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床面だけじゃない!Whizで室内空間まで綺麗に!

以前の記事で,Whizの清掃により床面だけでなく空間清浄化についても可能性があることを紹介していました.今回はそれに関する情報をおさらいしつつ,Whizに「空間まで綺麗にする力があるのか?」「それは本当なのか?」を解説したいと思います.

今までの情報おさらいとある“仮説”

床面にある一般的なゴミや隠れダストは,「チリ,花粉,カビ,細菌等」と考えられますので,ルミテスター(PD30,キッコーマンバイオケミファ㈱)でのATPふき取り検査法(A3法)により床面の「汚さ」の同定が可能です.

参考:「汚さ」「綺麗さ」をその場で見える化

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床面の汚れは,ずっとそこからへばりついて動かないわけではありません.例えば誰かが歩くことによりダストの一部が舞い上げられ空中に散らされます.

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ダストが繰り返し舞い上げられ・散らされることで,床以外の室内空間にもカビなどの浮遊菌が1m3当たり数万個存在する可能性があります.

参考:床面の「汚さ」の実態②

事実過去に行った微生物センサ(BM-300C,シャープ㈱)を用いた室内浮遊菌の実態調査の結果では,住宅・事務所・作業場等の室内空間には平均して20,000~60,000個/㎥(カビ胞子数換算)程の浮遊菌が存在することが分かりました.

参考:空間の「汚れ」の実態

歩行時だけではなく,人が掃除機を用いて清掃を行う際も多少の粉塵が舞い上げられます.しかし,ロボットならではの静かな移動を伴う“Whiz”で清掃を行った場合は,ほとんどダストが舞い上げられていません.

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さらに,Whizの排気口には浮遊物の高い除去率(代表的なアオカビの除去率は97.9%,ウイルスでさえも95%以上)を誇るHEPAフィルターが搭載されています.

参考:Whizは空間も清浄にできるのか?

ここで「清掃時にダストを舞い上げない → 床面を効率的に清掃 → 排気口からはクリーンな空気を排出」というWhizで清掃を続けることは,つまりは“床面だけでなく清掃する空間内まで綺麗にできるのでは?”という考えが浮かびます.

その仮説を検証するために,実験をしてみました.

Whizの清掃効果検証実験

その仮説を裏付けるためには,Whizによる清掃を続けるにつれ,

床面ATP測定値が減少
室内の浮遊菌量が減少

となることが実証できれば良いのです.

今回の実験は2019年12月~2020年3月に,以前「床面の「汚さ」の実態①」でダスト量と床面ATP測定値の関係を明らかにする際に測定を実施した4施設の内,3施設4地点(A施設・Cビル・D施設)で行ないました.

表-1 測定実施箇所一覧

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実験の手順は以下になります.

①各地点の任意の場所に微生物センサを設置し,1時間毎の浮遊菌量の連続データを取得.
 → 24時間の平均を,その日の室内浮遊菌量[n/㎥]とする.
②ルミテスターにて清掃前の床面ATP測定値を数ヶ所計測.
③Whizを通常の清掃と同様の時間帯・回数にて稼働.
④清掃後,清掃前と同じ箇所の床面ATP測定値をルミテスターにて計測.
 → 清掃前・清掃後の測定値の平均を,その日1日の床面ATP測定値[RLU]とする.

比較のため同様の実験を,③を各地点の通常清掃時(人が掃除機を使用することによる清掃)でも行いました.

Whizによる浮遊菌量の減少効果を確認

勘のいい方はお気づきになっていたかもしれません.A施設…実は茨城県つくば市にある弊社・熊谷組の技術研究所になります.ここでは,A施設(1)もとい弊所ショールームでの実験結果を中心にお話ししていきます.

Whizによる清掃

まずはWhizによる清掃の結果です.

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図-1 A施設(1)におけるWhiz清掃時での測定結果

図-1中のピンクの棒グラフは,床面ATP測定値(任意の3ヶ所の平均値)です.清掃前の床面ATP測定値は1,500RLU程度と,この時点でも極めて綺麗(衛生的)な状態(*1)でしたが,一度Whizで清掃をしてみると700RLUまで数値が下がりました(1day).ショールームは展示室としての役割がメインですが,ごく少人数用の打合せスペースも併設しています.清掃期間中の展示閲覧利用はありませんでしたが,弊所内の人間による打合せや展示物の調整,昼食時の休憩等少人数ではあるものの人の出入りがありました.そのため人の動きに付随して多少の増減はあるものの,連日清掃を続けた結果,平均して約500RLU程度の床面ATP測定値となり,1,000RLU程度の減少傾向となったことが確認できました.

