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2023年冬アニメ【新春! アニメ第1話感想だよ!】の巻

恒例の新クールアニメ第1話感想、2023年も引き続きやっていきます。

この企画では通例はTwitterで書いたものに加筆修正・再構成という形を取っているんだけど、途中から追い付かなくなってしまったので、それ以降のものは完全に新規で書いててちょっと大変。

掲載順は東京ローカル地上波基準。

★はあくまで個人的かつ相対的な評価で、5点満点で3以上なら継続視聴するという程度の目安。逆に2以下なら2話まで観るかも怪しい。

そもそもこの企画自体、備忘録的なチェックリストを残しておきたいという理由で始めたことだったりする。
原則的には30分1話を基本単位として1クール=12話前後でシリーズを構成するTVアニメである以上は第1話の比重はどうしても高くなるというか、そこで面白いと思えなければ第2話以降我慢して観続けても大きく印象が変わることはほとんどないので。

あと、年間通すと延べ150~200本弱くらいは観るわけで、どんどん忘れていってしまうので、何年か後に読み返してみて各作品を思い出せるトリガーとして機能してくれたらという気持ちもある。
そのためには、単純に一番多く作品数を観ている第1話時点で書いておくのが最も合理的だし。

……というものすごくパーソナルなものとして書いているんだけど、リアル友人で毎回参考にしていると言ってくれた人もいたので、なんとなくそれも意識していたりもする。

1 氷属性男子とクールな同僚女子

前知識が何もなく「氷属性」が比喩だと思ってたから「物理なのかよ」ってちょっと驚いちゃった。仕事してる様子もふわっとしてて何の会社だかもわからないし、社会人感が薄く全体的に幼く見えて、舞台が会社である必然性を感じなかった。原作も知らないけど4コマ漫画なのかなと思ってしまうくらい「ひとネタずつ順番にこなしてます」っていう演出。監督の人選からしてそういう方向性だとは思うんだけど、それなら枠もショートでよかったんじゃないですかね。このテンポで30分見せられるのは正直キツい。

2 テクノロイド OVERMIND

今どきすごい古いアンドロイド感だなあ。ゲーム原作で視聴者がキャラクターを知っている前提なのか、それに頼りすぎて説明も疎かになっていて、TVアニメの第1話としてはちょっと心許ない。

3 トモちゃんは女の子!

個人的な「ショートカットのボーイッシュな女の子をやらせたら天下一」の女性声優ランキングでは長い間津田美波がトップに君臨していたんだけど、それが空位になった後、高橋李依が継承するものだと思っていた時期があった。でも彼女はそれよりもずっと幅の広い声優であるがゆえにそういう役を演じる機会が結果的にはあまりなくて、これは久々に来たなって感じ。

昨今のご時世では「暴力を振るうヒロイン」にも当たりが厳しいけれど、これくらいならまだまだ許容範囲であってほしい。女の子と男の子、どちらの視点かによって見え方が相当変わる内容だけど、それをどう対比して見せてくれるのかという展開も楽しみ。

★★★

4 転生王女と天才令嬢の魔法革命

主人公の性格と背景を示すアバン、世界観と主要キャラクターの立ち位置と関係性、行動原理までを説明しながらちゃんと話が動いていて印象的な転換までできっちり1話分。気持ちがいいくらい完璧な導入。

シリーズ構成が渡航で主役が千本木彩花、制作はディオメディアというのは、「ガーリッシュナンバー」と全く共通。道理でこの主人公、いつか絶対「勝ったなガハハ」って言いそうだなと思ったわけだ……。

★★★★★

5 REVENGER

まさか令和の世に必殺シリーズがアニメ化されるとは……としか言いようのない作品だな。オマージュっていうレベルはちょっと超えていて、後味の悪い締め方で主人公が「利便事屋」の仲間になっていく顛末を描く様など、ほとんど完コピと言っていい出来だと思う。なぜか幕末を舞台にした作品(アニメに限らない)が得意じゃなくて、あまり好きになれないことが多いので身構えて観ていた部分があるのだけれど、そうした予断を覆してくれた。

★★★★

6 スパイ教室

タイトルからしてもう容易に特定の作品を想起させ、悪く言えば二番煎じ感は否めないんだけど、焦点を「スパイ」に置くのか「教室」に置くのかでも変わってくるとは思う。第1話を観る限りではどちらもちょっと中途半端だったかな……。ただ、すごくダメというわけでもなく、少しだけ様子を見たい作品。

★★

7 お兄ちゃんはおしまい!

