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稲妻の歴史とジブリの繋がり[原神]

実はもののけ姫とかなり類似する稲妻のかつての歴史。

神話やもののけ姫との類似性を詳しく書いたので、凄く長い考察になっています。

こういう楽しみ方もあるんだなぁという気持ちで眺めてください🙇🏻‍♀️

もののけ姫と稲妻

話が分かりやすくなるように、もののけ姫と稲妻のどのキャラが似ているのか先に書いておきます。

オロバシ--シシ神+乙事主
深海の巨鯨--犬神モロ
矇雲--サン
東山王--アシタカ
雷神--天朝(もののけ姫に出てくる天皇家のこと)

※ 注意
もののけ姫の画像は、公式様がHPにて、使用許可を出しているもののみ使っています。

ジブリを参考にした稲妻

ホヨバは稲妻の予告番組の中で、ジブリ作品(特に日本を舞台とした作品)を参考にしていると明言していました。

中でもたたら砂の自然に関する話の流れで、他の雷元素の影響が少ない地域は、ジブリアニメのような配色の植生を「残している」と言っていました。

つまり、かつての稲妻は、今の稲妻よりもジブリのような世界観(自然)に近かったみたいです。

稲妻地域の時代設定

魔神任務の稲妻地域は、刀狩があった安土桃山〜江戸時代の鎖国が終わるまでの時期を参考に描いていると思います。
戦国時代が終わり、1人の天下人が国を統治し出す時代です。

では、その前の稲妻はどうだったのか?
恐らく、オロバシとの戦いがあった時期は、平安末期〜室町時代ぐらいまでを参考にしています。

モチーフとなったと思われる作品の時代が、ちょうどそこら辺です。(特にわかりやすいのは、矇雲の物語。矇雲は椿説弓張月をモチーフとしており、椿説弓張月は平安末期が舞台。)

平安時代末期頃から、武士が台頭し始め、争いが増えるようになりました。

もののけ姫の影響?

さて、話をジブリに戻しますが、ジブリ作品の中で、日本を舞台としていて、かつ歴史的に古い時代をモデルとしている作品はなんでしょうか。

一番は「もののけ姫」だと思います。
もののけ姫は室町時代を描いており、武士のような存在が出てきていたり、たたら場が主要な舞台となっていたり、戦が描かれていたりします。

武士だらけの稲妻はもののけ姫を参考にした可能性があると思います。

もののけ姫の設定

もののけ姫の物語はかなり奥深く、なかなか語りにくい物語です。

アシタカは東北の蝦夷一族の後継者であり、サンは太古の神獣たちと生きる「もののけ姫」です。
(アシタカが蝦夷一族であるというのは、公式の解説本に書いてあります。)

アシタカは東北の蝦夷一族から追い出され、いろんな人に西へ行けと言われ、たたら場まで辿り着きます。

もののけ姫の舞台「出雲」

この「たたら場」とモチーフは明言されていませんが、出雲(現在の島根県)の中世から続くたたらの里をモデルにしていると言われています。
そこにさらに九州の要素も足しているようです。
たたら場=九州+出雲

日本史を習った方の中には、「出雲国風土記」を聞いたことがある人も、いるのではないでしょうか。
出雲国風土記は聖武天皇に奏上された、神話の要素も持ち合わせる風土記です。

たたら場と天皇家と八岐大蛇

この風土記には、出雲国と、スサノオの関係性を匂わせる記述があります。

出雲国風土記の記述から、
スサノオがヤマタノオロチ(八岐大蛇)を退治した物語は、
天皇家が出雲国の斐伊川(=オロチ)らへんの鉄産地を平定したことを意味するという説があるんです。

スサノオは八岐大蛇の中から、草薙の剣を見つけるんですが、これは川の流域で鉄が取れた話が元となっていると言われています。

(原神では、オロバシが斬られた隙間は現在川となっています。)

この草薙の剣は三種の神器として、天皇家の皇位継承の証に利用されていくこととなります。

この草薙の剣は、原神では雷電将軍のモチーフ武器、草薙の稲光として登場しますね。

ちなみに、稲妻でオロバシが死んだ場所の近くにある名椎の浜の名椎(ナヅチ)は、
八岐大蛇伝説に出てくるクシナダヒメの親であるアシナヅチ・テナヅチのことで、彼らは出雲国の肥河の上流に住んでいたとされています。
名椎の浜周辺も出雲国モチーフだとわかります。

