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煮魚は、祖父の味。

スーパーで割引シールにつられて、子持ちガレイを買った。


煮魚を作るたび、祖父を思い出す。


大正生まれの祖父は、「男子厨房に入らず」タイプ。

そして「買ったお惣菜は好きじゃない」とこだわりがあった。

お料理苦手な祖母は毎日3食作っていて大変そうだった。
ちなみにお刺身はOKで、夜は刺身率高かった(笑)。


そんな祖父が突然、料理を始める。


祖母が72才で突然亡くなり、母(=祖父母にとっての娘)はショックで仕事に行くだけで精一杯な日が増えた。

そして、元々料理苦手。


高校1年の孫(=私)も、目玉焼きとチャーハンくらいしか作れない。

そして、「出されたら食べるけどなければ食べなくてもいい」というくらい、昔から食への優先順位が低い。


仕方なく77才の祖父は、食べたいものを作り始める。

「きょうの料理」や「キューピー3分クッキング」をチェックし、目ぼしいものはメモを取る。


それまでほとんど行ったことのないスーパーへ買い物も自分で。

メモしたコツで、煮魚をよく作るようになった。

これが、めちゃくちゃ美味しい!


それまで時々、祖母や母も作っていたはず。

でもなんというか…
毎度味が違うし、美味しかった記憶はない…(笑)。


祖父のこういうところが職人だなと思う。

紳士服の仕立て職人だった祖父。

丁稚奉公時代から、先輩の技を見て、考えて自分のモノにしてきたから、料理番組を見ながら何が美味しくなるポイントなのかメモしたんだろうな。


それに、今考えると77才にして新しい挑戦ができちゃう柔軟性がすごいなと思った。

娘も孫も当てにならないから仕方なかったとは言え、買って我慢とか、未経験の分野に手を出さない選択もできたはず。


もう聞くことはできないけど、祖父の新しい挑戦は、祖母を亡くして気が沈むところを奮い立たせる意味もあったのかもしれない。


祖父が亡くなってからもう20年。

当時なーんもできない、食に興味の薄かった私も、子どもがいるので仕方なくいろいろ覚え、今は煮魚が作れるようになった。

煮魚を作るたびに、祖父を思い出して懐かしい気持ちになる。



そして「ちょっとは成長してるよ」と心の中でつぶやいてみる。

めったにほめない祖父はなんて言うかな〜。


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