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【スタートアップの採用戦略】なぜ“1人目人事”には事業経験が必要なのか?

 こんにちは、金子健人です!
 今回のnoteでは「スタートアップ・ベンチャー企業の人事・採用戦略」について考えていきます。

 成長段階の企業で大きな悩みとなるのが、採用領域です。
もちろん「人の採用が出来ない」も課題になると思うのですが、それ以上に「誰が”1人目人事”(その企業においての、初めての人事専任者のことです)として採用を担当するか」は大きな課題ではないでしょうか。
 まだまだメンバーも少ない組織のフェーズでは、人材一人ひとりの動きが会社に大きな影響を与えるため、採用の失敗は企業成長のスピードを鈍化させます。
だからこそ、「その会社に必要な“人材”を見極める能力」のある人が採用担当をすることがめちゃくちゃ大事になってくると思います。

 toridoriには、実は3年前まで人事・採用領域の専任担当者がいませんでした。
”1人目人事”として人事専任者を配置したのは、創業から5年目となる2020年8月、社名をtoridoriに変更したタイミングです。それまでは、経営陣や各部門の事業部長などが採用を担当し、人事業務はバックオフィスで分担して行っていました。
正直、他社さんと比べてもかなり遅めだとは思うのですが、僕は戦略的に“1人目人事”をそのタイミングまで置かないようにしていました。

 何故そのタイミングだったのかというと、会社の事業展開や指針が一定固まり、toridoriがどういう会社かの輪郭が見えてくるまでは、人事専任者を置いても、「会社に必要な“人材”の採用」にコミットしてもらうことが出来ないと考えていたからです。
 結果としては、”1人目人事”を置いてからtoridoriの採用は大きく変化し、エントリー数も10倍まで増えましたし、何より成長意欲が高くて自社にフィットするメンバーがたくさんジョインするようになりました。

 このtoridoriでの経験から僕が強く感じていることは、「“1人目人事”に最も必要なのは、事業経験(ビジネスサイドで仕事をした経験)・事業理解だ」ということです。
ということで、スタートアップ/ベンチャー企業の人事・採用担当者に事業経験が必要な理由と“1人目人事”の見つけ方について、僕の考えを書いていこうと思います。


“1人目人事”が事業経験者であるべき6つの理由

 僕が、スタートアップの人事・採用担当者に事業経験を求めた方がいいと考えている理由は、主に下記の6つです。

1.ビジネス視点での採用ができる
2.多様なスキルセットを有している
3.周りを巻き込む力がある
4.事業戦略とリンクした人事管理ができる
5.変化に柔軟な組織づくりができる
6.批評的思考で選考ができる

ここから、この6つの要素についてご紹介していきます。

1. ビジネス視点での採用ができる

 スタートアップの採用において大事なのは、(入社後の教育環境整備ももちろん大事ではありますが)「採用した人材が、いかに速く立ち上がり、自社の事業にコミットしてくれるか」というスピード感です。
 この、自社事業へのコミット力の有無を採用選考プロセスの中で判断するには、選考する側がビジネスの視点を持っているかが肝となります。
 事業経験のある採用担当者は、事業のKPI、戦略、売上構造への理解の解像度が高いため、ビジネス視点で最も適切な人材を選考することが得意です。

 例えばですが…よく求人票で見かける「コミュニケーション能力の高い方」というようなふわっとしたキーワードがあります。
しかし実際には、営業に求められるコミュニケーション能力とエンジニアに求められるコミュニケーション能力は全く違いますし、その企業の風土によって必要とされるコミュニケーション能力にはさまざまな種類があります。
 ここで、事業経験者であれば、自社の要件・必要職種で求められるコミュニケーション能力とはどのようなものかを即座に理解し、選考基準に落とし込むことができます。

 また、経営層との交渉スキルが身についていることが多いのも、事業経験のある採用担当者の強みだと思います。
採用が独り歩きするのではなく、経営陣としっかり対話し、経営陣が見据える会社のビジョンと連動するような採用活動を進めることが出来るのではないでしょうか。

2.多様なスキルセットを有している

 スタートアップのビジネスサイドでは、一つの業務を突き詰めていくよりもマルチタスクを求められがちなため、事業経験者は結果的に多様なスキルセットを有していることが多いです。
 採用担当者自身にスキルセットがあればあるほど、専門性の高い職種の選考をしやすくなると僕は考えています。候補者の実務能力や価値を、自らの経験やスキルセットと比較して相対的に見定めることができるからです。

 toridoriの1人目人事にも、営業、クリエイティブ、マーケティング、企画、新規事業開発、ディレクション、プロダクトマネジメント、事務など幅広いスキルを持つ人材を選びました。その理由は、toridoriで今後採っていきたい人材のスキルを一番確度高くジャッジできると考えたからです。

