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【2023年春アニメ】40作品の第1話を観て感想を雑に言っていく

去年の春から毎クール恒例にしているいつものやつです。2年目に入りました。2023春アニメの第1話を観た時点での感想を好き勝手に言っていきます。掲載順は東京ローカル放送順。

放送しているTVアニメを全部観るっていうことを個人でやるのは事実上不可能に近いと思っているので、観る前にある程度選別してもいます。具体的な例としては今期で言うと『トニカクカワイイ』とかで、1期にハマれなかった作品は2期が始まっても俺は観ません。2期から面白くなるみたいなこともあるかもしれないけど、そこまで追っていられない。

あと言うまでもなくこれらは極私的な感想で、個々の評価はたとえそれが正反対の意見であろうと他者に対して含むところは何らありません。あなたと意見が違ってもあなた自身を否定しているわけではない、ということです。

「つまらないと感じても何かしら褒めるポイントを見つけてポジティブに言及すべき」みたいな考え方はあるし、公的に発言する評論家ならその姿勢が必要なこともあるだろうけれど(それもケースバイケース)、プライベートでそこまで求められる筋合いは全然ないので、作品に対してはみんな自由に褒めて自由にdisっていこう。そもそも一介の視聴者として感じる「良い」と「悪い」は全く同価値だと思いますしね。

★は大まかに以下のような個人的指標。3つ以上なら継続視聴、2つ以下ならほとんどの場合は途中で視聴をやめます。

★★★★★ すげえいい
★★★★  かなりいい
★★★   まあまあいい
★★    ちょっとキツい
★     だいぶヤバい

1 天国大魔境

いやもう優勝ですね。春クール1本目にして決定でいいんじゃないですか。原作が大好きだからハードルが上がりまくってたんだけど期待以上のものを見せてもらった。原作はわりとヌケのいい絵なんだけどそこを敢えてバツバツに埋めてきた稠密な画面構成と、それに負けない実在感を持って動かすキャラクター。原作ではそこそこあっさりしていた最初のアクションシーンを丹念に描くことで、マルがいかに強いかというのがよりはっきり伝わる形になっている。微妙にエピソードの順番を入れ替えてTVアニメの第1話としてわかりやすく組み直した脚本も、初見だと咀嚼が難しいであろう学園パートと外のパートを交互に見せる作品であるということを自然に示すいい導入になっていた。あと何よりもミミヒメが可愛い。言うことないです。ありがとう、そしてブラボー。

★★★★★

2 地獄楽

スタイリッシュ和風アクション(ダーク風味)、好きな人はすごく好きそう。暗いところはより暗く、鮮やかなところはより鮮やかに、色味を徹底してコントロールすることによってゴージャス感が加味されて1ランク上の映像になっていると思う。同時にこれを最後まで維持するのは大変そうだなとも思うけど。

★★★★

3 山田くんとLv999の恋をする

アニメとしての出来はいいと思うんだけど、完全に女子向け恋愛ものであるせいか、主人公のキャラクターが全く受け付けないんだよな……。まあ言ってみれば『ネト充のススメ』の陽キャ版というか『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』の女子版みたいなものではあるので文句付けるのも詮無いんだけど、主人公の恋愛脳っぷり(そしてそれゆえの自己中心的な態度)がちょっとキツすぎるというのが正直なところではある。いやでも本当に出来はいいので、主人公に全く感情移入できなくても出来さえよければアニメって結構観られてしまうんだなっていう妙な感動はあった。

★★★

4 僕の心のヤバいやつ

んーこれも悪くない、悪くはないんだけど……。これは原作でイメージが固まりすぎてた俺の側の問題かもしれないとは思いつつ、同監督・同スタジオ(シンエイ)である『高木さん』とは違う見せ方をしてほしかったという気持ちもある。まあ原作も初期と中期以降ではかなり雰囲気が変わるので、どっちにテイスト合わせるかは難しい部分もありそう。ただまあ、初期の市川に見えている世界と、山田たちがいる向こう側の世界とをもっとはっきり色分けして見せてくれてもよかったのかなとは思う。やってはいるんだけどね。せっかくアニメでやるわけだし、もっと極端に見せたほうがわかりやすかった。でもたぶん1クール中盤で市川の心情的にすごい転換点があるはずなので、そこをどう描写してくれるか次第かな。