ベタな絵空事でもディテールを積み重ねることによってそれらしく見せることができるということを真摯に突き詰めているのは素晴らしいと思う。文芸面でも作画面でもいい仕事をしていて、とにかくお兄ちゃんを可愛くすることに全力を尽くしていることが画面の隅々まで行き渡っている。

★★★★★

8 冰剣の魔術師が世界を統べる

いや驚いたわ……クオリティとして言うなら全然ダメなんだけど、なぜかこれはもうアカンと思うより先に笑うポイントがやってくるので観るのがやめられない、そんな作品はなかなかない。「どうせダメならとことんダメなまま突っ走ってやろうぜ!」っていうパンキッシュなアティテュードのアニメだ。

ちなみに主人公役がまたまた榎木くんで、「惑星のさみだれ」「農民関連」と3期連続してオイオイ新人じゃねえんだぞという彼独特の突飛な演技プラン(敢えての棒演技)を敢行しているんだけど、それがこの作品では奇跡的なマリアージュを見せている。登場キャラクターはどいつもこいつも2回くらいGoogle翻訳を通したようなしゃべり方をしているために、上手い演技をしたほうがたぶん浮いてしまうので、ここで主人公を張れるのは逆に榎木くんしかいないと納得せざるを得ない。そこまで計算してアフレコに臨んでいるのかと思うと彼のプロ意識には頭が下がる。

★★★

9 にじよん あにめーしょん

スピンオフショートアニメとして非常に手堅い作りで、舞台裏の楽屋感のあるネタも楽しく、短い尺の中で個別のキャラクターにそれぞれの個性と可愛さをアピールする見せ場がちゃんと用意してあって、さすがに「ラブライブ!」ブランドらしい抜群の安定感。

★★★★

10 シュガーアップル・フェアリーテイル

まあざっくりまとめてしまえば、世間知らずの田舎小娘が金で買ったイケメン奴隷(作中での妖精は明確に奴隷として描かれている)と仲良くなっていく(であろう)話なのだけれど、そこに至るまでの世界観の前提がいまいち飲み込めないままなのは、やはり合理的な説明を欠いていると言わざるを得ない。

まず「戦士妖精」という存在が見た目の上では人間と同等の大きさである以上、高い報酬を払っても「人間を雇うよりも優位性がある」ということを示す必要がある。それは取りも直さず作中の経済に関わる事柄なので、最もわかりやすいのは貨幣価値で表すことなのだけれど、残念ながらそこがものすごく大雑把で、「親を亡くしたばかりの若い娘にも払える金額なのに人間の護衛よりも強い妖精が雇える」のでは辻褄が合わないのでは? という疑問が拭いきれなかった。

細かいけれども個人的にはこうしたことをわりと重視していて、なぜならそれがはっきり言ってしまえば単なるテクニックでしかないからだ。センスの問題なら「できない」だけれど、テクニックの問題は「やれるのにやっていない」のだ。

★★

11 Buddy Daddies

可愛い幼女さえ出せば多少の粗は許されると思ってるだろ! そうだよ!

……いやまあそうなんだけど、その「許される」度合いも結局は幼女の可愛さ次第なんだ。お話自体は実はそこまで奇抜というわけではなくむしろ王道なのだけれど、ちょっと変わったアレンジで目を引いて一発を狙う、という最近のPAオリジナル作品らしさそのまま。それは「アキバ冥途戦争」では功を奏したけど、リアルめのルックに対してディテールの詰めの甘さ、リアルとファンタジーの食い合わせというかバランスの悪さが多分に気になってしまうというのは、もうずっとPAが抱えてる問題ではある。

幼女の母親がこのエピソードのターゲットの1人であるヤクザ(?)の姐さんとは別人だっていうのもちょっとわかりづらかった。系統として同じタイプの女だし。一瞬写真で見せるだけなんだから、あれはわかりやすくするなら一見して別人だと判別できるようにしないといけない。

あとこれはどうでもいいんだけど、どうも舞台は俺の地元っぽくて、「博多豚骨ラーメンズ」しかり、治安の悪さとイコールになっている風潮があって苦笑。ああ、でも「異世界おじさん」もそうだったか。

