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最初に知っておきたいBtoBマーケティング戦略の立て方と「売れる仕組み」のつくり方

こんにちは。株式会社マイノリティの代表の柳澤です。

当社はシード期〜シリーズAのスタートアップを中心にグロース支援をしており、特にBtoB企業のマーケティング戦略づくり、つまりは顧客獲得戦略の立案を専門としています。

このnoteでは多くの企業に求められる「BtoBマーケティング戦略の立て方」について具体的に解説していきます。何本かのシリーズになると思います。

BtoBマーケティングとは「売れる仕組みづくり」


そもそも「BtoBマーケティングとはなにか?」と問われたときに、解釈や定義は人によって異なります。個別の施策をそれぞれ思い浮かべる人もいるでしょう。

ぼくの定義を明らかにしておくと、BtoBマーケティングとは「売れる仕組みづくり」です。

どういうことか説明します。

まず前提として、BtoB商材はマーケティングだけでは売れません。マーケティング施策で獲得したリードに営業担当がアプローチしてようやく売れる見込みが立つのです。

逆の商材が「プロダクトレッドグロース」という領域のプロダクトです。これはプロダクト自体が成長を主導する、という意味あいで、たとえばnoteもそうです。noteの有料記事って、営業担当が商談をしなくても売れていきますよね。

会計ソフトのfreeeも同じです。もちろん、大手企業には営業に出向くと思いますが、個人事業主とか小規模法人はウェブでそのまま申し込んで使っているでしょう。

対面で営業せずお客さんに購入して頂き、事業が成長していくモデルが「プロダクトレッドグロース」です。

BtoB商材のほとんどは最終的に営業担当が商談をしてクロージングする必要があるので、マーケティングから営業まで一気通貫した「売れる仕組みづくり」をしなければいけません。

そう考えると、営業がいちから名刺を獲得してきて、興味があるかどうかを聞いてまわって、すべての商談までやっていくとなると、あまり効率的ではないわけです。

そこにマーケティング施策を取り入れて、ある程度マスにリーチし、営業の前工程を担うことで全体の売上を底上げする。つまり、売れる仕組みをつくるわけです。

BtoBマーケティングの戦略をしっかりと立てて、施策に落とし込んでいくと、営業の生産性や効率を飛躍的に上げられます。たとえば、営業を10〜20人採用して得ようとする成果よりも、BtoBマーケターを1人採用して戦略を立ててから攻めたほうが結果が出ることが多々あります。

ぼくがBtoB向けのSaaSスタートアップの支援に入るときによく見かけるのが、資金調達をしたらすぐに営業をどかっと採用する会社です。

たとえば「いまは営業が5人いるけれど、資金調達をしたから1年以内に10人に増やしたい」とか、「2年以内には4倍にして20人に増やしたい」というケースです。

これは営業を増やせばシンプルに売り上げが増えると思っているからです。

ただ、実際はそんなにうまくいきません。「売れる仕組みづくり」ができていないからですね。

そういった会社の事業計画を見たり、シミュレーションをした売上目標を見たりすると、営業の人数はいまのままでいいから、その分の予算をマーケティングに振り分けた方が目標に最短で到達するだろう、というケースがほとんどです。

しっかりとしたBtoBマーケティングの戦略を立てて、「売れる仕組み」をつくることには、それくらいのインパクトがあるのです。

では実際にどんなことを、どんな手順でやるのか。具体的に説明していきましょう。BtoB企業であればほとんどの会社でつかえるような戦略の型があります。

「まずやるべきこと」は2つ


BtoBマーケティングの戦略立案における最初のステップは2つあります。「競合の調査」と「顧客の調査」です。どちらも欠かせないですし、はじめに取りかかるべきでしょう。

まず競合の調査。ビジネスは基本的にすでに上手くいっている会社と同じことをするのが近道です。伸びている有力な競合企業が何をやっているのかを調べるのは必須となります。そこからたくさんのヒントと学びが得られるはずです。

最近はどこの会社が競合のどの商品を導入しているのか、といった事例も公開されていますので、業界や規模別にマッピングしていくのがおすすめです。そうすると競合企業の強み、得意なカテゴリーが見えてきます。

そして、この競合の調査と並行してやるべきなのが「顧客の調査」。つまり、お客さんのことをよく知る、ということです。

具体的には、お客さんはどうやって自社の商品にたどり着いて、どんな理由で買っているのかという購買プロセスを調査します。難しい言葉でいうと、「ペルソナをつくる」とか「カスタマージャーニーをつくる」とも呼びます。

「うちの商品をどこで見つけましたか?」「どういうきっかけで買うことになったのですか?」顧客インタビューでこうした疑問を聞いて、顧客理解を深めるのです。

これ、実際にやってみるとすごくおもしろいですよ。それに顧客理解が上がるとダイレクトに良い施策につながります。

顧客を理解すると、こんな施策ができる


「お客さんのことを理解するとこんなこともできる」という事例をいくつか紹介しましょう。たとえばキーエンスグッドパッチは深い顧客理解によって、おもしろい施策を展開しています。

まずキーエンスは、製造業を相手にセンサーなどの精密機械を売りたい会社です。

商材はセンサーやマイクロスコープなど。商品そのものの情報を広告で訴えることは当然やっていますが、競合も同じようにやっています。そうすると、GoogleやFacebookに広告を出しても、広告費の削り合いになってしまいます。

