じむじむ

 病院とは難儀なものだ。病気やけがをしたときにはとてもありがたい存在であり、我々の命の最前線にいる。しかし、そこで働く人々についてはあまり触れらることは少ない。医師や看護師は注目されど、である。最近は臨床放射線技師や臨床検査技師を主人公に据えたドラマなども出始めているが。内容が現実に即していないとかいろいろ言われるところもあるだろうが、こういう職業の人がいる、というのも大切だろう。

 さて、そんな私は病院におけるヒエラルキー最下位に位置すると言われる事務職だ。どなたか医療事務を主人公にしたドラマを作ってくれないだろうか。例えば、経営に無頓着な医事課長、医療職の言いなりの会計課長。赤字が膨らみ、改革をしたいと考える院長ないしは副院長に連れてこられた事務長が戦っていくみたいな。

 病院における事務職は一般企業の事務職とは少し毛色が違っていると思っている。思っている、というのは私が新卒で病院に入り外を知らないからだ。病院独特の「医事課」という部署。「総務課」も庶務とか人事、給与だけではなく、施設によっては会計や用度を担当することもある。私がいる政府系医療機関グループでは事務局は「医事課」、「総務課」、「会計課」の3課を基本に、病院の規模により「用度課」、「経営企画課」を置くとされている。
 そして一般企業では庶務的業務を担当する総務課も病院に行けば施設基準の届け出や職員福利厚生の一環として自前でワクチンや健診が可能となり奔走する。産業廃棄物もどんどん排出するし、内容も医療用となると危険なものも多い。
 私自身は医事課に6年、総務課に現時点で2か月。思うのは恐ろしいほどに個人情報の塊を取り扱うということだ。カルテをのぞくだけで患者のすべてがわかってしまう。これはなかなか怖いことだ。

 事務は地味だ。患者を救うことは少ないというより皆無。なんなら苦しい治療や痛い治療を受けたあとに金を払えと言ってくる。しかし、事務がいるから治療用の器具や薬が手に入り、職員は給与を受け取ることができる「治療」というある意味で無から金を生み出す錬金術の材料だ。2年に一回の診療報酬の改定を検討し、看護師の離職・採用、認定資格の有無をチェックし病院を底から支えている。

 ほんの少しだけ、病院に行ったら事務員という仕事を見て感じてほしい。そう思う一日だった。

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