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BtoB企業が「リードナーチャリング」を効果的に行うための考え方

このnoteではBtoBマーケティングの戦略の立て方から、個別の戦術や施策について順序をたてて解説しています。

こちらのマガジンにまとめていますのでご覧ください。

前回までの記事ではさまざまな「リード獲得」の手法を解説してきました。今回は集めたリード(見込み客)の興味度合いを上げていく、いわゆる「リードナーチャリング」のお話です。

リードナーチャリングとは、見込み客の興味度合いを上げていき、受注に繋げる施策のこと。

リードナーチャリングを実施するためのツールは2014年くらいからたくさん登場しています。いわゆるマーケティングオートメーション(MA)ツールですね。一時期すごく流行りました。

ただ、こうしたツールは正しく使いこなすのがけっこうむずかしいのです。

リードナーチャリングが抱かせる幻想

MAツールを使うと、自社のウェブサイトに来た人がどのページにどれくらい滞在しているのかが全部わかり、それらのデータをスコアリングすれば興味度合いに応じたシナリオを自在につくることができるーー。

そんな考えから、リードナーチャリングは一大ブームになったと記憶しています。

10年ほど前、当時の僕もまさにマーケティング担当になったばかりのタイミングで、「リードナーチャリングという考え方をうまく使えばすごいことが起きるぞ」と期待し、自社の見込み客の興味度合いをMAツールを使ってどんどん上げていこう考えていました。

たとえば、「この事例のページを見たら10点」、「このサービスの価格を見たら50点」、「このページにきたらこのメールを配信しよう」みたいなシナリオをすごく細かく組んでいきました。

2年ほどかけて、じっくりと取り組みましたね。その結果、わかったことは、見込み客の興味度合いはこちらが意図した通りには上がっていかない、ということです。

考えてみれば、当たり前です。

たとえば、どこかの会社のホームページで資料をダウンロードすると必ずメールが送られてきます。

自分がお客様の立場になって考えてみればわかりますが、送られてくるメールによって興味度合いがどんどん上がっていく、なんてことは、別に起きないですよね。

僕自身がMAツールを使ってシナリオを組んだときも、見込み客の興味度合いは思ったよりも上がりませんでした。

すごく膨大な時間とリソースをかけて設計したシナリオとスコアリングをもってしても、高い点数になるユーザーは決まっていました。

それは2種類の人たちでした。誰だと思いますか?

1つは、「すでに営業がキャッチアップできている顧客」です。オフラインでコミュニケーションが取れているので興味度合いは上がって当たり前です。

そしてもう1つのグループは、「競合や調査会社」。こちらのことを調べようとしていろんなページを見ているので、興味度合いが上がっていると判定されるのです。

スコアが高くなる傾向のある会社はそれくらい。

根本的な使い方が間違っているのかもしれない…。僕がそれに気づいたのは、数年間の試行錯誤の後でした。

それでもリードナーチャリングという考え方はまだありますし、「リードナーチャリングをやりたい」という会社も多いです。

やるからにはこの2つの落とし穴をちゃんと知っておく必要があります。

・見込み客の興味度合いはこちらが意図した通りには上がらない
・スコアが高くなる会社は営業がタッチできている顧客、または競合企業。

これを理解したうえで、じゃあリードナーチャリングをどう活用すればいいのかというと、「機会損失を防ぐために」やるべきなのです。

ハウスリストから興味の高い人を探す

リードナーチャリングを実践しようとしている方に、僕がお伝えしているのは、ちょうど検討していたり、ニーズがあるタイミングのお客様をちゃんと捕まえて、「機会損失と不戦敗を防ぐ」ためにやりましょう、ということです。

簡単な図を出しますね。

出典:マーケティングのKPI「売れる仕組み」の新評価軸

この図の中の、上の三角の底辺が毎月の商談件数になります。

営業の人員が2〜3人しかいない会社の場合、そもそも商談件数もそんなにいらないので、マーケティングが取ってきたリードだけで商談ができます。

ただ、営業の人員が10人を超えてくると、予算を増やしたとしても、新規のリードだけでは営業1人あたりの商談数が足りないので、営業が自ら取ってくる必要があります。

そんなときに、まっさらな状態からテレアポをするのはさすがに効率が悪いので、過去に獲得したリストから営業先を創出しましょうね、という点がポイントになります。

そうはいっても、1万件のリストがあったとして、どこのお客さんが営業先にふさわしいのかがわかりません。

そこにMAツールとそこから得られるデータが活きてきます。

上述したようにメールを配信し、その結果をMAツールで計測すると、毎月1送っているメールに反応してくれるリードは一体どこなのか、これまでにウェブサイトに来てくれた会社はどこなのか、がわかるわけです。

僕自身も起業してからハウスリストの再活用をしています。たとえば、弊社の場合はメールの配信数はそんなに多くないですが、メールを送ったデータはちゃんと取っていて、そのデータをもとにアプローチすると反応率がかなり高いです。

つまり、エンゲージメントが高い状態になっているお客さんが、すべてわかっているわけですよね。

MAツールでゼロから自動でお客さんの興味度合いを上げていくのは実際には難しいですが、蓄積したリストの中から、「結果的に興味度合いが高くなっている人は誰か?」という疑問には答えてくれます。

シナリオを最初から精緻につくり込むよりも、現時点ではどのお客さんから声をかけていくのがいいか、という判断の材料に使うくらいがちょうどいいわけです。

たとえば、A社の人は過去に獲得したリードだけど、最近のメールを見てウェブサイトにきたな、ということもわかる。そこで優先順位を上げて営業が再発掘していくプロセスに組む、といった運用が重要になります。

MAツールは無駄というわけではなくて、使いどころを間違えずに、しっかりと営業プロセスに組み込めるならばアリです。

小さく早く立ち上げるのがコツ

「このメールを開封した人には、次にこのメールを送ろう」みたいなシナリオは一旦は忘れていいです。

それよりも、まずは業界や規模別にコンテンツをつくって、それを一斉に配信します。最小限のコスト・労力で、相手に役立つコンテンツをつくり、最低でも月に1回送るところから始める。

とにかく小さく早く立ち上げるのがコツ。

社内に眠っているコンテンツを掘り起こしてもいいです。オウンドメディアに掲載していた記事でもOKです。初月から動きましょう。

最初からシナリオを精緻に考えて構築していこうとすると、開始するまでに3〜4か月はかかってしまいます。

そして実際にやったところで成果に繋がらないことも往々にしてありますから、まずは小さく早く立ち上げましょう、と話しています。

そして長い目で見たときに、MAツールはBtoBマーケティング施策全体に欠かせない効果をもたらしてくれます。

MAツールは「本当の費用対効果」を教えてくれる

BtoBマーケティングをやっていると、以下はよくある事例です。

とある会社は2020年にデジタル広告や展示会などのマーケティング施策のために5,000万円を投じました。しかし、ふたを開けてみると2020年度に受注できたのは4,700万円でした。

ここだけを聞くと、「費用対効果が合わなかったね」と思ってしまいます。

しかし、これは大きな間違いです。

2020年に使った5,000万円分の施策は翌年以降にじわじわと効いてきます。その本当の効果を計測するには、やはりMAツールが必須となります。

次回はこのあたりを踏まえた、リードナーチャリングを実施するときの考え方や心構え、導入に必要な条件について、あらためて書いていきます。

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