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セノのモチーフ考察[原神]

今回はセノの考察を行いました。

古代エジプトをモチーフとして、「死者の書」に書かれた、死者の旅の守護者を意味するキャラクターのように思います。

名前

Cynoという名前は、古代ギリシャ語由来で犬や犬頭の人を意味します。

エジプトはギリシャの影響を受けた名前が多く、例えばセノのモチーフとなっていると思われるアヌビスも、ギリシャ語由来の呼び名です。

というより、私たちがギリシャ風にエジプトの神の名前を呼んでいると言った方が正しいかもしれません。

天賦

秘儀・律淵渡魂

「この審判、お前には受け入れる権利も拒否する権利もない。お前も俺も…すでに審判の渦中にあるからだ。」

律淵は恐らく冥界のことで、そこを渡る魂とは、冥界の神オシリスの裁判を受けに行く死者の魂のことだと思われます。

聖儀・狼駆憑走

「古国から受け継がれてきた秘儀は、大マハマトラにとって最後の審判を意味している。過去も現在も、嵐もうわばみも、律令の威厳を揺るがすことはできない。」

落羽の裁決
一定間隔で末路真眼状態に入る。

ホルスの目のようなもの

上の3つの天賦は、アヌビスが死者の書にて行う、最後の審判を意味すると思います。
死者の罪を秤(はかり)で判断します。
詳しくは命の星座の解説に書きました。

九弓の権能
九弓とは、古代エジプトの敵を表す言葉でした。
しかし、大元は古代エジプトの九柱を表す言葉でもあったようです。

衣装

セノの服装は、世の中に出回っているアヌビスのイメージそのまま連れてきた感じのものです。
ただ、ファラオ(古代エジプトの王)のイメージも足していると思います。

アヌビスの仮面(帽子)は、ストゥムと呼ばれる神官がミイラを作る時に被っていました。
アヌビスが死者の霊を守護する存在であり、ミイラ作りの神でもあったからです。
人々は魂の入れ物として、ミイラを残すことを重視していました。

セノが元素爆発でアヌビスの仮面を被り、包帯を巻き始めるのは、これから相手をミイラにするという暗示かもしれません。
また、包帯によって力を得ているという可能性もあります。

彼はヘルマヌビスの力を憑依していることがゲーム内で明かされており、これはヘルマニビス(ヘルメス+アヌビス)というアヌビスを意味する言葉を原神側が少し変えたのだと思います。

攻撃すると包帯が敵の周囲を囲むように広がります。

エジプトに限らず、歴史的に腰布をロインクロスと呼びます。
セノのように飾り帯でしめ、前垂れがついている腰布は、身分が高い人がしている服装でした。特にファラオ(エジプトの王)がよくしているこの様な腰布をパーニュと呼びます。
セノの腰布はまさにパーニュだと思います。

古代エジプトにおいて、あまり上半身を飾り立てる風習がありませんでしたが、首元の襟飾り(首飾りではなく襟飾りという人が多い)はエジプトの王族に多い装飾品でした。アヌビスもしていることがあります。

アヌビスの要素もありつつ、ファラオをモチーフとした服装。

命の星座

金狼座という名前は、アヌビスの頭がアフリカンゴールデンウルフだと言われていることから来ていると思われます。

立儀•俯瞰晦冥
俯瞰晦冥とは、昼夜を問わず、見張ることです。アヌビスの仕事は、墓守であり、死者の守護者です。そのことを意味していると考えられます。

キングデシェレトの霊廟には、エジプトのファラオの墓を守護するアヌビス像と酷似したものが置かれています。アヌビス像は、一段高いところから見張る役目を担っていました。

令儀・拝謁返霊
古代エジプトにおいて、死後の人間は、肉体と魂に分かれると考えられています。拝謁して返霊されるとは、冥界の神オシリスに拝謁して最後の審判を受けた後、魂が戻ってくることを意味すると考えられます。

律儀・行度誓戒
行度誓戒とは、旅(行度)におけるルール(誓戒)という意味だと思われます。アヌビスの守護の元、古代エジプトの死者の霊は、冥界の旅に出る必要がありました。その過程を描いたのが、「死者の書」と呼ばれる文書です。

巡儀•貫徹禁網
巡儀(巡る儀式)と呼ばれるように、アヌビスは死者の旅の守護者兼案内人でした。禁網とは、ほかの人々に触れられないように守ることを意味し、それを貫徹する…つまり、死者がしっかりと冥界に辿り着けるように守護するという意味だと思います。
こうした役目はアヌビスやホルスが担っていました。

幽儀・往昔星芒
幽儀とは、死者の魂に関する儀式という意味だと思われます。往昔星芒に関しては、英語版と中国語版を見たところ、星が亡くなるという意味のようです。テイワットにおいて、星=人の運命を意味しますので、亡くなった人の幽儀が始まるという意味でしょうか。ここだけ少し解釈が不安です。