★★★

5 Re:STARS

双子の姉と入れ替わって女装してアイドル業に勤しむ弟、という中国アニメだけど、てっきり吹き替えてあるものだと思ったら普通に原語+日本語字幕でちょっと驚いた。内容としてはあまり特筆すべきことはないんだけど、いかにも中華ニメっぽいバタ臭いコメディのテンポは嫌いじゃない。ただ、鬼滅の裏でわざわざBS日テレ録画してまで観るかっていうとちょっと微妙。再編集して夏にやる劇場版では吹き替えているらしく、それを観たら印象は多少変わるかもしれない。

★★

6 マイホームヒーロー

そもそもキャラクター設定の時点でハンデを抱えてるんだよね。冴えないオッサンが主人公だからフックが弱い。そこをどう引きつけていくかという工夫が見えなかった。「平凡な日常から激動の非日常へ」というプロットが肝のはずなのに、キャラ付けや背景の説明が曖昧なままダラッと事件が始まってしまってその落差が不充分。そこをうまくやったのが『いぬやしき』かなと思う。

7 転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~

まあなんか独特のテンポで一部では話題だったけど、ベースはよくあるテンプレ異世界転生そのもので、そこからの差別化まではできていないかな。切り口的に何か独自のものを見せてくれないと厳しい。

★★

8 アリス・ギア・アイギス Expansion

ゲームもよく知らないしキャラもわからんけどわちゃわちゃしててなんか楽しそうっていうのだけは伝わった。これはこれでいいんじゃないのと思う。なんだか意味不明な特訓してると盛り上がってしまうの、アイカツ感あるよね。新米の子はプレイヤーキャラクターの分身ではなくてアニメのオリキャラってことでいいのかな。

★★★

9 絆のアリル

ヴァーチャルワールドの音楽ものっていうのも最近は結構ありふれてしまっているんだけど、その見せ方に無頓着というか特別感がないのはいただけない。まず転送ポイント(?)の学校までリアルで歩いて行かなくてはいけない意味がわからないし、「何にでもなれる」と言っておきながらリアルとアバターの外見にさほど違いがなくてビジュアル的な変化にも乏しい。台詞で言っているほど魅力的な世界に見えないのは致命的。

★★

10 スキップとローファー

原作は読んでいるので、アニメになってみつみちゃんがあんまり可愛くなりすぎてると嫌だなあと思ってたんだけど、程よく「十人並み」感が出ててよかった。主人公は彼女だけど本質としては学園群像劇なので、それぞれの視点がどう表現されるのか、という点も注目してるけど、初回は主に志摩くんの目を通した見え方が丁寧に描写されていたと思う。あまりリリカルにもウェットにもなりすぎず、かといってドライでもない絶妙な「湿度感」がこの作品の肝だと思うし、それについては期待できそう。

★★★★★

11 アイドルマスター シンデレラガールズ U149

いや、簡単じゃないと思うんですよね。これだけの人気と歴史のあるシリーズで新作やるっていうのは。それなりではダメなので。エンドクレジットを本編側で消化してED曲自体はノンクレジットで流すっていうのも、ちょっとしたファンサービスではあるんだけど「さすがはアイマスさんやでえ」と思ってしまった。

★★★★

12 この素晴らしい世界に爆焔を!

本編は好きだったから期待してたんだけど、めぐみん単体で引っ張るの結構厳しいなと初手から思ってしまったな。やっぱりあの4人が揃って初めてこのすばなんだなと。

★★★

13 神無き世界のカミサマ活動

またしても仕事を選ばない榎木くん。未開の部族というわけでもないが妙に欠落のある異世界人の性に奔放だけど奥手みたいなアンバランスさをギャグにしつつお話を駆動していくのかと思ったら、唐突なハード展開で転調されて、食い合わせの悪さで胃もたれしそう。でもそれ以前に単純にアニメーションとしてのクオリティがキツい。さすがに1話から口パク外しまくってるのはアカンやろ……。

★★

14 Dr.STONE -NEW WORLD-(第3期)第1クール

3期も変わらず安定。村が発展する様子をマイクラ風のドット絵デフォルメぷちキャラで見せながら省略していくやり方は、ベタっちゃベタなんだけどわかりやすくて収まりがいい。あれをダラダラやっても仕方ないし、先は長いからサクサク行こうっていう意図が明確。さすが。

★★★★

15 私の百合はお仕事です!

