3.11#いのちの日ー「死」の中でさえバッハ家の音楽には希望が!?
3月11日#いのちの日。この数年間は特に、生や死という根源的なテーマと向き合わざるを得ない日々が続きました。音楽は世の中を表す鏡です。今年の「テューリンゲン・バッハ週間」音楽祭の中にも、「死」のテーマがあちこちに散りばめられています。
以前に、音楽祭のモットーは「希望 Zuversicht」であると、ご紹介させていただきました。一見相反する意味を持つかのように見える希望と死が、なぜ結びつくのでしょうか?
こちらは今年の音楽祭の特別企画「子供たちと考える死のコンサート」を催す、ニナ・グロルさんのインタビュー記事(抜粋・意訳)です。ニナ・グロルさんは、1997年生まれのピアニストでもあり、終末ケアのお仕事にも関わっておられます。
この世のわずらしさから解放されて、平穏なる永遠の命を得ること。バッハの音楽祭の公演を眺めてみると、このことをテーマにしたバッハの作品に何度も出くわします。例えば、バッハの教会カンタータ「Ich habe genug BWV82」。この歌詞はバッハの弟子でもあった神学者クリストフ・ビルクマン(1703-1771)によるものですが、彼は地上の苦しみから逃れ、イエスと結ばれることによる慰めを、この作品の中で強調しています。このカンタータは、今年の音楽祭では、prjct.amsterdamやWeimar Baroqueの公演で聴くことができます。
またバッハの作品だけではありません。バッハの親戚ヨハン・クリストフ・バッハ(1642–1703)の曲「Es ist nun aus mit meinem Leben」。これは今回の音楽祭で最も多く取り上げられている作品です。J. C. バッハはテューリンゲン州に数々登場したバッハ家の音楽家たちの中でも、最も評価された17世紀の作曲家の一人なので、TBW音楽祭の中でも毎年耳にする作曲家です。この楽曲自体は、この時期のドイツ・プロテスタントの葬送音楽に典型的な、簡素で多声部のアカペラ様式、有節形式でできています。この曲が聴けるのは、今年のアンサンブル・レジデンスB'Rock Orchestraの2公演と先にも挙げたprjct.amsterdamです。
話が長くなりましたが、やはり、百聞は一見にしかず。上にも何度も挙げたアンサンブルprjct.amsterdamで、ヨハン・クリストフ・バッハの楽曲を実際に聴いてみませんか。「死」といった最も不幸な出来事の中にも見出される平穏への希望が、心の中にじわじわと湧いてくるかもしれません。
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