徒然

 友人が大手企業から地方の公務員に転身しようとし、一次試験に合格したと聞いた。ふと思い返してみると私はあまり社会に適合できない性格だ。性格占いとか適職診断をすれば芸術家と出るようなタイプだ。

 幼いころ私は外交官になりたいと思ったこともあるが、同時に、芸術家になりたかった。外交官は英語が苦手だったことと数学ができなかったので諦めたが・・・。

 芸術家としては詩人の三好達治や立原道造の世界観が好きだが、人生としては宮沢賢治のような人になってみたかった。清貧を重んじ、音楽を愛し、愚直に学ぶ。

 しかしながら、残念なことに私は「山月記」の李徴のような人間だ。アメニモマケズという詩があるが、私は勝ち負けの前に雨から逃げる選択をとるような人間だ。どちらかといえば欲にまみれていながら欲を満たすための行動をとろうとしない。

 李徴はまだ官吏として成功し、しかしながら詩人として名を馳せるために学び旅に出て、最後には自らに飲み込まれてトラへと姿を変えたが、私は官吏モドキとなり、今の生活を手放す勇気もない。

 基本的に戦いたくない、立ち向かう気がないし立ち向かわなくてよいなら風に流され川に流され、ふらふらとしていたい。

 だが、私は欲にまみれた人間でもある。ふらふら流れていくのもまた一つの才能で、抗わずにぬるりぬるりと過ごすのもまた一つの人生、と信じて一日を生きていく。

 そう思うこの頃である。

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