見出し画像

ホークスはいたずら好きな会社【TAKAism vol1.井上勲】

ペナントレースを戦うチームの傍らで様々なファンサービスを生み出しているのは、ホークスで働く社員ひとりひとりです。
そんな私たち、ホークスを形作る中の人たちが考えていることや想いを発信していくため、

ホークス(鷹)社員に脈々と受け継がれる想い→TAKAism

と題して、社員のインタビュー企画をスタートします。
第1回は福岡ソフトバンクホークスが誕生した2005年から広報として球団の歴史を一緒に歩んできた広報室長の井上勲。
ホークスはどこへ向かっているのか?これまでの経緯と未来の展望について聞きました。

【プロフィール】井上勲(いのうえ・いさお)
2005年福岡ソフトバンクホークス入社。事業広報を担当し、2007年からはチーム広報も兼務。ホークス情報を発信する仕事に従事しながらソフトバンクホークスの歴史を共に歩んできている。

―入社当時、ソフトバンクホークス誕生当時の会社の雰囲気は?

ソフトバンクホークスになった時に、ソフトバンクの人が東京からやってきたり、私も含めて中途の人がたくさん入ってきました。すると、会社の中に「今までの野球はこんなもので、これからも続いていく」と思っている人がほとんどいなくなっていた。新しく入ってきたソフトバンクの血と元々いた社員との化学反応で「野球観戦をもっと面白いものにしよう!」という想いに満ちていて、当時の合言葉は「機会損失は罪」…(笑)。みんな「自分たちが野球界を変えるんだ!」という気持ちでとにかく新しいことをバンバンやっていたので、気付いたら時間がたって会社に泊まっている人も何人もいるし…というのが2005、6年くらいのホークスだったかなと思います。

―固定観念がない人が集まり、新しいことを何でもやろうとする文化ができていたと。

参入してすぐなので、とりあえずやってみようという流れと相まって、「ソフトバンクが球団を買ったからには新しいことをしないとだめだ」という強迫感もありました。色々なことにチャレンジしていくことが褒められて、しないことは怒られる。機会損失という言葉に騙されて無謀な投資を繰り返す…(笑)。その積み重ねで今のホークスができあがっています。

―チャレンジを続ける当時の会社の空気感を具体的に言葉にすると?

会社全体の熱量がずっと変わらない。去年こうだったから同じことをしようというのは一切なく、今までやらなかったことを全部やり、次の年はさらにプラスしていろんなことをやる。自分たちへの縛りとして、『100%エンタドーム宣言』と言って、全試合イベントをやるぞという振り切ったことを始めていた時期でした。野球場に来ようと思った時から帰った後まで楽しいと思える1日がかりのエンターテインメントを作ろうと頑張っていたので、チームが低迷した時期もあったけど、社員には球場を楽しいところ、熱いところにしようという想いがあふれていた。もし2009年に日本一になっていたら、すごいことになったんだろうなと思います。

―2009年というのは、何があった?

2008年に王貞治監督が退任してみんなの士気が下がりそうな時に「チームが大変な時だからこそ、応援してくれるファンのためにエンターテインメントを追求しよう!」とみんなが大きく舵を切った年。そこでチームもシンクロしてバンっと優勝してくれたら、すごく盛り上がったんじゃないかな。

―2009年がエンタメ強化への転換期になっている?

2005、6、7年は試行錯誤の連続で色々なことを試しながら、伸びしろがありそうなところとなさそうなところを見分けをしていた。そうするうちに「できないことなんてないんじゃないの?」という意識になってきたのが2008、9年くらい。そこからやっと「僕らは球場でやっている野球のおまけではないんだ」という想いがみんなに根付いてきた。チームはチームで試合の勝ち負けはコントロールできないんだから、自分たちができるところをしっかりエンターテインメントにしようぜ、と。みんなの思惑がひとつにまとまったのが、その時期くらいじゃないかなと思います。

―エンタメを強化している流れの中でチーム成績も上昇。当時球団広報として働いていてチームの雰囲気はどう感じていた?

チームとしての大きな転換期は2010年のリーグ優勝だったと思うのね。赤いユニフォームの鷹の祭典をやった年で、西武に大差を付けられてしまい「目の前で胴上げを見たくない」という想いでシーズン終盤を迎えていた。余談だけど、今だにビジター球団はレギュラーシーズンにこのドームで胴上げをしたことがない。目の前で1回も他球団の胴上げを見せられてないんです。そういう想いもあって、その年の鷹の祭典はすごく強かったので「みんな鷹の祭典ユニフォームを着てきてくれ!」、「持っていない人も赤いものを着てきてくれ!その人には赤いフラッグを差し上げます!」とファンに呼び掛けて、終盤戦の球場を赤で埋め尽くした。そこからは偶然にも西武に3タテして、最終的に-0.5ゲーム差で優勝することができた。