鉄産地を狙う多くの勢力

もののけ姫は、たたら場が主な舞台となっています。

鉄は様々な道具にも使えますし、何より当時の武器を作るには重要なものでした。世界史的にも、鉄を制するものは、広大な支配域を制すると言われています。

その鉄産地(周辺の山を含む)を狙って、武士や天朝(天皇家)の思惑が激しく揺れ動くストーリーになっています。

たたら場の主・エボシは、社会における弱者的な立場の人をたたら場に囲っていました。エボシはエボシの守りたいもののために、たたら場周辺の森を切り開き、天朝や周囲の武士たちと渡り歩く必要性があったんです。

もののけ姫には赤い飛び跳ねるおじいさん(ジコ坊)が登場するんですが、彼が朝廷側の人間です。
映画で天朝(恐らく天皇家のこと)の命令で動いていると言っていました。

こうした山や森(厳密には鉄)を狙う勢力を疎ましく思っているのが、
もののけ姫や、犬神モロや、乙事主です。

原神では魔神にあたります。

こうした、天皇家、たたら場(八岐大蛇伝説に繋がる地)、太古の神獣たちの三つ巴になった世界観は、
原神にも存在します。

オロバシをはじめとする、
海祇島(淵下宮)の太古の魔神の勢力
vs
雷電将軍の勢力
の戦いが稲妻の遥か昔の歴史に残されているんです。

鯨の歌で、太古の鯨の悲しみを聞き、雷神に戦いを挑むと決めた矇雲は、恐らくサン(もののけ姫)の立ち位置になってくると思います。

もののけ姫の話に、琉球平定の物語である椿説弓張月の要素を加え、

海祇島(琉球)vs天皇家(将軍家でもある)の図式に変えているのが、原神だとも考えられます。

そして、矇雲と中の良かった東山王(別名・東王や惡王丸)。
原神内では東王や惡王の、呼び名の由来は明記されておらず、東山はヤシオリ島のことでは?と言う方が多いですが、真偽不明です。

※ヤシオリとは、八岐大蛇を倒す際に使われた酒(八塩折之酒)のこと。

惡王は鳴神からみた東山王の呼び名だったようです。

この惡王丸という名前は、日本史的に意味がある名前です。
惡は悪の旧字体であり、惡王とは日本史的には「惡路王」「惡来王」と呼ばれた、東北の蝦夷のトップをさすことが多いです。

天皇家からみると倒すべき敵(惡王)なんです。
歴史書ぐらいしか惡の字を使ってないので、恐らく吾妻鏡(鎌倉時代に成立した歴史書)あたりの原本から、惡王の字を原神に持ってきたんじゃないかな…と思います。

ちなみに惡路王は度々、高丸という東北の逆賊に置き換えられることもあるので、
惡王丸は東北(蝦夷、陸奥国)の逆賊という意味を含むと考えることもできます。

何が言いたいかというと、東山王が蝦夷のトップをモチーフとする人物であるならば、
蝦夷の王子という設定のアシタカが、下地として用いられている可能性があります。
(アシタカ"ヒコ"のヒコは王子を意味します)

