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大好評『タロットの美術史』シリーズより、「巻末特別寄稿」の一部を特別公開!|2巻&3巻

大好評『タロットの美術史』シリーズより、
「巻末特別寄稿」(2巻~12巻に収載)の一部を特別公開!
超豪華ゲスト陣による本書でしか読めない
タロットにまつわるエッセイです。


2巻 女教皇・女帝

■2巻 女教皇・女帝

寄稿者:夢然堂

(古典タロット愛好家)

◆マルセイユ版の 3 枚の切札—―「錬金術師(アルケミスト)」的視点から◆

 近年、タロット史の世界ではタロットの「脱神秘化」が進んでいる。特にその起源について、占いやオカルトとは何ら関わりのないものであった、というのが共通認識となりつつあるようだ。しかし、ことマルセイユ版に関しては、こうした「神話の解体」の行き過ぎはいかがなものか――と個人的に思っている。この辺りのことは、『ユリイカ』 誌の拙稿(「『マルセイユのタロット」史概説』)でも触れた。
 本作のシリーズ名「アルケミスト双書」にふさわしくもあるので、マルセイユ版タロットと錬金術とのつながりの可能性を、もう少し「深掘り」してみたい。とはいえ紙幅に制限があるので、今回はタロットゲームにおいて特別な地位にある3枚、「愚者」「奇術師」「世界」に焦点を絞る。
 無番号の「愚者」と最高位の「世界」の札名、“LE MAT”と“LE MONDE”は、それぞれ「(形容詞“mat”から)鈍く、輝きを持たないもの」「(形容詞“monde”から)純化された、汚れのないもの」という裏読みも可能である。するとこの組合せから、「卑金属から純粋な黄金を精錬する」、という錬金術的な比喩がほの見えてくる。それはすなわち、人間の魂が「汝自身を知る」成長過程の表現、とも取れよう。「知性の輝きを失っていた者が道行きの果てに、両性具有の完全無欠な真の自己へと到達する」。20世紀の発明とされることの多い「愚者の旅」というコンセプトが、既にここにあるように思える。
 それでは、両者の間に立つ第1番「奇術師」の役割とは何であろう。…………

【この続きはぜひ本書で!】


3巻 皇帝・教皇

■3巻 皇帝・教皇

寄稿者:千田歌秋

(占いカフェ&バー燦伍のオーナー占い師)

◆絵画を読む、タロットを読む◆

 本書を手にしているあなたは、タロットに興味があるか、美術に造詣が深いか、あるいはその両方だろう。そんなあなたが、ある架空の美術館を訪れたと想像してみよう。
 数々の名画が並ぶ展示室を歩いていると、ふと絵画の登場人物が動いた気がした。もちろん物理的に絵柄が動くわけではないが、あなたが作品に没入すると、絵の中のイメージが動き出すのだ。鑑賞者の意識が参与することで、ただの物質だった絵が、役者たちの躍動する舞台となるのである。そこで展開されるドラマに、あなたは演者として、もしくは観客として参加することになる。
 絵の人物たちは何かを語り、どこかへ移動していく。彼らは特定の存在として描かれていたが、同時に誰にでもなることができた。あなたが主役として舞台に上がれば、その絵はあなたの物語になり、誰かを思い描いて投影すれば、あなたはその人が今後演じるであろう人生を観劇することになるのだ。あなたは絵を見て回り、何人もの人生をひもとき、いくつものドラマを目撃していく。さらには時々その人物に話しかけ、このまま進むと崖から転落するから気をつけてとか、今は2人きりで乾杯しているけれど、次の絵ではもう1人現れてあなたたちを祝福するはずだなどと、アドバイスやメッセージを真剣に送っていたのである。
 美術館を後にしてから、あなたはそれらの絵が全部で78枚あったことを知る。どうやらそれはタロットカードの原画展だったようだ。知らず知らずのうちに、あなたはそのタロットの絵で、さまざまな人生の物語を読み解き、その未来を予想し、おまけに助言までして、つまりはいろいろな人を占っていたのである。
 展示室を飾る絵を描いたのは、…………

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