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二つの音楽ドキュメンタリー : 三月の水とモンタレー・ポップ

二つの音楽ドキュメンタリー : 三月の水とモンタレー・ポップ

3月に聞きたくなるのはアントニオ・カルロス・ジョビンの「三月の水」”Águas de Março”。

ジョビンとエリス・レジーナのアルバム "Elis & Tom" 制作過程のドキュメンタリー、タイトルそのまま『エリス&トム』がブラジル映画祭in 東京で公開された。

1週間という短い期間、上映はたったの3回で観に行った日は満席。観客年齢かなり高め。
アルバムレコーディングの様子を、当時の彼らを

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るきさんみたいな人 - 『すべての夜を思いだす』

るきさんみたいな人 - 『すべての夜を思いだす』

アカデミー賞、『哀れなるものたち』がいくつかの部門で受賞した。作品賞は逃したが、エマ・ストーンの主演女優賞と、あと美術賞、衣装デザイン賞、メイクアップ・ヘアスタイリング賞獲得はやっぱりそうだよね!と納得。

美術が本当にすばらしかったし、どういう構造になってるの?なファッションも楽しかったし、フォントからセットに至るまで細部まで手を抜かずお金をたっぷりかけて作り込まれた贅沢な映画だった。
劇場に見

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親の老いに向き合う - 母の緊急搬送と『ボーはおそれている』

親の老いに向き合う - 母の緊急搬送と『ボーはおそれている』

帰省中の先週土曜日、母が夜中に大量に鼻血が出て止まらなくなり救急車で救命センターに搬送された。
母は普段は血圧は正常で、血流をサラサラにする薬も服用しておらず、本人曰く「鼻血が出たのは子どもの時以来」。

宵っぱりの母、その日も12時前に入浴。先に入った私はもう寝ようとしていた。浴室から呼ばれて行ってみると母も辺りも血まみれで、転んでどこかを切ったのかと思った。
鼻からはほんとに「ドクドク」という

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次に親になる時は小林先生みたいに - 『窓ぎわのトットちゃん』を観て

次に親になる時は小林先生みたいに - 『窓ぎわのトットちゃん』を観て

やっと観てきた『窓ぎわのトットちゃん』。
実は前に予告で観た時、アニメの絵と声優に「あ、これは私はちょっと苦手かも」と思った。

昨年12月に友だちと自由が丘を散歩した時も、駅前再開発工事の仮囲いにプリントされた映画の数場面を見ながら、「いい映画みたいだけど私は観に行くかわからないな〜」と話していた。
原作は読んだし、アニメの方はもういいかなと。

でもこの時はまだ観に行く予定はナシ。

今年に入

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親の老いに向き合う - 母の変化とクルミッ子の因縁

親の老いに向き合う - 母の変化とクルミッ子の因縁

新年最初の投稿なので、何かおめでたいことを書きたかったのだが、特にめでたくもないお話し。

年末年始は91歳一人暮らしの母の元に帰って一緒に過ごした。
noteには母とのことを何回か書き、「親の老いに向き合う」というマガジンにしている。
老いに伴う母の困った言動に、その時はイライラしたりあきれたりしてもnoteに吐き出せば自分の気持ちも収まり、キー!となる自分を半ば面白がる心の余裕もあった。

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犬も役者 - カウリスマキ映画 『枯れ葉』

犬も役者 - カウリスマキ映画 『枯れ葉』

引退したはずだったアキ・カウリスマキが復活するという話をmakilinさんの「アキ・カウリスマキいっき観」という記事で知った。makilinさん、ありがとうございます!

復帰後最新作の『枯れ葉』を観に行った。

カウリスマキはやっぱりカウリスマキだった。
すごくよかったー!
安定のいつもの人たち。いや、以前の作品とは設定も登場人物も違うんだけど、あの世界にまた浸れて幸せ。
『希望のかなた』に出て

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時が癒せる力はバンドエイド程度のもの- 寝なかった二つの映画

時が癒せる力はバンドエイド程度のもの- 寝なかった二つの映画

この夏は映画館で寝てしまうということが続いていた。つまらないからというより、暑さによる疲れとか老化のせいもあったかも…だけど、この2本の映画は寝てる場合ではなかった。

一本目、『アステロイド・シティ』。

1955年のアメリカ、紀元前に隕石落下によってできた巨大クレーターが観光の目玉の砂漠の町アステロイド・シティに集った人々の群像劇…を、役者たちが舞台で演じる過程をテレビ番組で見せる、というのを

