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《創曲》第5篇 『地平』

金色こんじきなるうねり、開けゆく地平、ああ、ついに革命の太陽は昇った

金剛こんごうなる核より森羅三千しんらさんぜんは展開し、偉大なる回転が加速度を増す

その求心力は価値を糾合きゅうごうし、勇気あるものは一人また一人と集い来る

人と人は良質な関係を結び、ある究極の目的の為の連帯を開始した

整然たる隊列は理想的な造形ぞうけいを描き、その声は善なるものを増幅ぞうふくさせる交響となって世界にこだまする

生命の奔流ほんりゅう怒涛どとうとなって悪を退け、あたたかき流れが、あのてついたきわまでとどいた

極寒の大気は後退を始め、待望の季節は訪れる

ああ、生命の大地が芽吹めぶいた、太陽は刻々と南天なんてんに輝き、待ちに待った草木そうもくは勢いよくで、小さきものまでもが、躍動にふるえる

ひるがえるは鮮やかなる旗、誇りも高くかかげもちたる先達せんだつ

あれは、永遠なる青年、勝利と栄光の象徴なり

雄渾ゆうこんなる指揮、若き生命の凛々りりしさ、苦楽を分かつ横顔、鋼の如き精神、その眼光に深き慈愛と智慧と覚悟とあり

希望の前進に民衆は湧き立つ、勇壮な調べは人々を鼓舞こぶする、偉大なる上昇気流は天空を舞った

しかし、その本来の性質ゆえであろうか、大いなる上昇気流は、巨大な黒雲を呼んだ

上空に、大気と大気はぶつかりあい、凄烈せいれつなる光が雲間を走る

悪しき王が現れたのだ、彼は、民衆の内に革命の大剣たいけんが眠るのを見た
「おお、あれよ、我が宿命のつるぎよ、あれをへし折るまでは」と

撃ち抜くが如き豪雨となって、容赦ようしゃなく降りそそいだ、濁流だくりゅうの悪魔となって行く手を阻み、人々のみ込んだ、恫喝どうかついかずちとなって大地をもえぐった

なれど、一人として後ろを向くものはいなかった、それどころか、雄々おおしき行軍こうぐんは二陣、三陣と続く、その神々こうごうしきかんばせ悲愴感ひそうかんはない

不屈こそ使命と乙女は言った

そうだ、こんなものが、いつまで続いてなるものか

陣列の一人が、歌い始めた、永遠なる生命の讃歌さんか、一人また一人とその輪は広がり、その共鳴は、偉大なる民衆の大波を呼び寄せ、悪を砕き、黒雲を打ち払わんとする

攻防極まるのなかに、人々は自身の内なる大剣を明らかに見出した、そして、宿るところの光は不退の陣列を包み、一条の閃光せんこうとなって天を貫く

力の均衡きんこうくずれた、悪しき王は、その爪と牙とをもがれたのだ、傲慢ごうまんなる厚き雲は、自ら豪雨と雷とをはらんで退却していく

ひらけゆく天球、広がりゆく蒼茫そうぼう、生きとし生けるものが、あの名前を呼んだ

ああ、そしてついに、扉は開く、「万朶ばんだの華々よ、勇敢なるものを迎え入れよ!」

あふれる光が、以前にも増して清新なる世界を照らす

今、新しき時代の門は開かれたのだ

舞い散る花びらが、民衆を導く、その視線の高きところ、ぬけるが如き虚空こくうの王座に栄光の旗はひるがえった


永遠なる青年よ、パノラマの如く見た光景を、覚えているだろうか

その労苦と血と涙は、気高きレリーフとなって、人類の血統に刻まれるに違いない

そして歴史は夢寐むびにも忘れまい、偉大なる民衆の陣列の、いかに勇敢であったかを

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