原神ともののけ姫は、獣に味方する少女と、蝦夷由来の呼び名を持つ少年という類似性を、持っているわけです。

戦いでオロバシ(八岐大蛇、シシ神や乙事主)は倒されてしまいました。これは日本の神話やもののけ姫そのままの展開ですね。

オロバシはもののけ姫の、土地神にあたるシシ神や乙事主、そしてたたら場(その地域そのもの)を合わせた存在だと考えることもできます。

※ちなみに、乙事主は九州の猪の神様という裏設定があります。

鯨や蛇の味方をした矇雲のその後は諸説あり(聖遺物や武器によって異なる)、
矇雲に恋心を抱いていたっぽい東山王も戦いに倒れます。

祟り神がキーワード

もののけ姫において、人間に強い憎しみを抱くと、祟り神となってしまいます。

祟り神と同化しそうなサンを助け出そうとするアシタカ

物語の序盤でも祟り神が出てきましたが、ヒイ様が塚を立てるので鎮まってくださいとお願いしました。

「何処よりいまし荒ぶる神とは存ぜぬも、かしこみかしこみ申す。この地に"塚"を築きあなたの御魂をお祭りします。怨みを忘れ静まり給え。」

塚は祟り神を鎮める役目を担っていたんですね。

原神もたたら砂の土地が神無「塚」と呼ばれています。

もののけ姫では、たたら場や太古の神を狙って争いがおきていますが、

原神ではオロバシの死後、祟り神(オロバシの残滓)を核としてたたら砂が成り立ちました。

もののけ姫はシシ神が再び蘇ることを匂わせたラストで、爽やかな感じで終わってますが、稲妻のストーリーはバッドエンドに近いです。

稲妻のかつての歴史はもののけ姫を参考にしているのではないか?というのは、あくまでも私の勝手な考察(解釈)です。

ですが、それを抜きにしても、もののけ姫と原神はとても好きな作品なので、少しでもその類似性を面白いと思っていただけたら幸いです。

平成狸合戦ぽんぽこ

原神・稲妻の鎮守の森とジブリの話

鎮守の森は、ジブリ映画『となりのトトロ』と『平成狸合戦ぽんぽこ』を意識した森のように見えます。

★モンドやフォンテーヌとの美術的な違い
稲妻の予告番組でかつて、製作陣からこんな発言がありました。

「日本の小説家である谷崎潤一郎さんの『物と物のあいだにできる影にこそ、美がある。』という言葉の通りです。

想像力で美しさを引き立てる手法は、日本と西洋の空間デザインの最も異なる部分です。」

これは谷崎潤一郎の陰翳礼讃の言葉を引用しているのだと思いますが、
西洋が部屋の隅々まで明るくすることに美しさを感じるとすれば、日本は光の当たらない影にこそ美を見出すという独特の美意識を持っています。

稲妻地域に影が多く、フォンテーヌやモンドにほとんど影がない(非常に明るい)のはそう言った理由があるからです。

★ジブリを意識した地形
原神製作陣はかなりジブリを意識して稲妻マップを作っています。

「『千と千尋の神隠し』のように長いトンネルを通って、異世界にたどり着く。
『となりのトトロ』みたいに、家の庭にある草やぶから、トトロの住処に落ちるように、秘密の通路を通ってとある場所にたどり着く。」

映像でも映し出されてましたが、紺田村の井戸は特にその代表例だと思います。

井戸を降りていくと、光る寒色系の植物が見られます。

井戸の中は非常に暗い「影」であり、そこに小さな光が灯されるという演出は、かなり日本の美を意識した演出だと思います。

★ジブリを意識した稲妻の植生
『稲妻の植生は元素の色に合わせ、雷元素の影響を受けている部分を紫色で表現すると、シナリオチームと相談して決めました。』
『雷元素の影響を受けてない普通の場所は
、ジブリアニメのような古典的な配色の植生を残しています。』

つまり、雷神が国を統治するようになり、雷元素の影響を受けた植生が増えたが、元々の稲妻はジブリを参考にした古典的な配色の植生が多かったということだと思います。

その1つの例が、〈鎮守の森〉だと思います。

★鎮守の森
原神の鎮守の森は、あまり人が通っていなさそうな森で、全体的に暗く、青く光り輝く植物が生えています。

鎮守の森は、ジブリ作品によく出てくるのですが、
日本の鎮守の森を描いた作品の最たる例は、もののけ姫ととなりのトトロです。
実はこの2作は裏設定で(といっても宮崎駿監督が後付けした設定なんですが)繋がっています。

もののけ姫は、シシ神や犬神、猪の神のように、動物の神が鎮守の森を守っていました。

鎮守の森とは、土地神が守る森のことなんです。

もののけ姫ではしし神が倒され、森がかなりダメージを受けていましたが、1匹のこだまが最後に登場して森の復活を匂わせる形となっていました。

このこだまこそ、後のトトロであるという裏設定が、宮崎駿監督によって後に追加されます。(完全に後付なので、トトロの年齢と、もものけ姫の時代背景が一致していないんですけどね…)

もののけ姫には、大きな動物ほど格が高く知能が高い神であるという設定があり、小さくなるほど知能が退化する(乙事主以外の猪や猿がその例)という描写があります。

トトロはかなり大きく、そして見た目も動物のようになっているので、あの森の土地神と考えることが出来ます。

稲妻の鎮守の森は、もののけ姫やトトロの要素と、『平成狸合戦ぽんぽこ』の要素を掛け合わせていると思います。

★平成狸合戦ぽんぽこをモチーフにした(?)
稲妻の鎮守の森は原生林を思わせる見た目で、薄暗く、狸の土地神によって守られています。

この狸の神様、ジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』を思わせる設定がいくつかあります。

狸神の名前は〈隠神保生司正五百蔵〉。

狐を祀る神社が多い中で、四国は狸の神様を沢山祀っており、平成狸合戦ぽんぽこも四国の〈隠神刑部〉という狸の神様を登場させています。

隠神というと大体、隠神刑部を表すんです。

『影向山騒動狸合戦』というエピソードが原神にはありますが、これは隠神刑部の松山騒動と、平成狸合戦をかけあわせた名前だと思います。

松山騒動では、隠神刑部が洞窟に仲間と共に封印される設定があります。
これが五百蔵の物語に利用されているようです(彼も鎮め物にされてますので…)

ちなみに五百蔵という名前は、四国の五百蔵氏からとってきているようです。

※今回の考察はXにて先行公開していたものです。普段モチーフ考察はXにて投稿していますが、これからnoteにもまとめていこうと思います。(HanaのXアカウント)

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