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「苦しむこと、悩むことは、悪いことじゃない」――就職支援センターに勤める野尻端紀さんに相愛大学で学んだことを聞いてみた

今回は相愛大学を卒業し、今は同大学の就職支援センターのキャリアで働く野尻端紀(のじりみずき)さん。相愛大学に深くかかわる野尻さんに色々とお話を伺わせていただきました。

生きる指針となる先生方と出会えた

ー今のお仕事や取り組みなどについて教えてください

今は学生支援センターのキャリアで働いていて、学生の就職活動の相談やキャリア支援の講座を開催したり、電話対応や求人票の入力が主な業務になります。

ー相愛大学に進学したきっかけは何ですか?

高校生の時に大学進学を考え、先生に相談した際に何個か教えて頂いたうちの1つが相愛大学でした。それをきっかけにオープンキャンパスに行ったのですが、雰囲気が良かったので相愛大学に進学を決めました。

ー大学生活の1番の思い出は何ですか?

1番の思い出…いっぱいあって難しいですね。この宗教社会活動論の授業を私も受けていたのですが、フィールドワークに行ったり、最後の試験のあとに先生も一緒にみんなで焼き肉に行きました。そこでみんなとワイワイしながらそのときに悩んでいたことを語り合ったのも良い思い出の一つです。

ー相愛大学で今に活かされているなと感じる講義や学びはありますか?

私は仏教文化を専攻しているのですが、近松先生、赤井先生、直林先生は私の中で影響が大きい方たちです。この先生方の講義が、今の自分に一番活きているなと思っています。浄土真宗では「阿弥陀様を信じる心」を信心と言うのですが、その信心をとても大切にされている先生方で、授業の内容も単に知識を伝えるだけでなく、有難い法話を聞いているように感じられるものでした。こんなに優しくて温かくて、心とい言うものを大事にしている人がいる中で、自分ってすごく自分勝手というか、おこがましい、横柄な態度を取っていたなと思うところがあったんです。そういうところを日々改める時に、先生方をお手本みたいに思っていて、自分が生きる上で指針であり、自分を戒めてくれる存在となっています。それが相愛大学で学んできた中で、最も活かされている部分かなと思います。

ー建学の精神「當相敬愛」についてどう思いますか?

私はキャリアの仕事をする中で、企業理念は大切なものだと感じています。理にかなっているところもあれば、なかにはただ掲げているだけで活かされていない所もあるように思うんです。でも相愛大学は建学の精神である「當相敬愛」が示すように、お互いを大事にしあうことが出来る場所になっていて、理念に適った学校になっているんです。そしてなぜ「當相敬愛」が実現できているのかを考えると、大阪の中でも都会から少し離れた自然の雰囲気だったりとか、授業が少人数制であることが大きな理由になっていると思います。少人数制だとお互いに意見を発言できる場になるし、傾聴しようと思える。このような点から「當相敬愛」の精神と学校の雰囲気が結びつくのではないかなと思います。

ーもし大学生に戻れるなら何をしたいですか?

心理学をもう少し学んでおきたかったですね。私は、在学中は仏教文化専攻に入っていて、主に「なぜ宗教間で対立が起きるのか」について取り組み、学んでいました。たのですが、宗教というものが人の心にどう作用しているのか、つまり宗教を読み解く上での補助線として心理学を学んでいたら、もっと違う観点からも掘り下げることが出来たのではないかと思います。ただ、それに気づいたのは3回生の時に思いました。で、ももっと早くから勉強していればと後悔しましたその時には手遅れでした…。

豊かさを考えないというのは、既に豊かなのかもしれない

ーキャリアの面からみて今後どんなことに取り組んでいきたいですか?

