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無職44日目 空っぽの茶碗倶楽部

日付が変わって、昨日は、悪友とふたりで中学の頃の友達に会いに行ってきた。
そいつと最後に会ったのは、俺たちが高校生の時なので、もう21年前。
ふとした時に、そいつの名前が話題に上がり、ちょっと会いに行ってみるか、ということになったわけ。

そいつは、俺たちの仲間内では、どちらかというといぢられキャラで、バカみたいなエピソードがたくさんある。バレンタインデー当日にジェルで髪型をキメキメにして登校して来たとか、夜中にオナニーしていて親にバレそうになって咄嗟に空っぽの茶碗でメシを食うふりをして誤魔化したとか。
童貞だけどちょっとイキがりたい、という思春期のハートを具現化したような奴だった。そんな奴が友達だったら、そりゃ、いぢるでしょ(笑)

ただ、ひとつだけ、俺はそいつに感謝してることがある。俺がスケボーを始めた時、最初のデッキは奴の庭に転がっていたオールドデッキだった。あの時、奴が俺にスケボーを貸してくれなかったら、俺はスケボーなんてやらなかったかもしれない。もしかしたら、ね。

さて、午前中に原付で悪友のうちまで行き、悪友の250ccのバイクに2ケツして、奴の実家へ。奴の実家に行くなんて21年ぶりなので、記憶を辿りながら。そもそも、奴が実家住まいか分からないけれど、俺と悪友は、「きっとアイツはニートで童貞で引きこもりだから実家にいるはず」と予想していた。我ながら酷い予想だと思う(笑)

ところが、記憶を辿りながらウロウロしたけれど、あと一歩のところで奴の実家が見つからない。21年も経てば建物は新しくなり、道路も整備されているのだから無理もない。このままでは辿り着けない。
俺のスマホの電話帳には奴の21年前のケータイ番号が登録されていたので、ダメ元で電話してみた。
コール音だけが繰り返され、もう無理かなぁ、と思っていたら、まさかの奴が電話に出た!
21年間、ケータイの番号を変えていなかったのだ!
更に、今も実家に住んでいる、とのこと!

奇跡に感謝しつつ、実家の場所を教えてもらい、そいつに外に出て来てもらった。

21年ぶりのそいつは、ちょっと太っていたせいか、優しそうな顔をしたおじさんになっていた。再会を喜びつつ話を聞くと、奴はずっと実家に住んでいて、最近、仕事を辞めて無職とのこと。高校を卒業してすぐ働き始め、その時に彼女ができたらしいのだけれど、あまり長続きせず、すぐに別れてしまい、それ以来、彼女はできていないらしい。
「え、ふたりとも結婚してるの?」
そいつが訊いてきた。
俺と悪友は顔を見合わせ、「俺たちはちゃんと結婚して子どもいるよ。とっくに実家を出て持ち家も買ったし。キサマと一緒にするな」と言うと、奴は笑って「じゃあ俺と君らとの間に線を引かせてもらう」と言い、サンダルを履いた足で地面の俺と悪友のふたりと自分との間に線を引いた。
いや、俺たちは何にも変わってないから同類だよ、と俺は思った。

少し歩いて川原に移動し、階段に座って川の流れをぼんやり眺めながら世間話をした。
良い年をした大人は、21年ぶりに友達と会ったら飲みに行ったりするのだろうけれど、俺たちはそうじゃない。中学生の頃みたいに、何をするでもなく、バカみたいな話ができれば、それでじゅうぶん。

夕方になり、LINEを交換して、解散した。
空っぽの茶碗のエピソードから、空っぽの茶碗倶楽部を発足したので、またいつか、会おうぜ。

悪友と、奴
川原を守る神

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