★★

12 ジョジョの奇妙な冒険 第6部 ストーンオーシャン 第3クール

いよいよプッチ神父との最終決戦へと向かう最終章の幕開けとなるわけだけど、色々とブッ飛んでいた原作をどうまとめていくのか、という点においてこの第3クール第1話で最も象徴的だったのは、原作同様に各プロダクションの許諾を得て鉄腕アトム、マジンガーZ、鉄人28号をそのまま登場させたことかなと思う。ほんの一瞬のわりには手間も掛かるし特に本筋に関係するわけでもない、外したり差し替えようと思えば簡単にできるカットなのに。でもそうしなかったことには確かな「意志」を感じた。なんでも原作通りにすることがアニメをよくするとは思わないけれど、ここまで長く続くシリーズでそれをやることには、また違った意味が生まれるのだ。

★★★★

13 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかIV -深章 厄災篇-【第2クール】

前クールもそうだったけど出来そのものは悪くない。ただ、この深層探索のエピソード自体が物語全体の中でどういう位置付けなのかいまいち見えてこなくて、ダンジョンだから仕方がないとはいえ画的にもあまり変化がなく、ちょっとマンネリ気味かなと思ったりもする。

あと、「入間くん」の第3シリーズとかでもそうだけれど“主人公をより成長させるために仕組まれたエピソード”にあまり興味がないので、必然的にプライオリティが下がってしまう。ベルくんがどうなろうとぶっちゃけどうでもいいんだよね。書いてて気が付いたけど、これは自分が「モブサイコ」とかに惹かれないのとほぼ同根の話のような気がする。

★★★

14 アルスの巨獣

開始前にビジュアルをチェックしたときにはよさそうに見えたのと、脚本が海法さんということで期待していたのだけれど、正直かなりキツめだった。全然話がわからない。もちろん、その「わからなさ」によって駆動していくタイプの物語もあるのだけれど、そのためにはキャラクターにもっと魅力が必要だと思う。地味だしわかんない、っていうのは最悪。

画的にも巨獣のビジュアルがしょっぱいよね。デカいものをデカく見せる工夫が感じられなかった。あと、資源としてフルに活用できる大型生物って、まあ言ってみればクジラなんだけど、その資源で回っている経済圏のリアリティレベルにはもう少し気を配ってほしいかな。そういう部分をわりかしちゃんとやってた「空挺ドラゴンズ」っていう前例があるので、できないことじゃないはず。

★★

15 犬になったら好きな人に拾われた。

エロコメ枠で何も考えずに観るにはいいかな。ただそれだけだと15分って意外と長いよね。

★★

16 齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定

なんだっけ、こんなの前もあったな。ヘタレなドラゴンが出てくるやつ。主人公がこういうタイプだと、実は物語を動かしているのはそれに積極的に絡んでくるキャラクターなので、ほぼほぼ悠木碧劇場と化していて、それはそれで悪くなかった。原作は日本の作品だけど制作は「時光代理人」と同じスタジオなんだな、というプロダクション的にも興味深い。

★★★

17 異世界のんびり農家

農業をナメ過ぎだろ。「のんびり」ではなく「超速」で森が農地化されていくのはまだいいとしても、森の下草をどう刈るかとか種をどう用意するかとか品種をどう選定するかとか、栽培はできてもそもそも食用に適しているのかとか、現実的に想像できる問題はすべてあらかじめ排除されており、これを「そういう世界観のフィクション」として納得することができなかった。

おそらくそのほとんどは原作に依拠する問題ではあるけれど、だからといって許されるわけでもない。今期は未開の森を農地として開墾するのに果てしない労力を掛けるアニメ(「ヴィンランド・サガ」)が控えているというのもあってどうしてもその点では比較にならざるを得ず、タイミングが悪かったというのはあるかもしれない。

★★

18 ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん

このスタイル、コロンブスの卵的な発明なのでは? 必要な説明が全部実況と解説で片づいていく……。地のセリフで言わせると死ぬほど説明的になってしまう事柄が、これだと無理なくスッと入ってくる。そもそも遠藤くんが何もわかっていないという、視聴者よりもさらに理解レベルが下のキャラクターとして設定されてるから解説してあげるのが全然不自然じゃない。

あと、現世サイドと異世界(っていうかゲーム内世界)サイドがリンクしながら話が進んでいく、っていうプロットだけ見たら滅茶苦茶難易度高そうだけど、これならそこを破綻なく同時進行させていくことができる。キャラクターも生き生き動いていて、両方の世界でそれぞれの人生を生きているリアリティが保てている。