画像2

鷹の祭典2010 赤に染まるヤフードーム(当時)

―球場の一体感とファンの声援でホークスを勝利に導く結果になった。

それまではチーム成績もうまくいかない中で「野球は野球、グラウンドとスタンドは別だ」という職人気質のスタンスだったのが、ファンの応援を力に変えてプレーする考え方の若い選手が増えてきて、渾然一体となったエンターテインメント空間を選手が楽しんでくれるようになった。ファンの応援が力になっていると実感した選手たちが「ファンが力をくれているんだ!」ということをヒーローインタビューでも外に向かって言うようになって。そういう選手が増えてきたのが、2010年以降なのかなと思います。徐々に選手たちの中に会社が取り組むエンターテインメントを受け入れる素地ができてきたように感じました。

―新しいエンタメに取り組む姿勢は、近年野球の枠にも留まらなくなった。拡大はどのように進んだ?

昔の『100%エンタ・ドーム宣言』の時に中にはしんどいイベントがあって、花火を倍打つだけの『花火2倍デー』とか、苦し紛れに『ジェット風船2倍デー』と言って入場時にジェット風船を2本ずつ配るだけみたいなこともあったり…(笑)。そういう試行錯誤の繰り返しの中でファンの雰囲気も「野球を見に行ったらこんなことがあって楽しかったよ!」ではなく「こんな楽しいことがあるから野球に行こうよ!」という意識に変わってきた。2010年に優勝した時くらいからメディアに大きく取り上げられることも増えてきて、ファンの中でも認知が上がって良い流れができる。ドームが『先進的なエンターテインメント空間』として取り上げられることも増えてくると、中の人も「じゃあ、もっと新しいものを作らないといけない!」という気になって、優勝をきっかけにさらに我々もエンタメ化を進めようという想いが強くなっていきました。

―野球の枠を飛び出す発想はどこからきた?

野球場を満杯にするのをほぼ達成したところで、「もっとたくさんの人に楽しんでもらうにはどうしよう?」と検討が始まった。全国から来る人や、インバウンド客も多くなってきて、「観光名所として福岡をもっと元気にしたい、最高のエンターテインメントにしたい」という気持ちがみんなの中に芽生えてきた。みんなが期待してくれるので、つい野球以外のことにも手を出したくなったのかな(笑)。ドームは楽しいところだと思ってもらえていたのが、大きかったかなと思います。

―長年働いている中でも、さすがにこれは…と思った企画はある?

それはやっぱりE・ZO(笑)。これまでもドームという資産を活用したくて『九州焼酎フェア』のようにドームで野球と関係がない自社イベントもやっていた。ところが2018年には『サマースプラッシュ』みたいな「そもそも自分たちの土地でもないところに新しいエンターテインメントを作っていこう」というものも出てきた。いろいろな可能性を模索しながら、ついにビルを丸々建ててしまった…! ※E・ZO=BOSS E・ZO FUKUOKA

2018年に初めてドームを飛び出して開催したホークスサマースプラッシュ

―ホークスと一緒に歩んできた身からしても、とてつもないインパクトがあったと(笑)E・ZOの建設秘話は、また改めてnoteで取り上げたい。

少しだけ話すと、E・ZOも計画から今に至るまでに大きな転換点があって。あれ、元々はオフィスビルだったの。当初は今ドームにある事務所をビルに移設して、空いたドーム内のスペースを新しいエンターテインメント施設にしようと考えていた。「ドームに来る人をさらに楽しませるための施設を作る」と思っていたんだけど、それを孫オーナーの一声でまるっきり違うエンタメ施設の建設へ動き出すことになった。それは、後で詳しく担当者から話してもらえれば。

画像1

2020年7月PayPayドーム横に建設された複合エンタメ施設「BOSS E・ZO FUKUOKA

―なぜホークスが野球とかけ離れたエンタメにも取り組むのか、徐々に経緯が見えてきた。野球事業とその他のエンタメ事業の相乗効果についてはどのように考える?

今のホークスの状況は「世界中にあるエンタメをどうにかしてこのドームで行う自分たちのエンタメに転用できないか」と考えてきた結果、「大元となるエンタメそのものに手を出したくなった」ということだと思うんだよね。野球のために作っているビルでもないし、ビルにお客さんを呼ぶために野球をやっているわけでもない。今はコロナの影響もあって制限はあるけれど、最終系は野球をやっていなくてもE・ZOにたくさん人が来て、野球をやっているときは両方にぎわう相乗効果のある複合的なエンタメ空間、というところが目指すべきエンターテインメントです。

―これまで野球一筋でやってきた社員がいきなり畑違いのエンタメ事業を担当できるもの…?

