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その23【番外編:若者達のクルマ熱】

東日本の大震災の後に【ランチアY(イプシロン)】を手放してから9年間、文字通りの自転車操業でクルマのない生活をしてきた。玩具としてのクルマこそあっても悪くはない。しかしながら道具としてのクルマは三島の街に住む限り、僕の場合は不要だ。

この間、人生にも色々な変化があって生活のスタイルも変わらざるを得なかった。妻を若くして亡くしたあとに戻った実家は、伊豆の韮山というクルマがなくともなんとかなる程度の田舎なので、相変わらずクルマは所有せずロードバイクで通勤していたし、どうしても使いたい用事の際には家の軽自動車を借りていた。

そんな折の2020年3月4日《一般社団法人・CLUB SOBASO》を発足させた。これは趣味を通じたコミュニティ形成とそこに集まった人々の遊びを通じての社会貢献を目指す、という団体である。自転車部・ランニング部・オートバイ部・自動車部という4つの大人の部活動と、それらを組み合わせたり関連づけたりする中で生まれる新たな遊びを楽しみつつ、結果、世のため人のためになってしまうという壮大な計画で、現在(2021年)のところ里山整備活動をはじめ、いくつかの活動がこのコロナ禍にあって出来上がりつつある。

後に行った【CLUB SOBASO】の活動【クルマミーティング】というミニイベントもその一つだ。クルマに関心ある仲間達が集まって野点でドリップコーヒーを楽しみながらクルマ談義に興ずる という、なんともゆる〜い企画。

さて、そこに集まった仲間の中に20〜30代の若者達がいる。このクルマ離れが叫ばれて久しい世相にあって、クルマに対して情熱を持った彼等だ。その一人、手塚君はこうだった。

「宗さんが『いつかフェラーリに乗る』って【わらしべ長者物語】みたいなことを言い出したじゃないですか、それなら僕が『ミニクーパー乗りたい』くらい言ってもいいだろうって周囲に触れ回ってたら、出物の話が回ってきてホントに手に出来たんですよ!」。

やはり夢は語るべし。以前【夢を語ろう】という記事にそんなことも書いた。

そして、自転車仲間の坂本君は友人と共に蕎麦宗へ【Z32】で蕎麦を食べに乗り付けてくれた。こうとなれば元々はクルマ好きだ。血が騒がないわけがない。

するとBMW135に乗り代えた蕎麦宗スタッフのyuto君が言った。

「宗さん、もし乗るとしたら…、あ、買うとかは置いておいて、何か乗りたいクルマってあります?」

僕は即答した。

「アルファロメオスパイダーだね、1995年にデビューした916。エンリコフミアがデザインした最高傑作さ!。前に乗っていたランチアYも彼の作品だけど、その二つがクルマのデザインの中で最高位にあるって思ってる。ちょうど自分が社会人になったばかりの時で、実際に買おうと静岡の*イーグルオートや*アレーゼにも行ったことあるくらいで…」

僕は久し振りにクルマに対して熱く語っている自分に気がついた。若者達のクルマ熱が、僕の心の奥底で冷凍保存されていたマンモスを溶かして眠りから目を覚ませ、牙を剥き鼻をもたげて暴れだしたようだった。

ふと、僕は思った。確かに妻と二人で話していた通りに【ランチアΥ】は妻の、僕等二人の暮らしにとっては終のクルマとなってしまった。残念ではある。でも、ま一人残された僕の人生はまだ続いている。やがて内燃機関の自動車は、そう遠くないうちに終焉を迎えるだろう。最後にもう一台乗っても良いのかもしれない。そう、僕自身にとっての終のクルマを。

降って湧いたようなクルマ熱、いや《アルファロメオ916スパイダー》熱に促されて、僕は物色を始めた。Yuto君にあげたアルファロメオスパイダーに関する雑誌の切り抜き集を借りて再び読み込んだ。インターネットの閲覧が急に増えた。友人知人やお客さんに話し始めた。まるで夢を語るように。すると、やはり不思議なことに《あちら》からやってくるものだ。その話を持ってきたのは【navigatione】をやっている弟・ユースケだった。

「最近知り合った人がさ、このクルマ手放したいらしいんだけど…。これっておにいの欲しいって言ってたヤツじゃね!!」

見せられたFacebookの写真は確かに《アルファロメオ916スパイダー》だった。

*イーグルオート…静岡にあるイタリア車の老舗販売店

*アレーゼ…アルファロメオの正規ディーラー


#クルマ好きな若者 #club_sobaso #ミニクーパー #夢を語る #偶然と必然

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