全然予備知識はないけどなんか百合界の真打ち登場みたいなイメージだったからちょっと拍子抜けかな。言ってみれば劇中劇的な「お芝居」が肝なんだけど、そこの非日常感をもっと強調しないと単なる学芸会に見えてしまうし、こんな感じだと日常との態度の落差も見えづらくなってしまう。ただまあキャラが増えてくれば関係性の矢印でそのへんは解消されそうではある。

★★★

16 Opus.COLORS

新機軸の空間デジタルアートみたいなものが単なるアートにとどまらず日常生活までをも席巻した近未来、的な設定なんだけど、この手のやつはそのビジュアルをいかに面白そうにできるかによって説得力が変わってくるので(好例は『ユーレイデコ』とか)、やりたいことはわかるけどちょっと厳しかったな。同じことは細田のアレ(なんとか姫)でも思ったんだけど。

17 異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する

自前の異世界扉が自宅にあって、そこでレベル上げすると筋肉がバッキバキになるの、それもはや「精神と時の部屋」では。これはでも異世界もののバリエーションと言っていいのかな。テイストとしてはどっちかっていうと韓国産ウェブトゥーンのリベンジものとかに近いし、作画もそっち寄りだな。

★★★

18 勇者が死んだ!

すでに出オチ感あるタイトルから本当に出オチで死んだ勇者に成り代わる、っていうドタバタ感はまあまあ悪くないけど、ぶっちゃけほぼそこで話が終わってる気もするのでそこまで展開に興味が持てないな……。やたら太もも描写に力が入っているのはプラス。

★★★

19 カワイスギクライシス

花守ゆみり劇場。ひたすらリアクションが大きくて楽しい。このネタでどれだけ引っ張れるのかはわからんけど、押せるだけ押してほしい。

★★★★

20 マッシュル -MASHLE-

ちょっとギャグの方向性が合わないというか、ここまで社会不適合感を出されるとキャラというより何かの病気なのでは? と思うようになってしまった。パワー系だから余計に怖い。あとそれ「引き戸」じゃねえから。

★★

21 BIRDIE WING -Golf Girls' Story- Season2

のっけから「いただくわ、イヴのキッスを!」言うてるし、この百合の波動、1期を楽しんだファンが何を望んでるか理解(わか)り過ぎてる。広瀬香美御大のOP曲が1期から継続されているのもよい。唐突に相手が繰り出す「イン・ザ・ゾーン」、さらにその進化版「イン・ザ・ゾーン ディープ」と、一応説明はするけどなんだかすごいっていうことしかわからない必殺技のゴリ押し感はまんま少年漫画ノリで楽しい。これが好きじゃない男の子はいないでしょ。また、それをイヴがまだ見せていなかった色の弾丸「オレンジ」に接続する作劇の妙。出し惜しみせずエンタメに徹する姿勢には拍手を送りたい。

★★★★

22 女神のカフェテラス

ジェネリック五等分。でも悪くはない。まあ当たり前だよな、スタッフもスタジオも一緒だし……。ポニテのアホの子を推します。

★★★

23 六道の悪女たち

チャンピオン伝統の不良漫画に萌えをブレンドするとこうなるのか。でもバランスはどっちかっていうと少年漫画寄りで、アニメとしての演出もそれに準じたものになっていると思う。っていうか原作のwikipedia概要にいきなり知り合いの評が出てきて驚いたわw 確かに秋山さん好きそう!

★★★

24 魔法少女マジカルデストロイヤーズ

うーん……。「迫害されたオタクがレジスタンスとして武装闘争路線でアキバを奪還する」っていう企画の古臭さも、敢えて(というかそれ以外にやりようがないと思う)画面や演出もちょい古めのテイストに合わせてあるのも、何もかもがキツい。これが面白いと思える層は極めて限られると思うし、それがやる前にわからないのかなっていうのが一番キツい。もっとわかんないのは同時に誰も知らないままゲームがリリースされてるってことなんだけど。

25 江戸前エルフ

ダメエルフがひたすら可愛いのを楽しむアニメだから、そんなに難しいことを考える必要はない。ただただダメエルフを可愛く描け。それだけに注力しろ。……っていうオーダーがあったのではないかと思えるくらい割り切ってて非常によいなと思った。あと最近は年齢的にももうお母さん役とかが多くなってしまった小清水ボイスを可愛いサイドで楽しめるっていうのもわりとうれしい。

★★★★

26 異世界ワンターンキル姉さん ~姉同伴の異世界生活はじめました~

なんか前もこんなのあったな。あれはお母さんだっけ。原作のネタが元々持ってるB級ポルノっぽさ(ごめんね)と、微妙にチープなアニメ(これもごめん)とのマッチングが意外とよくて、「近所にこんな居酒屋あったんだ、すげえ旨いってわけじゃないけど安いなりにそこそこ食えるしまた来ようかな」みたいな味わいがある。逆に言うと、こういう作品をすげえ綺麗な作画でやるような意味はあんまりないんですよね。ちょっと安いくらいのほうがエロい。

