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『機動戦士クロスボーン・ガンダム』の台詞が気持ちいい

最近、漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム』を買って読んだ。

原作が富野由悠季監督、漫画が長谷川祐一先生の作品。
映画『機動戦士ガンダムF91』のストーリーの後を描いた内容で、宇宙世紀の時系列で言うところのF91とVガンダムの間の話になる。

クロスボーンの漫画自体は何年か前に、BOOKOFFかどこかでさら~っと立ち読みはしたことがあったので、大体の話の流れとキャラクター、結末はふんわりとは知っていた。
だが最近になって「そういえばちゃんと読んだこと無いな」とふと気付き、調べると全6巻と案外短かったので、たまには漫画買うか~と思い購入。


めちゃくちゃ名作だった。



元は月刊少年エース連載作品だったとか。しっかりとガンダムでありつつも少年漫画であり、SF要素もロボット(MS)バトルもボーイミーツガール要素もガンダムらしい思想のぶつけ合いもある。全6巻が嘘のような密度。

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機動戦士クロスボーン・ガンダム 4巻より

よく絵柄がどうのこうの言われている気がするが、個人的には長谷川先生の絵柄は好みの部類なので全然問題なかった(古臭いのはまあそれはそう)。

そして何より、こいつら名言しか喋らんのか?と思うほどの名言ラッシュ
特に後半は名言ばかりが飛び交うとんでもない濃度の戦闘だらけ。読んでいるこっちもテンションが上がってくる。
名言ばかりを生み出すクロボンの台詞は、読んでいて本当に気持ちがいい。色んな意味で。


このnoteではそんな、個人的に「気持ちいい」と思ったクロボンの台詞5選を紹介したいと思う。


当たり前のように多少ネタバレをするので、未読の方は注意してください。



「おまえのとるべき道は2つある」
「ひとつは何も聞かずに地球へ帰り 全てを忘れ貝のように口をつぐむこと…」
「そしてもうひとつは」
「われらと共に… 真実に立ち向かうことだ!」

1巻 キンケドゥ・ナウ

記念すべき第1話、ひょんなことから知ってはいけない事実を知ってしまった主人公の少年トビア・アロナクスに対し、もう一人の主人公ともいえる宇宙海賊キンケドゥ・ナウが、トビアの進むべき2択の道を示すときの台詞。
ド有名なのでさんざん擦られてる気もするが、実際名言だからいいじゃん!

この台詞の何が気持ちいいって、最後の一言でトビアの前にも読者の前にも『希望』『可能性』『これから始まる物語』という新しく広がる世界を提示してくれたところ。
地球から遠く離れた木星圏の宇宙において、彼の言葉はトビアにとってどれほどの光明になったのだろうか。


「おれたちは空気ですら造らなけりゃならないほど貧しいんだっ!」
「それが宇宙で生きるということだっ!」

2巻 バーンズ大尉

主人公トビアたちの一応の敵である木星帝国の軍所属のオッサンMSパイロット、バーンズ大尉の台詞。
これは名言というより、私の抱いていた世界観というか価値観というか想像がぶわりと広がる感覚を覚え、そこに心地よさを見出した。言ってる内容は全然心地よくないのだが。

クロボンのストーリーの序盤は、木星圏が舞台である。
地球から遠く離れた木星圏。宇宙開拓のフロンティア。地球から遠い分苦労もあるだろうが、木星にまで人類が進出しそこで生活しているなど、ロマンのある話だと思っていた。
だけどこのバーンズ大尉のセリフは、そんな私に『木星には人類が生きていくために必要なものが何もない』という当たり前のことをばん!と目の前に付きつけてきて、宇宙の広大さを改めて認識させられた。宇宙で生きていくこと、宇宙に進出する意義などを結構真剣に考えてしまった。
それでも人は宇宙を目指すのだとは思う。魚が陸にあこがれたように、トカゲが空を目指したように。