野球をやってきたといっても実際にボールを投げたり打ったりしていたわけじゃなく、「野球を見に来る人にどれだけ楽しんでもらうか、感動してもらうか」を考えてきました。柳田選手のようにホームランでその人たちを笑顔にすることは端から僕らにはできなかったわけで、「だったらギータがホームランを打った時により感動が深まるような演出をしましょう!」とか「イニング間で楽しんでもらえるような企画をしましょう!」とか「楽しみにしてもらえるようなグルメやグッズを用意しましょう!」と考える。野球の会社なんだけど、実は野球以外でどうやって人を喜ばせられるかをみんなでこの15年ずっと考えてきたんだよね。だとすると野球場から一歩離れてもそのマインドもやっていることも変わらなくて、みんな人を笑顔にしたいからやっている。この会社にいる人は人を驚かせたり喜ばせたり、笑顔にすることが大好きな人の集まりなんだよね。

―球団の人は野球の仕事をしているという固定観念に私自身もとらわれてしまっていたかもしれない。

ファンにも年齢、性別、趣味・趣向、色々な方がいるので、こちらもバラエティ豊かに色んな形を組み合わせて、たくさんの人に喜んでもらえるように考えていた。普段から野球っぽくないことも追及していたので、普段考えていたことを少し形にするだけで、あのビルができあがる。外から見ると「みんな野球が好きでこの会社に入ったんじゃないの?」と見えるかもしれないけど、「野球も好きなんだけど、それ以上にエンターテインメントが好きな人」が集まっているので、野球じゃないことでエンタメを作ることに対しても、抵抗や違和感がないんじゃないのかな。

―野球とかけ離れた事業に取り組むことに対して、ファンの方にはどう受け止めてもらいたい?

4年連続日本一になったり、チームが結果を残してきているから福岡ソフトバンクホークス=野球だという人は多いと思うんだよね。さらにいうと、球場に来た経験があまりない人やTVで応援してくれている人は、この球場がどんなエンタメをやっているかまだ理解いただいていないところもあるかなと。そうすると実は「福岡ソフトバンクホークス」というチーム名が重荷になっている瞬間もある。それでも、野球をきっかけに僕らのエンタメを知ってもらえた人の方がはるかに多いので、やっぱり「福岡ソフトバンクホークスという名前の下に色々なエンタメがあるんだ」ということはぜひ知ってほしいですね。

―今季はチーム成績もなかなか調子が上がっていかず(9/21時点でリーグ4位)、様々な取り組みがファンの方にどう受け取られるのか少し不安もある。

グラウンドの中は誰にもコントロールできなくて、選手たちもやりたくてこんな結果になっているわけではないよね。結果がすべての世界なので否定もされがちだけど、彼らがどれだけ努力をして、しんどい思いをしているかも知っているし、そこで今は結果に出ていないだけという裏側での葛藤というのは、広報としても彼ら自身を応援する一人としても伝えていきたい。会社としてはチームがそういう状況にあってもみんなが応援したくなるような、グラウンドで苦労している選手とそれを応援したいと思ってくれるファンの気持ちをちゃんとつなぐような橋渡しは、中にいる僕らにしかできないこと。それを悲壮感を持たずに、明るく楽しくやっていけると、全員が納得はできなくても、喜んでくれる人はいるんじゃないのかな。

―ホークスのこれからの展望を聞かせてください。

ソフトバンクは最先端の技術とか動向に敏感。今後のエンタメがどうなっていくかというのは「今後の情報技術がどうなっていくのか」、「暮らしぶりはどうなっていくのか」というところをどう取り込んでいくのかという話。野球がこのままのスタイルでずっといて、時代村を見に行くようなイメージでとらえてほしくはなくて、野球も常に進化しないといけない。そうすると、野球の進化=世の中の進化なんだよね。ホークスの展望は「世の中が進化したら、野球もホークスのエンタメも進化するぜ!」ということなので、その意気込みをこの先10年、20年、何十年先も忘れずに中身を変容させていくことがこの会社の展望そのものじゃないかなと思います。

―ホークスを一言で表すとどんな会社?

かわいい言い方をすると「いたずら好きな会社」(笑)。いろんなことを仕掛けて笑ってもらったり、驚いてもらったりしたい人がたくさん集まっている会社だと思うので。いつまでもいたずらに飽きないで、あれこれと新しいいたずらを考えて、みんなに見せていかないといけないと思います。

画像3

―今後公式noteでファンの方へ会社の中をお伝えする機会が増えていく。広報室長として、この場でどんなことを発信していきたい?

選手にいろんな顔があって、それぞれが背番号を持っているように、社員もいろんな顔があってそれぞれの考えがあるわけなので、会社にいろんな人が集まっていろんなことを考えているんだということを、ぜひ知ってもらいたいと思っています。まじめな人から変わった人まで、いろんな人を紹介していきながら、よりホークスに親近感を持って応援してくれると嬉しいです!

(取材・文:広報 中澤 佑輔)

この記事が参加している募集

#社員紹介

6,470件

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!