★★★★

19 解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ

いちいち色香にほだされる暗黒兵士(30代・童貞)のリアクションにフォーカスしてるの、ベタだけど癖になる。その声が杉田智和だというのもイメージ通りでキャスティングの勝利。

★★★

20 お隣の天使様にいつの間にかダメ人間にされていた件

この種のラブコメの第1話は「ヒロインが可愛いと思えるかどうか」が全てなので、その意味では微妙だったかな。「隣に住んでるクラスのマドンナがなんか知らんけど毎日料理を持ってきたり掃除するって口実付けて上がり込んできたりする」の、どっちかっていうとホラーじゃない?

21 TRIGUN STAMPEDE

事前のPV発表ではファンの反応もちょっと荒れ気味だったけど、想像してたよりはよかった。ただ、「そこそこいいじゃん」っていう評価でいいタイトルとそうでないものがあるし、「TRIGUN」という名前には「そこそこではダメ」だという重さがあって然るべきだと思っている。

個人的な好みとしては、フルCGのキャラクターに大袈裟なモーションを不必要に盛って「いかにもセルアニメっぽい」動きであるかのように見せる手法が全然好きではないので、観れば観るほど嫌になってくるという苦行。せめてアクションを見せたいという以外の場面では落ち着いた「演技」をさせてほしい。一般論として言っても、そのメリハリは必要でしょ? 始終チャカチャカ動いてるのを「動いてる」とは言わないと思う。

★★★

22 NieR:Automata Ver1.1a

原作ゲームが大好きだったからあんまりフェアな感想じゃないけど、これはこれで満足。2Bちゃんがアニメで動いてる! オペレーター21Oちゃんがしゃべってる! っていうだけでまあいいっちゃいいし、そういう人間に向けたファンムービーとしての完成度は及第点と言えると思う。そこかしこに「ゲームプレイ画面と同じ構図、画角」の画があって、それも嬉しいし。

ただまあやっぱり初見にはちょっと厳しいかなとは思う。たとえば冒頭のシューティングバトルシークエンスはPS4版のCGモデル準拠の粗さをそのまま持ってきている感があって、ゲームを知らないと「今どきこのクオリティのCGはキツいでしょ」と思った人もたくさんいただろうなとか。アウトロの人形劇の小芝居も、バンカーでの自爆とか超高速エンドロールとかゲームやってないとわかんない小ネタだし。

でもまあ、中途半端になるよりはこれくらい割り切ってくれたほうがわかりやすくていいかな。

★★★

23 魔王学院の不適合者 第2期 前半クール

2期の第1話、今期は他にも色々あるんだけど、その中でも異彩を放つ飛ばしっぷり。従来のキャラも「これ誰だっけ?」と思う間もなくわらわら出てきて、新展開から新キャラが名乗りもそこそこに次から次にざんざか登場してくる。本来的にはこういう作りはアカンと思うんだけど、この作品では「どうせ女はみんなアノスガールズになるし、男はアノス様にバンバンしばかれる」っていうのがわかっているから、これで正解なのだ。こまけえことはいいんだよ!

★★★

24 最強陰陽師の異世界転生記

異世界ものの定番展開として「主人公だけ無詠唱の魔術が使える」みたいなことがよくあるけど、「異世界の理とは全く違う原理で発動する異種魔術」っていう扱いは意外と取り合わせがよくて、その手があったかと思った。単純に陰陽師が唱える呪文(って言っていいのか? )、カッコいいし。

これも含めて今期は「異世界はまだまだ発掘できる可能性があるフロンティアだな」と思わされる作品がいくつかあって楽しい。

★★★

25 老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます

どことなく古さを感じるオタクネタ擦り(「知らない天井」の天丼とか)に覚えがあると思ったら「のうきん」と同じ原作者だった。ただ、それと同じく物語のフレームとしては今日的なものにそれなりにアジャストしてくるのも味なので、新旧ハイブリッドなこの感じが楽しめるかどうかで評価は変わってくると思う。個人的には悪くないけどちょっと味が濃いかな、みたいな感想。

★★★

26 ノケモノたちの夜

「美女と野獣」と「魔法使いの嫁」を足して2で割ったような話だな。というかまあ異種婚姻譚やその亜種がそれなりに人気があるのはわかるのだけれど、あまり興味が持てないんだよな。どっちかっていうと女性のほうが好きな話型だというイメージもあるし。

