星の味 ☆6 “次元の旅人”|徳井いつこ
友人は、子どものころ、竜を見たことがあるという。
山形の城下町。よく晴れた日の午後、川原の橋近くで芋煮会が開かれていた。8歳の友人は、大人や子どもたちからはずれ、ひとりぶらぶらと川のほうへ歩いていった。
背の高いススキやチガヤをかき分けて行くと、川辺に出る。小石を拾ったり川面を眺めたりしているうち、霧が流れはじめた。あっという間に、あたりいちめん見覚えのない真っ白な世界になっていた。
ふと見ると、水面近い霧のなかに巨きな何かが蠢いている。友人の目はぴたりと貼りついたま