Googleはキーワードに対して高く入札した会社のほうの広告を出すので、1件の問い合わせを得るための広告費も高騰してくるわけです。

では、キーエンスがどうやっているのかというと、ここで「顧客理解をする」という話につながります。

「センサーや顕微鏡、マイクロスコープを導入した会社は、どうやって商品の購入に至ったんだろう?」という顧客分析をとことんやります。

その結果、どうやら政府の「研究助成金」というものを申請して買うことが多い、ということを突き止めました。

それがわかったら、「どうやったら研究助成金を効率的に得られるのか」という研究助成金の獲得のノウハウ集みたいなコンテンツをつくり、それを広告を使って広めたんです。もちろんそのコンテンツを詳しく見るには名刺情報の登録が必要になります。

すごくクリエイティブな発想ですよね。

同じことをやっている競合はまずいないわけですから、広告費も安く、見込み客の名刺情報(リード)を効率的に手に入れられるわけです。

それから、Goodpatch。プロダクト開発やUXデザインを提供しているので、アプリやウェブサイトの開発案件を獲得したいわけですけれど、そういう競合は当然たくさんいます。

そこでどうするか。こういうときこそ、顧客の理解が効いてきます。

「開発案件を発注したいお客さんはどういうことに悩んでいるのか?」をとことん考えてみました。すると開発は1回の発注で数千万円かかるものですし、はじめは「どういうパートナーを選べばいいんだろう?」ということが不安なはずです。

そこでGoodpatchは、「パートナーを選定するためのガイドブック」みたいなノウハウ集のコンテンツを制作しました。顧客の思考をさかのぼることで、ひとつ上のレイヤーでお客さんにリーチできるわけです。

普通の会社は受注につなげるための情報ばかり出しがちなんですが、商品やサービスをストレートに紹介するだけでは埋もれてしまいます。

より深いところで顧客を理解していると、「お客さんが抱えている課題を解決をする」コンテンツを出していく、という方法もあるわけです。

見込み客の課題解決の役に立つコンテンツ例

顧客インタビューをしてちゃんと情報収集をしたり、あるいはそういう情報はお客さんと何百回も話している営業が持っていることが多いので、社内でしっかりと情報を集約する仕組みが必要です。

このようなコンテンツを作れる会社は、顧客理解も深いので提供しているサービスの品質も高いことが多いです。センサーを買うならキーエンス、プロダクト開発を検討しているならグッドパッチをお勧めします。

では次のステップです。

競合調査と同時に顧客調査をしたら、そのあとはどうするか。

「やらないことを決める」こそが最大の戦略


競合調査をすると、「競合はこうやって上手くいっている」という理解が得られます。それから、顧客インタビューや顧客調査をしていくと、「こういうコンテンツが顧客に刺さりそうだ」みたいなこともわかってくる。

ただ、競合と同じターゲットに対して同じようなことをやっても、結局は資本力や先行者有意があるところが勝つ確率のほうが高いです。

そこで重要になってくることが、「ターゲットを絞り込む」ことです。これはつまり、「やらない領域を決める」ことでもあります。

たとえば、「うちはターゲットを製造業に絞り込みました」という会社があったとしましょう。じつはこれだとまだ甘いです。なぜなら製造業は、業界でいうと相当大きな分類です。

絞り込むとしたら、「製造業の中の輸送機械の自動車部品製造」とか、「自動車関連の部品」というところまで絞る必要があります。

それでもまだ自動車関連の部品をつくっている会社はたくさんあります。その場合、「自動車関連の部品をつくっていて、かつ売上が50億から100億の会社」とか。さらに企業規模で絞り込むことによって、エッジがきいたマーケティングコンテンツをつくることができるんです。

競合調査の結果、「この商品・サービスは自動車業界に売れるんだな」ということがわかったときは、同じように自動車を攻めるのではなく自動車の中の自動車部品に絞る、とか、自動車の中でも規模を狭めて、大手、中堅、中小に絞る、などのカスタマイズが必要です。

ターゲットを狭めることによってそこの領域での勝率を上げるのです。

ここをしっかりと決めきらないとその後の営業効率にずっと関わってきますので、このプロセスはかなり重要です。スタートアップの中でも特に競合が多い事業の場合、これをやらないと絶対に勝てないです。

これはtoCビジネスですが、Yahoo!オークションとメルカリの事例がすごくわかりやすいと思います。

当時、Yahoo!オークション一強だった中古品売買の領域に、メルカリは同じ中古品売買のフリーマーケットのプロダクトで挑んでいったわけですが、メルカリの場合は最初からPC版サービスを捨てていました。

その代わり、スマホだけに特化していました。そういうふうに、相手の得意分野を「捨てる」こと、あれもこれもやらないことがすごく重要なのです。

やらないことを決めることは、まさに不要な戦いを略すこと。つまりは戦略そのものですね。

「競合と顧客を理解し、やることを絞る、やらないことを決める」

これが戦略を立てる大事なプロセスです。



ここまで見えてきたら、次は「人」の話です。売れる仕組みをつくるためには、それに適したチーム編成を考える必要があります。

次回の記事は「BtoBマーケティング戦略と、マーケ・営業のチーム編成の考え方」をお届けします。

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