まあ出来としては可もなく不可もなくという感じではあるけれど継続して観るかは微妙だな。

★★

27 The Legend of Heroes 閃の軌跡 Northern War

ゲーム原作のアニメにありがちな失敗を犯しているように見える。常々言っている通り第1話では充分な説明がもちろん必要なのだけれど、個人的には設定をダラダラしゃべっているだけのものを説明とはみなしていない。っていうかファルコム作品のアニメ化ってだいたいいつもそうじゃない? 面白かったためしがない。

28 便利屋斎藤さん、異世界に行く

前述の「氷属性男子」とは真逆の方向性で、小ネタは小ネタとして割り切ってはっきり区分けして見せていくスタイル。30分をひとつのストーリーとして見せられるだけの軸がないのであればこのほうが断然見やすくなる。これは原作も読んでいるのだけれど、どちらかといえば淡白で線の細い原作の画風のエッセンスは残しつつ、アニメらしいメリハリと彩りが加わってキャラクター造形に深みを与え、より実在感が増しているのも好印象。

★★★

29 虚構推理 Season2

簡単に1期を振り返りつつ、主要なキャラクターの性格や能力などを紹介していく、2期の第1話としてはお手本のような構成。一般的に1期を観ずに2期を観る人はあまりいないだろうけれども、1期を観ていてもよほど好きでなければディテールは忘れてしまっていることもしばしばあって(っていうか俺はだいたいそう)、そうした視聴者を逃がさず掴む工夫でもある。意外にそれを怠ってしまう作品は多いんだよね。特に派手ではないけれどやるべきことをそつなくちゃんとやるプロの仕事が好きだし、これはそういう作品だと思う。

★★★★

30 もういっぽん!

「あまり強くはない部活の日常」の描写が素晴らしい。武道場にこもる空気とそこに充満する熱量、窓から差す光によって示唆される彼女たちがここで過ごす輝ける日々、寄り道して買い食いしたりしながら他愛もないことでワイワイ笑い合う帰り道、そしてまた、そうしたことのすべてがいずれ彼女たちのかけがえのない思い出となっていくであろうということ。綺麗事に過ぎるかもしれないけれど、それを人は「青春」と呼ぶのだ。

★★★★

31 HIGH CARD

うん、オシャレですね。それから……なんかキラキラしてオシャレ。あと……とにかくオシャレ。それ以外に感想がない。というだけでは感想にもならないのでもう少し言うと、キャラクターの動き(アニメーションではなくて行動)がどうも唐突に見えるというか、逆に言えば一貫した「キャラクター」として動いているように見えない。凝った設定は結構だけれども、設定に隷属するだけのキャラクターには魅力を感じない。

32 もののがたり

話としてはシンプルでわかりやすいんだけど、逆に言うと月並みなので、それだけにアニメとしてはもっと画の説得力がほしいかなという印象。主人公が持ってる輪っか(?)の効果、たぶん億泰のザ・ハンドみたいなことかなとは思うんだけどわかりづらかったというか、普通に刀折ってるようにしか見えなかったしね。

★★

33 東京リベンジャーズ -聖夜決戦編-

1期から連続したストーリーを展開する中で丹念に状況整理を行いながら、新たなループへと向かう主人公の決意にまでつなげていく堅実な第1話。すでに人気を得ているシリーズだけに冒険する必要がないのは事実だけれど、話としては大きな見せ場のない地味なつなぎのエピソードで丸々1話分を費やしたのは地に足の付いた構成だと言える。

★★★

34 ヴィンランド・サガ SEASON2

原作ではあまり多くは語られていないエイナルの過去エピソードから奴隷編に入っていくという導入は英断だったと思うし、ここから先は「トルフィンとエイナル、2人の物語である」ということを示した羅針盤として第1話にこれを持ってきたという意図が明確に見て取れる。1期とはがらりと舞台も変わり物語の様相もそれと連動するので、制作がWITからMAPPAに変わったことがどう影響するのかと思っていたけれど、最初からそれを見せてくれたことで以後の展開にも期待できそう。