★★★

27 おとなりに銀河

ファンタジー漫画家ラブコメかと思いきや本当にファンタジー(というかSFか?)だった。っていうかドラマも同時にNHKでやっていて、単行本5巻しか出てないのになかなかすごいプッシュだな。本編はまあそこそこって感じだけど、片言で喋る長縄ボイスは脳に効く(ショタだけど)。

★★★

28 異世界召喚は二度目です

クラスごと召喚されるパターンか~と思ってたら幼なじみキャラ以外はドラスティックにモブとして扱っててなかなか思い切りがいいな。「二度目」なだけに展開は早くて飽きさせないけど、トータルで見れば可もなく不可もなくって感じ。しばらく様子見かな。

★★★

29 青のオーケストラ

保健室から始まるボーイミーツガール。無難なスタートだったとは思うけど、音楽ものの真価はやはり演奏シーンのダイナミズムにあるので、初回ではその片鱗だけでも見せておくべきかなとも思う。まあNHKなのでそれなりに回数は確保してあるんだろうし、長い目で付き合う作品かな。

★★★

30 機動戦士ガンダム -水星の魔女- 第2クール

衝撃的なラストを迎えた第1クールを受けてどう始めるのかと思っていたら、その初回を踏襲したデュエルを冒頭に据えた導入でまさかの学園ドラマへの回帰、でもその裏でキャラクターの配置は相当変わってしまっていて、様々な思惑によって物語が動いているということを示す演出が巧み。キャラクターの多さに対してその捌き方が上手いというか、それぞれについて何を見せるべきかがはっきりして簡潔に印象付けてくるのは前期と変わらず。簡単にやっているように見えるけれど、王道が王道であることの貫禄と積み上げてきたものの重みを感じさせる。

★★★★★

31 事情を知らない転校生がグイグイくる。

原作の持つイノセント感というか無味無臭だけどほんのりホンワカするみたいな微妙な空気感を再現することにはある程度成功していると思う。やっぱり序盤の「死神」イジりはアニメとして動いて声が付くと、だいぶ「いじめ」の生々しさがあるし、そこであまりクラスメイトに嫌悪感を抱かせてしまうと後の展開が厳しくなるので、かなり見せ方に苦慮した跡は見える。作品としては、好きか嫌いかはもうこのテイストに合うか合わないかになってしまうと思うし、そういう意味ではアニメである意義をあまり感じないっていうところもある。難しいね。

★★★

32 ワールドダイスター

演者にはなかなかプレッシャーの掛かる企画でチャレンジングだなという第一印象。同じことはレヴュースタァライトでも感じたけど、これはもっと直接的に演技力が問われるので。でもなんとか想定ラインは越えてたと思う。オーディションの配役が入れ替わることで主人公の異質性が際立つ演出もよかったね。

★★★

33 鬼滅の刃 -刀鍛冶の里編-

作品そのものについては俺がいろいろ言うほどのことはもう何もないんだけど、初回に関して言えばちょっと間延び感が気になった。元々日常およびギャグ描写についてはそうなんだけど、原作の要素をくまなく拾おうとしすぎて尺を圧迫している。劇場でかけるためにかさ増しした感があって、ぶっちゃけちゃんと切れば30分で収まると思う。だからテンポも悪いよね、正直。まあひとたび戦闘が始まっちゃえば画面はゴージャスだし、アクションの時間で流れていくから気にならなくなるんだけど。

★★★★

34 彼女が公爵邸に行った理由

主人公の動機付けが弱いというか、本当は弱くないんだけどそんな消極的な方法でいいの? って疑問に思わせた時点で負けだと思う。貴族的な因習に縛られているというのなら、親が決めた婚姻をあんな形で破談にしようとはしないだろもっと考えろよとしか思えない。って原作があるのか。じゃあ原作が悪い。

★★

35 デッドマウント・デスプレイ

導入なっが!!! と思ってたらそれが伏線というかミスリードになってるのね。危うくAパート切りするところだよ。逆パターンの異世界転生(?)で主体も一見そうだと思わせるのとは反対のキャラクターで、ひとひねりしてあるのがオリジナルな部分だとは思う。でもこれ以上の何かがあるのかな。ひとまず継続。

★★★

36 君は放課後インソムニア

正直言って原作よりかなりよくなってる。これぞアニメ化した意味のあるアニメ。まあ原作は話が進むにつれて不眠症要素がどんどん薄れていって看板に偽りありみたいになっていくし、メインの2人を中心に特に派手なことは起こらない普通の学生生活を描写していく、どっちかというと淡泊な作風なんだけど、アニメはカット割りが秀逸で、無味無臭に近かった原作を基にこれだけ色彩豊かな作品に仕上げたのはお見事。特に夜のシーンはよかった。

