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《SOBASO ORIGINAL SOBA ALE》物語 その2【初デートと蕎麦】

2020年、地域は限定的ではあるが、三島の飲食店と反射炉ビヤとのコラボレーション企画が話題となっていた。全国にその名を知られる《Bar YUMOTO》や《フレンチLa table de Kudo》といった、ジャンルもまちまちな名店のそれぞれを表現した個性豊かなビールが、三島の酒店《Luca Wine》がタクトを振るう形で反射炉ビヤによって醸された。僕は半分くらい羨ましい感情を抱きながら、傍目に眺めていただけだった。で、それらを創ったのが件の若きカリスマ醸造長・山田君である。

その年の秋のこと。山田君が蕎麦宗に来店してくれた。稲村君経由で面識があったので、カウンター越しの気楽な会話に挟んで彼が言う。

「宗さん、僕が蕎麦宗に来るの初めてじゃないんですよ」

「ほう、そうなの!?」

「実は前回は彼女と初デートで…」

その言葉に呼び起こされたシナプスの連鎖で僕は目を見開いた。山田君があの彼か…!。記憶を辿ろう。あれは確か2年ほど前だ。付き合って間もないという若い二人が来店してくれたことがあった。蕎麦宗の客層は比較的高い年齢層なので、20代のカップルがカウンターに並ぶことは少ない。それに加えて

「今回、彼女との初デートで蕎麦宗さんに来ました」

と、聞けばなおのことだ。だから、それ故によく覚えていた。
そして、僕はその時彼らに言った言葉を直ぐに思い出した。

「初デートで蕎麦屋に、ましてやウチに来るなんて…

という僕の言葉に山田君が重ねた。

「…『そんなの、この恋、上手くゆくに決まってるじゃねーか』って宗さんに言われたんです」

自分が発した言葉を相手がよく覚えているということは、実に気恥ずかしいものだ。でも、僕は嬉しくなった。そして山田君がさらに続けた。

「宗さんが言ってくれたようにその後、この恋…彼女と上手く行きまして…それで冬の頃に結婚したんです」

お〜、下手すれば親子ほども歳下の青年からそう告げられると、なんだか面映く、まるで仲人になったような気分だった。彼はその言葉を、僕に対するリスペクトと共に覚えてくれたらしい。ますます嬉しい。こうして僕らは一気に近づいた。

「山田君さっ、《Ber YUMOTO》とかがコラボビール出したでしょ。あれってさ、ウチも出来ないかな」

僕は前のめりになって、例のもう半分の羨みをキッカケにして、彼に提案した。

「少し前に伊豆長岡駅のスタンドで『焙じ茶ビール』飲んだんだ。その時に蕎麦茶を使って同じように作ったら凄く美味しいんじゃないかなって、降ってきたんだよ!で、作れないかなって思ってさ」

「いいですね、ぜひやりましょう」

山田君も一つ返事をくれた。

「ただ、僕の一存ではできないので会社に提案してみます」

佑介を通じて稲村君にも伝えた。話はトントン拍子に進んだ。会社からのGoサインも出た。2020年11月、反射炉ビヤ×蕎麦宗の異色なコラボレーションが実現することになった。

蕎麦宗は、僕は、これまでほとんど他人の企画や協調しての活動をして来なかった。生来面倒臭がりな上に、やり出したら凝り性だから、きっと周りは迷惑極まりないことが分かっているからだ。それを超えてこの企画が動き出したのは、佑介・navigzinoneによる文字通りの道標であり、稲村君や山田君といった若者との関わりのおかげだ。

モノづくりは楽しい。そして、いざやるとなったら一瞬でイメージは湧くものだ。そのイメージに向かってどれだけ妥協せずに近づいて行けるのか。ワクワクが溢れてくるのを抑えつつも、僕らと、このプロジェクトは動き出した。つづく

#蕎麦宗 #反射炉ビヤ #コラボレーション #BarYUMOTO #La table de Kudo  #Luca Wine

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