★★★★★

35 あやかしトライアングル

原作矢吹神なのに第1話の段階ではまだ全然エロくないので本当に暫定評価って感じだな。こんなに丁寧に導入やるんだってちょっと意外なくらいだけど。テンプレっぽくはあるけどわりとしっかり作り込んだ世界観で、それが期待されるちょいエロラブコメとしての本筋とうまく噛み合えば楽しめそう。

っていうかこれもTSだな。やっぱ流行りか。

★★★

36 英雄王、武を極めるため転生す ~そして、世界最強の見習い騎士♀~

「異世界の次はTS!」みたいな意見を最近あちこちで目にするんだけど、両方盛ってるパターンも元々結構あるし、これもそうですね。贅沢セットで胸焼けしそうと思いつつ観るとしかし、意外にちゃんとしていて飲み込みやすい。順を追ってきっちりひとつずつ話を進めているのは好印象。前世での死亡から転生までの流れがこんなに丁寧なの珍しくない? あと女神様が能登っていうだけで加点ポイントでしょ。

★★★★

37 人間不信の冒険者たちが世界を救うようです

単に追放されて見返す系のルサンチマン発露なら正直もう間に合ってますというところなんだけど、それぞれの事情で人間不信に陥った4人が敢えて仲間として再出発する、っていう着想が面白い。酒場の自分語りで自然に全員の背景を開示しながらキャラクター紹介までこなす構成もテクニカルだし、酔い潰れて雑魚寝で朝チュンを迎えるシーンはカット割りも作画も凝っててよかった。

★★★★

38 とんでもスキルで異世界放浪メシ

「イオンネットスーパー」や「エバラ生姜焼きのタレ」といった実在の事物を異世界に持ち込むことで生活感の演出をブーストさせるの、これこそがチートでしょ! これを「発明」と呼んでいた人も見かけたのだけれど、発明というよりは最初にやった奴の総取りでしかないし、以後は禁止カードにすべき!

……という冗談はさておき、“異世界メシもの”のひとつのバリエーションとして受容すると、何よりも「メシがちゃんと美味そう」なのはやっぱりポイントが高い。おそらく2話では別れてしまう、主人公が護衛で雇った冒険者パーティの声優陣が妙に豪華なのも制作サイドの本気を感じさせる。ノーマークだったので完全に掘り出し物。

★★★★

39 久保さんは僕を許さない

「お隣の天使様」と大まかな話の構造は一緒と言っていいと思うけど、評価を分けるのはやっぱりヒロインが可愛いから。単純に好みの問題でもあるので異論は認める。ただまあそれだけじゃなく、「無個性で誰にも見つけられない」ことを端的に示す「顔のない」キャラクターとしてスタートして、久保さんが見つけることで顔がはっきりする、というアバンでの主人公の描写はなかなかよかったと思う。

あと、このジャンルのトップが高木さんであることは揺るぎないので、それとどう違うアプローチをするのか、その上でどう超えていくのかっていうのは、これだけじゃなくみんなが抱える課題だと思う。

★★★

40 大雪海のカイナ

それぞれに滅びの危機に直面する未知の種族同士のボーイミーツガール。特殊な生活環境を精緻に描きつつ、大まかな世界観は一転してダイナミックな構図の画で見せるグラデーションは意図されたもので、さすが弐瓶勉作品を知り尽くした安藤裕章の手腕が光る。抑制されていながらもツボを押さえた動きも、CGアニメのノウハウを積み上げてきたポリゴン・ピクチュアズならではのもので、それら全てが噛み合った心地よさは、この特異な世界に視聴者を没入させるに充分。

ポリゴン作品はいつもだいたいそうだけど、テレビで観るのがもったいないと思わせるものがある。大きいものを大きく、細かいものを細かく、そのコントラストがはっきりしていて、おそらく本当はスクリーン前提で画を作ってる。

★★★★★

41 火狩りの王

久々にWOWOWの本気を見た。今期のオリジナル作品としては上記の「大雪海のカイナ」と双璧と言っていいと思う。これもまたジャンルとしてはポストアポカリプスではあるのだけれど、その様相はかなり違っていて、より骨太なファンタジーでもある本作では、それを一切の遠慮なく正面切って剛速球で投げつけられている感じ。しっとりとした湿度感まで伝わってくるかのような画作りと語り口は、静かな緊張感をたたえたまま染み渡る。

プロダクションの性質上、WOWOW以外での放送も配信もないのだけれど、第1話だけは無料配信なのでできるだけ多くの人に観てほしい。

★★★★★

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