キャリアとしては今、現在音楽学部の担当を持っていて、先輩と一緒に仕事をしているので、一人でもやっていけるようになりたいです。あと支援センター全体のこととかを把握できるようにしたい。そしてこのコロナ禍で他の部署とのかかわりも減ったので、もう少し学園全体の状況も把握していきたいですね。

ー直接交流する機会が減ってしまいましたよね…。

そうですね…。普段だったら仕事終わりに飲みに行ったりすることもありますし、歓迎会や忘年会もあるのですがなくなってしまったので…。行きたい気持ちが募るばかりです。
あとは積極的に資格を取りたいですね。英語を話せるようになりたいのと、学生対応以外は常にパソコン作業ですし、学生の情報も入力が必要になってくるのでパソコンのスキルを上げたいです。

ー幸せや豊かさについてどう思われますか?

平等じゃ無いから難しいですね。生まれてきた環境とかは人それぞれ全然違うので、結局は自分次第だと思います。例えば、幸せじゃ無いと思っている時に「何で幸せじゃ無いんだろう」「何したら幸せになれるだろう」って考えて、それを行動出来たら幸せには近づけると思います。また、幸せを自覚することも大事ですよね。でも「幸せって何か」という質問は、本当に難しいですよね。逆にあなたたちにとっての幸せや豊かさってなんですか?

ーそう言われてみれば考えたこともなかったです…。

豊かさを考えないというのは、既に豊かなのかもしれないですね。学びたいと思った時に大学にも進学できて、ある程度の生きる基準を満たしているから、豊かさについて考えないんじゃないでしょうか。
実は私2回生の頃まで「なんで生きているんだろう」って疑問に感じて、何か嫌なことがあるわけでもなく、漠然と「死にたい」と思いながら生きていたんです。人生楽しいことだけじゃなくて苦しいこともある、それなら早く死にたいなって。でも宗教を学んでいく中で「死んで終わりじゃない」と思って。「死」や「死んでいった人」について、自分なりに思いを馳せたり悩んだりすることで気づかされることもあると思うんです。苦しむことや悩むことは悪いことではない。そう思えるようになったのは浄土真宗の教えや信心を持った先生方の授業のおかげです。今は「いつ死んでもいいように生きよう」と考えるようになりました。

ー最後に自分自身の経験のもとに大学生の皆さんにメッセージをお願いいたします。

キャリアの立場で言えば、「就活するなら早いうちから」ということです。就活をしている人って本気で取り組んでいるんです。だからその子に負けないように、それこそ来年はコロナも深刻化していって、採用枠が減ったりすることもあるので、そのことも考えて早く行動するべきだと思います。もし自分が何になりたいのか不鮮明でも、今のうちに自己分析をおこなったり、企業研究をして将来どんな人生を歩みたいかを考えることは重要です。逆算して就活に取り組むのが大事だと思います。
もうひとつのメッセージは、自分のぶれない価値観、軸というものをしっかり持ってほしいです。それが定まっていれば就活にも役に立つし、自分が何者なのか分かるんです。自分のことは自分が一番分かっていると思いがちですが、私は宗教を学んでいくうちに「自分」について知らないことばかりだと気づきました。知っていることは砂漠の砂一粒ほど…。みたいな感覚でした。「まだ私の知らない自分がある」ということに気づいたら楽しくなると思うし、またそれを知ることで自分の軸が定まっていくと思います。それを知るためには色々な人と関わって、色々なことを体験することが良いと思います。皆さんにもそこで気づいた自分の価値観や軸を大切にしてほしいです。

野尻さん貴重なインタビュー本当にありがとうございました。

このマガジンについて

このマガジンは、2020年度相愛大学「宗教社会活動論」を受講する学生が制作したインタビュー記事を掲載したものです。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、来春卒業予定で就職を希望する大学生の内定率が、前年度と比べて急落していることが話題となっています。そのような厳しい時代の中で、「何のために働くのか」を考え、自身にとっての豊かさを見つめることが重要なのではないかと考えています。そうしたときに「當相敬愛」を建学の精神とする相愛大学の学びや仏教思想にヒントがあるようにも感じます。そこで、相愛大学を卒業された先輩たちに、卒業後の人生に、相愛大学の学びがどのように影響をもたらしているのかについてお話を伺い、相愛大学の学びの豊かさについて広く共有できればと思っています。(担当講師:釋大智|霍野廣由)

インタビュー 小林七海(人文学部3回生)、浅浦澪(人文学部3回生)

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