてくれたり、より良いものを作るために動いてくれる人と一緒に仕事してたいって思ってるかな。そんな感じかも。

(熊谷) その話で言うと、ユレニワのPVもやりたいことの割に本当に人手が足りなくて。カメラマンさんに車の運転をずっとさせてるとか、ユレニワのマネージャーさんの佐々木さんとか、MASH A&Rの大場さんっていうフリーで色んな事をされてる方、お二人とも全力で手伝ってくれて。物も運ぶわ、火をつけるシーンは皆で火をつけるわ、「何かあった時はこれします!消化器やります!」って皆でやってくれて。これ、あたしが最初にみて憧れた柳井さんの現場と同じかもしれない!皆で作ってるわ!って感じました。

(871) めちゃくちゃ大事だし、本人達からは聞かないから、こうやって熊ちゃん経由でさ、大場とか佐々木とかがそういう風に動いてたよって聞こえてくるのは俺としても物凄く嬉しいよね。

(熊谷) サウシーのメンバーも皆で楽器運んでくれて。メンバーなんて楽器運んだ後、演奏シーンを笑顔で綺麗な状態で撮らないといけないじゃないですか?

(871) そうやって作ったものの方が思い入れも残るし、皆で届けたいなっていう気持ちにもなるしね。

(熊谷) そうですよね。PV撮って一番悲しいのって告知してもらえないことなんですよ。折角皆で撮ったのに、やっぱり嫌だったのかな。PV、よく思ってなかったのかな?ってネガティブな方に思っちゃうんですよね。そんなこと全然ないと思うし、忙しかったり色んな事情があって出来ないんだと思うんですけど、今回は皆がああやって、楽しみ!って煽ってくれて、皆も撮った段階から違う部分でも価値を感じてくれてたんだなぁと思って嬉しかったです。

(871) いいですよ。ありがたい。皆がそうやって協力してくれてるのが。

(熊谷) サウシーの武道館、できたらいいんですけどね。

(871) まあまあデリケートなところ突っ込んでくるね(笑)

(熊谷) でも私はオープニング映像とか色んな楽しいこと考えててます。どうやって撮るかとか。

(871) やりたいよねー。やれなくてもいいじゃんって思ってる人は1人もいないもんね。
熊ちゃんって岩崎慧くんに会ったことある?

(熊谷) サウシーとの対バンの時にお会いしたぐらいで、ご挨拶とかはしてないです。

(871) 色々サウシーのレコーディングでやってくれてるけど、慧ちゃんも武道館めちゃくちゃ楽しみにしてくれてる。やっぱり皆楽しみにしてくれてるし、できることならやりたいよねって思ってくれてるので。そこが叶うならもちろんやるし、でも世の中の99%の人がやるなって思っているような状況になってしまえば健康被害を犠牲にしてでもやるわけにもいかないから、それは冷静に判断しなきゃいけないところだけどね。

(熊谷) そういうことをリアルタイムで柳井さんみたいなポジションの方がちゃんと話してくれるっていうのは凄いありがたいなと思いますし、大切だなって思います。

(871) 多少なりそういう意識もあって、この配信やってるみたいなところもあるけどね。

(熊谷) オーラルさんの中止の話とかもこの前してて、凄い、今こんなのも聞ける世の中なんだ!って思えました。

(871) 俺も、あっ!これ言っちゃダメなんだっけ!まだ!みたいなこともあるけど、それも含めてというかね。なんか『NiziU』とか『BTS』とか、めちゃくちゃ上手じゃん。過程を見せたりするのも。

(熊谷) あ〜そうですよね。応援したくなりますよね。

(871) やっぱり実際裏側で起こってる事とか、そこでの感情変化って、どの現場でもどのアーティストでも似たようなことが起こってて。それの出し方が上手かクローズするかで、応援してくれてる人の思い入れが変わってくるなら、俺はどっちかというと、どんどん出していきたいなっていう気持ちが強い。近日公開される映像も、俺はやっぱりああいうの出したかったし、それを撮って編集してくれた熊ちゃんはもう、分かってるな!って感じだったし。

(熊谷) でも、撮らせてくれる本人とか周りの人あってこそ出来てますね。

(871) そうだね。でもあれもさ、積み重ねてきた何年かがあって、熊ちゃんだから撮れてるってのもあるから。熊谷が使うって言ってるならしょうがないなぁ、みたいなところって絶対メンバーもあるから。