羽儀•裁落均衡
これが一番分かりやすいと思います。
アヌビスは冥界の神オシリスの前まで死者の魂を連れてきます。
そして、アヌビスは、連れてきた死者の心臓(魂)と、正義と真実の女神マァトの羽根の重さを秤にかけます。

古代エジプトにはしてはいけない禁忌(律令)があります。死者は裁判にて一つひとつ「○○はしていない」と述べて、禁忌を犯していない証明をする必要がありました。嘘をつくと、秤が心臓の方に傾きます。

アヌビスが秤にかけている。

心臓が羽より重ければ罪深いですが、均衡が保たれれば楽園「アアル」で再生することが出来ます。

アアルは、原神において、アアル村として登場します。

アアル村

セノの命の星座は、古代エジプトの「死者の書」に描かれた、死者が最後の審判を受けるまでの過程をモチーフとしているようです。

それと同時に、原神において、
キングデシェレトの霊廟(墓)から始まり、
秘儀聖殿で一連の儀式を行った後、
アアル村(楽園)に至るという過程を表したものだとも思います。

死者の書を意識した地理的配置

秘儀聖殿は英語版でKhemenu Templeと記載されています。

Khemenu(8つの町)とは、オグドアドというエジプト神話において、ヘルモポリス(古代エジプトの都市)で信仰されていた8神を表す言葉です。

つまり、Khemenu=ヘルモポリスのことです。
ヘルモポリスとは、ポリスとついている通り、ギリシャからみたその土地の名前で、「ヘルメスの都市」を意味します。

原神でも秘儀聖殿とされていますが、実際のヘルモポリスも儀式がよく行われていたと言われています。

また、ヘルモポリスの守護神であったトトは、アヌビスと共に最後の審判を行った神だともされています。

秘儀聖殿を抜けると、捨身の抗があり、そこを抜けてようやくアアル(楽園)へ辿り着きます。
この捨身の抗は英語版ではAbdju Pitと書かれています。

このAbdjuとは、冥界の神オシリスが復活する地として有名なアビドス(エジプトのオシリス信仰の総本山)のことです。

つまり、先述した通りセノの命の星座は、
キングデシェレトの霊廟の守護から始まり、
秘儀の聖殿で様々な秘儀を行ったあと、
オシリスのいる捨身の抗へ辿り着き、
そこで最後の審判を経てアアル(楽園)に行く…
という過程となっているとも考えられます。

船の先が垂直、もしくは反り返っているのが特徴

秘儀聖殿には、エジプト神話に出てくる太陽神ラーの船らしきものもあります。ラーの船は現世と冥界を運行していました。

死者の書にも、死者が太陽の船に乗せてもらう描写がありますし、オシリスをアビドス(冥界)へ運ぶ船だとも言われています。
ちょうど秘儀聖殿を抜けると、アビドス(捨身の抗)があります。

遊戯王

これはみなさんお気づきだと思いますが、セノは遊戯王の影響を受けている可能性があります。
世界的に人気のカードゲームが好きで、エジプト神話モチーフで、「召喚王」と言ってしまっていますし…。

セノのオリジナル料理は「決闘の魂」。
遊戯王のデュエリストのことも決闘者と呼ぶそうです。
この料理の見た目、遊戯王の千年パズルにしか見えない…。
しかも目の模様は遊戯王の千年パズルの模様とほぼ一緒です。

ホルスの目

セノの被り物の額のマークはほぼ遊戯王のマークと同じですが、恐らくどちらも古代エジプトのホルスの目の影響を受けてデザインされています。

額の目は遊戯王に近いですが、セノの魔法陣はほぼホルスの目と同一となっています。

左はセノ、右はアルハイゼン

同様にホルスの目モチーフらしきデザインはアルハイゼンにも見られますが、
セノが古代エジプトをメインモチーフにしているのに対し、
アルハイゼンはアッバース朝(エジプト〜アラブ地域)の文化をメインモチーフとしている節があります。🔗アルハイゼンのモチーフ考察

ホルスの目は月(左目)と太陽(右目)であり、セノは特に太陽神ラーの目とも言われる右目がモチーフとなっています。

墓場に太陽神ラーを表すホルスの右目が描かれていることがあるのは、死者が冥界の神オシリスに会いに行けるように見守る(見張る)という役目がホルスにあるからです。

冥界は暗闇ですが、太陽を宿す右目に見守られれば、暗闇の中も前に進むことが出来る…つまりホルスの目は松明のような役割を果たしていたため、アヌビスと共に墓によく描かれるようです。

秘儀聖殿にて、死者の旅を見守るホルスらしき像。
アヌビスとは異なる鳥のような口。

死者だけではなく、旅人の道のりも見守ってくれています。

死者の魂の旅路を守る存在をモチーフとしたセノ。

当初、セノはモチーフがはっきりしている分、そんなに書くことが無さそうだと思っていましたが、そんなことありませんでした。

考察を進めるうちに、スメールの地理的な話と繋がりが見えて来て、考察していて楽しかったです。

これからもセノが多くの方に愛されますように。

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