★★★★

37 THE MARGINAL SERVICE

どこかで見たような設定とどこかで見たようなキャラクターを凡庸なビジュアルで描いても、続けて観ようかっていう気にさせることは難しいという典型のような作品。

38 【推しの子】

いやこれちょっと難しいな。好き嫌いがはっきり分かれそう。有り体に言えば俺は全然好きじゃなくて、90分構成の1話の半分くらいでもうギブって感じだったんだけど、好きな人が多いのもわかる。このノリをよしとするかどうかは結構視聴者それぞれがフィクションに対して何を求めているかの根幹に近い部分のような気がする。原作を読んでないので想像だけど、漫画ならこのガバガバ感と露悪的な作劇手法が、そもそもこの物語自体も作り物であるっていう入れ子のメタ構造として納得できるのかもしれないとは思うけど、アニメだとバランスの悪さのほうが目に付いてしまった。あとやっぱりどうしても原作者の代表作でありアニメとしても大ヒット作であった『かぐや様』との比較になってしまうのは避けられないし、それで言うと数段落ちるかなというのが素直な感想。

★★

39 王様ランキング -勇気の宝箱-

1期の続きじゃなくて隙間を埋めるサイドストーリーの短編オムニバス的なシリーズなんだな。多少の後付け感と、あざとさギリギリの泣かせとが気にならないと言ったら嘘になるけど、キャラクターと関係性を掘り下げて本編を補完するという意味では申し分ない。

★★★★

40 贄姫と獣の王

なんか前期もこんなのあったな、『ノケモノたちの夜』か。女子に人気の「美女と野獣」枠だね。その手の話にあんまり興味がないので、アニメとしての出来はそこそこだと思うけど、“普通”程度だと続けて観るモチベーションは湧いてこないなあ。あといわゆる異類婚姻譚として考えるならちょっと中途半端っていうか、本当は人間とハーフでした、これまでの贄も実は殺してませんでしたみたいなの、偽善的じゃない?

★★


【番外編】 

ウマ娘プリティーダービー ROAD TO THE TOP

テレビ放送のないネット配信限定で全4話のミニシリーズということもあって、春夏秋冬4期1クールずつを分けてカテゴライズしている定義上は含まれないものとして扱うしかなく、番外とさせてもらった。

史実を基にした再現性、それをキャラクター設定とドラマに落とし込む手腕、そのいずれもが評価の高いシリーズではあるが、本作も前評判に違わぬ出色の出来と言っていいと思う。

サブタイトルが示す通りナリタトップロードを中心に据えつつも、競い合うアドマイヤベガ、テイエムオペラオーも含めた3人それぞれの背景と感情を過不足なく描写しつつ、クライマックスは皐月賞のレースシーンで締める手つきは、まるで伝統芸能を見るような安定感と安心感をもたらす。

もちろんそれは作画も含めて細部まで高められた完成度あってこそのもので、最近感じるようになってきた「TVアニメに求められる完成度の高さと現場のマンパワーに見合う最適な話数って、もしかしたらもう1クールだと長すぎるのでは?」という疑問がまたちょっと強度を増したな、という感慨もなきにしもあらず。

それはそれとして。

いつも真面目で一生懸命に走ることで知られたナリタトップロードは、それだけだと悲愴感に満ちてしまいすぎるためか天真爛漫な陽のキャラクターとして設定されていて、それと対をなすように、出生に特別な事情のあったアドマイヤベガの内に秘めた想いが物語に絶妙なコントラストを生んでいる。そしてそれらとは全く無関係に圧倒的な個として存在するのが、この時点ではまだ何者でもなかった「覇王」たるテイエムオペラオーの確固たる自信に満ちたキャラクターであり、それらが三位一体となって織りなす束の間の(そう、本当に束の間の)ライバル関係は、眩いばかりの光を放っている。

あとこれは余談に属することだとは思うけれど、アドマイヤベガが生まれながらに失ってしまったきょうだいに対して抱えている感情を、その名前から連想される対になる星(アルタイル)になぞらえて夜空を見上げるシーンで表現するのは、史実的にも物語的にも美しい偶然と言うほかはない。もちろん、本当は単に名牝ベガの子であるからそう名付けられただけなのだけれど。

個人的な感情としては史実のナリタトップロードが大好きだったので、その意味であまり冷静な評価ではないことは事実で、それが今回、番外でありながら最長の感想になってしまった理由でもあるのだけれど、それを差し引いたとしても★が減ることはないと思う。

★★★★★


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