(熊谷) サウシーの石原君とか、ユレニワのRENJUくんとかが「熊谷さんがしたいようにしてほしい」って言ってくれて。今まで指示をされてやるっていうことの方が多かったから、そんなこと人生で言われたことなくて。改めて、私がしたいことってなんだろう?ってここ最近思います。

(871) そこに対して柳井が期待してることがあるとするなら、ドキュメント性というか、如何に過剰演出のない演出をできるかどうか。

(熊谷) 最近ダメだなって思うのは、気を遣う部分が出てきちゃってることです。私だったら撮られたくないな、とか、私だったらやだな、みたいな塩梅が難しいです。そういう時にダメだな、って思う時もあります。

(871) 確かに。それはむしろ撮ったほうがいいね。撮って欲しい。

(熊谷) ある程度の客観性というか、お仕事をもらっていて、仲間ではあっても他人ではあるっていう自分のポジション感の理解を忘れないようにしようと思います。可哀想だからやめよう、って思う方が絶対嫌だろうなって思いますし。

(871) 今、熊ちゃんはお金もらってるからとか、仕事としてっていう表現をしてくれたけど、何かそういうことではなくて、熊ちゃんが見ててちょっと辛かったりとか、私だったら映されたくないなっていうところにドキュメントがあるから。感情曲線って、苦しいがあるからこそ、楽しいのコントラストがつくから、熊ちゃんはどんだけ悲しいかろうが涙を流して嗚咽になろうが、カメラを回し続けなきゃいけないんだよ。

(熊谷) そうですよね…!

(871) 言っちゃえば、使うかどうかは後から決めればいい話だから、自分がギューってなる時ほど回さないといけない。心を鬼にして。

(熊谷) そっかぁ…。確かに。

(871) ちょっと凄くエモーショナルな描写だからみなまで言えないけど、すごくショッキングな出来事とか、トラブルが起こったとする。俺はそのトラブルの対応をしなきゃいけなくて、演者とかステージ、客席に対してすごくシビアに向き合うわけじゃん。実はそういう時、俺絶対後ろで、カメラ回してって指で合図してるから。俺はトラブルに全力で向かってるけど、回しとけよっていう。そこ回しとかないとドラマ生まれないし、伝えられない。カメラクルーを呼んでる時はその人達に向かってやってるし、カメラクルーがいなかったとしたらもう現場マネージャーだろうが楽器スタッフのスマホだろうが何でもいいんだよ。

(熊谷) へえ〜〜…すごい。

(871) どんなアーティストだろうが、トラブルとか、ハプニングが起こった時は、俺はマネージャーとして回してて欲しい。

(熊谷) なかなかいないですよね。大体、撮らないで、っていう感じ。

(871) いやいや、回さないとダメだよ。

(熊谷) そうですよね。使う使わないは本当、後で判断できますもんね。撮ってなかったらそれすら判断できない。柳井さんの素敵なところっていうか、いつもありがたいなって思うのは映像に対して、そういう残すことの大切さとか、ライブ撮っとこ!とかを言ってくれるところ。すごい嬉しいです。

(871) いやもう本当、ハプニングっていつ起こるかわかんないじゃん。例えば10カ所ツアーがあって、ツアーファイナルだけを10カメ入れて完璧に抑えるぐらいだったら、10本全部1カメで撮っててほしいのよ。

(熊谷) 柳井さん、そういうタイプですよね(笑)

(871) もちろん、ちゃんと見せるべきところを見せて作品として成立させるために、ある程度の台数を入れたり、撮り方を試行錯誤するのは重要だし、そこを疎かにするわけではないんだけど、かっこよく撮るのと記録を敢えて天秤にかけると、記録の方が俺は上。その事実を撮り逃してしまうと後世に伝えられないから。だからなるべく長く回してほしいし、撮り逃しはすごい後悔しちゃうし自分が悔しいから、やっぱり回してて欲しいっていうのはあるかな。そこに感動の材料がどんどん残ってたりするから。

(熊谷) 改めて胸に刻んで撮影します。

(871) お願いします。
熊ちゃんそろそろ、2人目3人目の熊ちゃんを作っていかないと。

(熊谷) 柳井さんそれいっつも言ってくれますよね。だから、私も仕事の話とかした方がいいんだって思えました。嫌じゃないですか?「仕事しましたー」とかツイートしたら。「ツイートすんなよ」とかならないですか?(笑)

