読書ノート⑨『国際人権入門』

【感想】SDGs策定の際に、「人権の目標がないので入れたらどうか」という議論があったと聞き(結局全目標を貫く普遍的概念とすることになった)、私は「なぜ人権を改めてゴールにする必要があるのか?経済や政治のゴールを達成すれば自然と達成されていくものではないのか?」と考えていたが、それは甘すぎた。人権がしっかり保障されていると思っていた日本にも、難民の人権をはじめ、ヘイトスピーチ、ジェンダー問題、教育格差など、問題は山積している。特に、これだけ問題になっているジェンダー問題(特にセクシュアルハラスメント)に関する取組みが、男女雇用機会均等法でしかセクハラ対応の措置に言及していないと知って衝撃だった。日本は女性別撤廃条約に加入しているが、加入しているだけで、権利を主張している人へのリアクションが薄いのではないか。この本を読み学んだ最も大切なことは、「『権利』は、「こうしてほしい」という単なる要望ではなく、それに対応することを公権力に義務付ける資格である。その対応をする際に、公権力が上から単に権利を主張しているものを”供与”する態度ではなく、受け取る側が確実に受け取れているのか、漏れはないのか、という受け取る側からの目線で考えることが必要」ということである。

★国際的な人権への取組み
・国連憲章、世界人権宣言、国際人権規約(世界人権宣言を条約の形にしたもの)、そして実際に活動しているのは国連の「人権理事会」というセクション。

★移民の権利
・マクリーン事件の最高裁判決「外国人の基本的人権は、原則守られるが入管法の枠内でのみ守られるもの」という先例を作ってしまった

入管法は国内の法律であり、国際人権規約はそれに優越するのだから、この判決は条約違反といえる

★難民認定
└”難民認定したから難民になる”のではなく、”この人は難民です”と宣言する性格のもの!!!「難民認定されていないから難民としての地位を与えない」というのは難民条約違反といえる

★ヘイトスピーチへの対応も不十分
「ヘイトスピーチ解消法」は、人種差別撤廃条約加入後の初の取組みだったが、ヘイトスピーチをした人に対する罰則規定はなく、解消への取組みの努力義務としている。人種差別撤廃条約への取組みは十分とはいえない。

★教育格差は、国際人権法のどの観点に違反している?
・ブラック奨学金は、教育基本法4条1項「教育上の差別」(経済的地位によって差別されてはいけない)に反している。


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