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PG12でも小学生に伝える心意気

PG12でも小学生に伝える心意気

何度かnoteに書いているが、現在60代夫婦2人暮らしの我が家で、2紙購読している新聞のうち一つは毎日小学生新聞(毎小)。
以前学校司書をしていた時の習慣というのもあるけれど、おもしろいからというのが一番の理由。たまに夫も職場に持って行って回し読みしている。

今朝の毎小1面は、明日から公開される映画『福田村事件』について。

2面まで続く記事の中で、この映画の監督、森達也は集団の狂気について語っ

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「人生に必要なのは、串焼きとレモンジュース」 - 星くずの片隅で

「人生に必要なのは、串焼きとレモンジュース」 - 星くずの片隅で

香港映画『星くずの片隅で』。
原題『窄路微塵』、英題 "The Narrow Road"。邦題はセンチメンタルに走りすぎているし、どうしても『この世界の片隅で』を連想してしまう。
でも、作品はとても良かった。

ざっくりあらすじ

貧困ゆえに罪悪感もなく万引きや違法な商売に手を染めて遊び暮らす若いシングルマザーと、こまっしゃくれた幼い娘、そんな母娘をそれとなく見守る中年男性…って話は『フロリダ・プ

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ジャン=ジャックとルネとニコラ

ジャン=ジャックとルネとニコラ

楽しみにしていたアニメ映画『プチ・ニコラ』(字幕版の方)。
「パリがくれた幸せ」なんて陳腐な副題はつけないでほしかった。
映画の中でも「タイトルはシンプルに」って言ってたでしょ。

フランスの国民的児童書『プチ・ニコラ』の絵を描いたジャン=ジャック・サンペが昨年亡くなってnoteに個人的追悼を書いた時は、私はまだこの映画のことは知らなかった。
サンペはこの映画を監修し、昨年アヌシー国際アニメーショ

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生きて、一人の人を愛するということ -小さき麦の花

生きて、一人の人を愛するということ -小さき麦の花

まだ2月だけれど、ラブストーリー映画としては個人的今年度暫定ベスト。
リー・ルイジュン監督『小さき麦の花』。

というあらすじを読むとすごく地味に思えるが、実際地味。舞台は埃っぽく乾いた農村で、主人公のヨウティエとクイインはどちらも寡黙でひたすら労働の日々を送っている。ドキュメンタリーを見ているよう。
なのに、とてつもないラブストーリーなのだ。
公式サイトにも書いてあるように愛という言葉は一度も出

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怖い映画三連発 

怖い映画三連発 

還暦も過ぎると、もう残りの人生で敢えて辛いとか怖い思いはできるだけしたくない。
映画も同様。バッドエンドや観終えて暗い気分になるものは避けたい。
そのくせ、たまーに怖いもの見たさでホラーやスリラーを観ては、気持ち悪くなって後悔したりしている。4、5年前に観た「ゲット・アウト」はしばらくトラウマになり、一昨年の「ミッドサマー」も、観終わって胃がムカムカ。
しばらく怖いのは避けていたのだが…。

先月

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マフィアもジョージもベンジャミンも好きなお菓子、カンノーリ/ カンノーロ

マフィアもジョージもベンジャミンも好きなお菓子、カンノーリ/ カンノーロ

カンノーリは複数形、単数形だとカンノーロ。
リコッタチーズのクリームをたっぷり詰めたシチリア生まれのこのお菓子、大好きなのだが皮は揚げてあるので、甘さ控えめでもカロリーは高い。あぶないあぶない。

コロナ以降、録画して以前よりよく観るようになったNHK BS「世界ふれあい街歩き」、昨日はシチリアのカルタジローネの再放送だった。土地の人のおすすめNo.1ドルチェとして、カンノーリが紹介されていた。

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お知らせ : 本日BSプレミアムで『ボルサリーノ』

お知らせ : 本日BSプレミアムで『ボルサリーノ』

おはようございます。
本日NHK BSプレミアムで13:00、『ボルサリーノ』が放映されます。
アラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンドの友情を描いたお話し。ファッションも話題になりました。

この映画のベルモンドの役名、のちにドロンがマツダカペラのCMで、「かぺら、せもんぷれじ〜る」って呟いていたカペラです。

ベルモンドがマッチョ過ぎでちょっと…ですが、楽しい映画です。もしご興味のある方がい

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