(871) いやいや、した方がいいよ。

(熊谷) 私も自分のきっかけがSNSだったから、やっぱり誰かしら見てるんだなって思ったんですよね。悪いことも含めて。悪いこともありました。SNSのせいで暴言吐かれたり、ネットに書くなよって逆に怒られたこともありましたし、そういう経験が色々あってこその今なので、こういうインスタライブを観て下さったり、Twitterみててそういう仕事がしたいなって思う人は連絡ほしいなって凄い思っています。もし興味ある人いたら連絡ください。

(871) そこは両方だね。むちゃくちゃ求めてるし、だけどそんな簡単な世界でもないよっていうのもあるし。だから本当にやりたい人はどんどん入ってきてほしい。でも仕事を手取り足取り教えてもらえるような職場でもないじゃん。俺もプロデューサー気質というか、ディレクター気質というところが多少なりあるけど、やっぱり自分が細かいことをディレクションできる限界みたいなこともすごく感じてるし、どっちかいうと大きい考え方は共有した上で、そこ踏まえた上であとは好きにやって、みたいな。その上で、自分達が良いと思うものに全力で時間と労力をかけれる人たちに仕事をお願いしたいからさ。適度にサボりながらいい感じで、みたいな人は生き残っていけないっていうか。

(熊谷) 難しいですね。そういう中で探していくのは。結構宝くじ引く感覚ありますよね。

(871) 普通に夜中の3時とかにさ、「ごめんやっぱ修正!」みたいなの全然あるじゃん。

(熊谷) はは(笑)でも楽しいこともいっぱいある世界だとは思ってるので。興味ある人は、きっかけになることはもしかしたらあるかもしれないので、是非声掛けてください。

(871) 最近、なかなか1時間のルールを守れてないんだよな、俺。

(熊谷) お忙しい中、すみません!(笑)楽しかったです。

(871) いえいえ!こちらも楽しかったです。
こんなに1時間みっちり喋ることなんか普段ないもんね。

(熊谷) 打ち上げもないですしね。これからもお仕事また頑張ろう!って思いました。ありがとうございました。

(871) じゃあ、熊ちゃんまたね!

(熊谷) ありがとうございましたー!



(871) ありがとうございましたー!
いやー、良い回だったな個人的に。でも大変なことも苦しいこともあるし、良いこともいっぱいある。熊ちゃんは、僕が勝手に期待して勝手に投資したら勝手に頑張って、期待値をどんどん超えていってくれた尊敬できる人なので。僕の仕事をずっとやっててほしいなっていう気持ちもあるし、僕が発注できないぐらい忙しくしててほしいなっていう気持ちもあるし、そこは切磋琢磨して楽しい仕事をしながら成長していけたらいいなって凄く思ってます。

「柳井さんからみて、熊谷さんの撮る映像の魅力ってなんですか?」
なんだろう。兎に角真剣で、対象物に愛をもって、持てる力の全てを尽くしてくれるっていう感じかな。色味とか撮る画が、っていうこともないこともないんですけど、そういう技術の部分というよりかは、取り組み方とか向き合い方に僕は引っ張られることが多いですね。

「自分の仕事の価値を言えることが大事という話にハッとさせられました。自分は自分に自信がないのでなかなか難しいです。」
小さいことからで全然良いと思うんですよね。これに気づいて出来たのは自分だからだよね、みたいなところからなのかな。自分が現場に行って時間を使って、自分の能力をそこで費やしてっていうのをプロフェッショナルとしてやっていこうと思うと、例えば1ヶ月で25日働いたら25万円以上は絶対欲しいじゃないですか。年齢とかキャリアによるとは思いますけど、そうなった時に1日の自分のギャラを1万円で設定するのか、2万なのか3万なのか、5万なのかっていうのはある程度自分の中で目安を持っていた方が良いのかなって思いますね。目安をもつことで、目安よりギャラが安かった時に、何のためにやってるか、どこの部分に投資をしてるか、が自分の中で考えとして生まれてくるのかなっていうのはありますね。
 ちょっと難しい話だったかな。

時間オーバーしちゃったので、今日はそんな感じで、アフタートークはほどほどに。
ひとまず皆さん、おやすみなさい。

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