あの日の祖父。そして今私にできること。
祖父は、紳士服の仕立て屋をしていた。
同居していたので、小さい頃から祖父が仕事する横でお絵描きしたり宿題したり。
仕事が好きなんだろうなと感じていた。
でも、手軽に買える量販店がたくさん出てきて、オーダースーツはどんどん下火になっていく。
若い頃はやり手で、弟子も抱え、仕事が生きがいの祖父にとって、晩年はさみしかったのではないか。
二年に一度だったか、場所を借りて『展示会』という注文会を開いていた。
その年のおすすめの生地などを紹介し、注文を取る。
わざわざチラシを印刷屋さんに頼んで、お客様に送り、来てもらう。
コストをかけて臨む、うちにとって一大イベント。
ある年「もう展示会はこれが最後だな」と言った祖父の、なんとも言えない表情。
なんと言っていいかわからなかった子どもの自分。
祖父が亡くなってもう20年経つ。
あと30年、祖父が元気に仕事をしていたならば…。
ありえないことだけど、今の私なら力になれたはず。
今なら、祖父の仕立てたスーツの魅力を、祖父の想いや人生とともに伝えられたかもしれない。
今なら、ご近所に止まらなずにウェブでお客様と出会っていく方法で、祖父の役に立てたかもしれない。
もう祖父の役には立てないけれど。
「伝わらない」「知らない」だけで損する人をなくしたい。
ふつうの人の見えてない面こそ価値、それに光をあてたい。
その魅力が伝わったら、もっともっと存分に腕をふるえるはず。
あの切なさ、やるせなさをもう感じたくない。
感じてほしくない。
だから、頑張ろうって思います。
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