室内浮遊菌量(青緑色の折れ線グラフ)に関しても,Whizによる清掃開始前は約18,000個/㎥(こちらも比較的綺麗な室内空間(*2))でしたが,清掃を続けることにより徐々に減少し約14,000個/㎥の浮遊菌量の低下につながりました.

通常清掃

続いて,通常の“人が掃除機を使用することによる清掃”のモニタリング結果です.

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図-2 A施設(1)における通常清掃時の測定結果

Whizによる実験の後に通常清掃時の実験を行っていますので,床面ATP測定値・室内浮遊菌量ともに初期の値がかなり低くなっているのはご容赦ください.

床面ATP測定値(ピンクの棒グラフ)は全体を通してみると微増していますが,大きな変化はありません.しかし,室内浮遊菌量(青緑色の折れ線グラフ)は初期値の4,000個/㎥程度というとても綺麗な状態は保てず,休日を挟んだ通常清掃開始8日目には20,000個/㎥以下となり,図-1のWhizによる清掃開始前と同程度の浮遊菌量になっています(それでも見た目や数値的に “綺麗な空間”に変わりはありませんが…).

とても綺麗な空間(1day)に多少なりとも人の出入りがあったことで,結果的に通常清掃では取り切れなかった隠れダストや靴底についていたチリなどのゴミが舞い上がり室内浮遊菌量に影響してしまったと考えられます.

この図-2では通常清掃により室内浮遊菌量が増えてしまっているように感じますが,あくまでも「通常清掃では床面はある程度綺麗にできても,室内空間までをも綺麗にすることは難しい」ということです.

Cビル,D施設での清掃結果

解説が長くなってくると読むのも疲れてしまいますね….

CビルとD施設の3測点については表にまとめてみました.ちなみに実験の手順は同様ですが,こちらは通常清掃での測定を数日行った後(Whiz稼働前とします),間に休日を挟みつつ計5日間Whizを稼働させた結果になります.

表-2 Whizによる清掃後の測定値の変化

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Whizを使用した清掃の前後で,床面ATP測定値は最大で4,000RLUの低下がありました.(3)については床面ATP測定値に前後の変化はありませんが,元々の5,000RLUも綺麗な状態ですので問題なしとします.

注目すべきは室内浮遊菌量です.3地点とも大きく減少し,稼働後はいずれも6,000個/㎥以下という“とてもきれい”な空間となりました.

以上3施設4地点という母数としては少ない実験数ですが,通常の清掃と比べてWhizでの清掃によって,

床面ATP測定値が減少
室内浮遊菌量が減少

を確認することができました.

従来の人による清掃では取り切れない“隠れダスト”を含めた床面のゴミを,Whizにより効率的に清掃・除去することで,床面の綺麗さをむらなく高めるだけでなく,清掃している室内空間の清浄度の向上にも効果的であると言えます.

(*1) 極めて綺麗(衛生的)な状態:
熊谷組が独自に定めた「ATP測定値と清浄度判定(ルミテスター管理規準値)」より.平均は,清掃前で6,200RLU(最大18,850 最小710)であった.
2,000RLU以下は「きわめてきれい(衛生的)」と定義されている.
首都圏を中心とした116ヶ所の施設(事務所,ホテル等)のタイルカーペット床のATP測定値の
平均は,清掃前で6,200RLU(最大18,850 最小710)であった.

(*2) 綺麗な室内空間:
熊谷組が独自に定めた「微生物センサBM-300Cによる室内浮遊菌量測定値の目安」より.
10,000~40,000個/㎥は室内空間の状態が「きれい」と定義されている.
10,000個/㎥未満は「とてもきれい」と定義される.

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著者プロフィール

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谷口 惠梨
株式会社熊谷組 技術本部 技術研究所 循環工学研究室
株式会社熊谷組Webサイト:https://www.kumagaigumi.co.jp/

前職の地場コンでは河川・山岳土木の現場にて施工管理として従事.
2018.4~転職・現職へ.バイオプロセスによるCO2有効利用(CCU)技術開発や微生物機能を利用した地盤改良技術開発など循環型持続的社会実現のための基盤技術についての研究開発に携わっている.他にも室内浮遊菌評価手法に関する研究開発に取組んでおり,その一環としてWhizの清掃機能に関する評価について,技術的・学術的に協力している.