「なぜ部下の命をすらたやすく切り捨てる男が 人類すべてのことを考えられると思う!」
「死を強いる指導者のどこに真実があるっ!」

3巻 キンケドゥ・ナウ

敵ボスが指示した、味方もろとも巻き込まんとする敵基地の爆破を阻止しようとするキンケドゥを妨害しに来た敵パイロットたちに向けての台詞。
これもクロボンの名言としてはかなり有名な気がする。私はこの台詞の後半部分が特に好きだ。
というか、前半部分と後半部分で、言いたい内容はほぼ同じ。後半は言い方を変えているだけなのだが、なんてお洒落で詩的な台詞だろうと思った。

「『し』を『し』いる『し』導者のどこに『し』んじつがある!」って 『し』で韻を踏みまくっていて、なんて心地の良いリズム感なんだろう!と感動した。個人的口に出して言いたいクロボン台詞No.1。
1つ目で紹介した台詞もそうだが、キンケドゥさんはたびたび詩的な台詞を吐くなと思う。最終回のベラに向けた台詞とか。
キンケドゥの主張も怒りももちろん熱いし格好いいしで好きなのだが、この台詞は何よりセンスの良さに感心した。


「おれは人間だ!」
「人間でたくさんだっ!」

4巻 トビア・アロナクス

これも有名な名言の一つだと思う。主人公トビアの台詞。
あなたはNT(ニュータイプ)だ、選ばれた存在だ、その力を戦いに使ってはいけない、もっと未来を見据えなければ。そう言われたトビアが、自分はそのような特別な存在ではない、ただの人間で充分だという思いを叫ぶ。
トビアは描写的にはおそらくNTなのだろうが、トビア自身は自分をそのように定義しない。あくまで”人間”として生きていく姿勢を貫く。
NTを肯定も否定もしないトビアの思想が端的に表れていて良い台詞なのだが、それはそれとしてやっぱりこの台詞もリズム感が良い。

「人間でたくさんだ」の部分の華麗な韻の踏み方。歌詞か?
今回はトビアくんの台詞はこれくらいしか紹介しないが、この台詞に限らず彼も15歳とは思えぬほどに名言をバンバン吐くので、気になる方は是非漫画の方を読んでみて欲しい。
あとNTという存在に対する捉え方は、トビアのものが個人的には一番好き。


「真の人類の未来?地球不要論!?そんなものは言葉の飾りだっ!」
「わしが真に願ってやまぬものは唯一つ!」
「紅蓮の炎に焼かれて消える 地球そのものだーーっ!」

6巻 クラックス・ドゥガチ

ラストバトル時、地球に侵攻してきた今作のラスボスである木星帝国の独裁者ドゥガチが、遂に本音をぶちまけるシーン。
こんなに潔い、そして美しい言い回しのシンプルな「地球滅べ!!!!!」ある???
今までのガンダム系のラスボスたちは、たとえ地球にコロニーや隕石を落とそうが地球に住む人々をたくさん殺そうが、地球そのものを滅ぼそうと考えていた人物はさすがにいなかったように思う。

ドゥガチは己で言うように、さんざん飾りめいた言葉でそれっぽい地球侵攻の表向きの理由を述べてきたけれど、最後の最後で語った本音が清々しいほどにドストレートな”悪”で、しかもその考えに至った理由が本当にくだらなくて、そのしょうもない人間らしさにいっそ気持ちよさを覚えた。
このドゥガチの台詞に対するトビアのアンサーもめちゃくちゃ名言なので、そちらも併せて是非本編を読んでほしい部分。


とりあえず以上5選を挙げたが、ここに挙げた以外の台詞も本当にいい台詞だらけだし、何より純粋に面白い作品なので是非オススメしたい。
これまでの宇宙世紀ガンダム(1st~逆シャア(閃ハサ?))ともわりと独立した単作になっているので、あんまりガンダムとか意識せずにSF作品としても楽しめると思う。



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まあ、全6巻で終わると思いきやこの後めちゃくちゃ続くんですけどね…!

気付いたらゴーストまで買ってた。とんだ沼だった。
『鋼鉄の7人』は文字通り枕を濡らすほど泣いた。

続編のDUSTも買おうかどうか迷い中。


(おわり)

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