 また、これは少し余談となりますが…
エンジニアの選考には、必ず自社のエンジニアが関わるべきだと僕は考えています。ビジネスサイド経験者や人事担当者だけでエンジニアの能力を推し量るのはリスクが高いからです。エンジニアに採用活動にジョインしてもらうと、専門的な知見やスキルセットを持って選考に臨めるだけでなく、その候補者が自社のプロダクトや開発組織に与える影響を総合的に評価することが出来るようになります。

3. 周りを巻き込む力がある

 事業経験では、ステークホルダーを巻き込む力が培われることが多いと思います。ビジネスは、事業に必要な人を見極め、対話し、適切な相手に業務を依頼しないと進まないからです。

 この、人を巻き込む力は採用・人事にも大きく役立ちます。
採用とは、社内のメンバーとの連携や社外のエージェントや求人媒体の担当者と適切に連携し、推進していく仕事なので、人を巻き込む力が高ければ高いほど、スムーズに採用を進めることができるんです。
 例えば、新規事業の立ち上げフェーズで人材が必要となった時、周りを巻き込む力がある事業経験者は「採用」と「ジョブローテーション」の両面で、可能性を探ることができます。事業の成功に必要な人材要件を社内でとりまとめ、社外のエージェントや媒体へのオンボーディングを行いつつ、社内の他部署からのジョブローテーションで効率的に必要な人材をアサインできないかを各事業部と対話する…みたいな仕事の進め方が、事業経験のある採用担当者は得意です。

 人を巻き込む力を事業で培っていると、「最適な人材に最適な場所で活躍してもらう」という目的に、ステークホルダーと共に最短距離で到達することができます。

4. 事業戦略とリンクした人事管理ができる

 事業経験者は、企業の成長戦略や事業戦略を理解することに長けているため、そこに人事戦略をリンクさせることが上手な傾向があります。
 最初にも書いた通り、スタートアップでの採用は、人材一人ひとりの動きが会社に大きな影響を与えるので、採用する人材のレベルだけではなく採用のタイミング・計画性も問われます。
 事業経験があると、「事業戦略上、どういう人材がどのタイミングで必要なのか」の理解が速いので、それに合わせて人事計画を適切に立てて、募集から内定までのリードタイムを加味しながら採用を進めることができます。
 また、事業経験がある人事担当者は「その部署でどういう人材が伸びるか」の勘所も優れていることが多いです。
toridoriの人事チームも、中長期の企業の成長戦略を理解した上で人材育成計画を立て、3年後・5年後の会社に必要なスキルセットを持つメンバーをたくさん育成してくれています。

5. 変化に柔軟な組織づくりができる

 (ゼネラリスト志向の)事業経験者は、変化への対応に強いです。
スタートアップは特に、事業の成長や市場環境に合わせて、日々組織が大きく変動するものなので、その変化に合わせて採用戦略もアップデートしていく必要があります。
 事業経験のある人事・採用担当者は、ビジネスサイドでの変化に慣れているので、日々の変化にフレキシブルに対応して採用活動を推進してくれます。
 また、時には、大きな変化に耐えうる組織編制やチームビルディングについて、事業部や経営陣に提案し、社内組織そのものをリードしていく存在にもなってくれる可能性があります。

6. 批評的思考で選考ができる

 事業を進めるとは、日々、様々な問題と直面することだと思います。だから、事業経験者には、課題解決能力とリスクヘッジ能力が身につくし、それらの能力をつかさどる批評的思考が根付いていると僕は考えています。

 採用において、一人一人の候補者をポジティブに評価することと同じくらい、冷静な批評的思考で評価することは大事だと思います。
候補者の経歴やスキルが本当に自社にとって価値があるものなのか、他社で大きな実績を出していたとしても自社で同様に活躍できるのか、カルチャーフィットするか…などなど、様々な観点から批評的な目線で考え、冷静に判断していくスキルが、事業経験のある採用担当者には身についていることが多いです。


“1人目人事”、採用すべきか、登用すべきか

 ここまで書いてきた通り、僕は“1人目人事”には事業経験があった方がよいと考えているのですが、事業経験のある人事担当者を新規採用すべきか、社内から登用すべきかというご相談をたまにスタートアップの方からも受けます。

 あくまで、僕個人としての意見となりますが…可能であればスタートアップの“1人目人事”は、社内でのジョブローテーションで登用した方がいいと考えています。理由は、3つあります。

1.社内事業を経験しているメンバーに採用や人事領域の知見をつけるのと、新規採用の人事担当者に社内事業を理解してもらうのでは、前者の方が速い
→人事・採用領域のスペシャリストをアドバイザーとして外部から招へいして“1人目人事”へのインプットを増やすなどの施策を打つことで、事業経験者は驚くほどのスピードで人事に成長してくれると思っています。

2.会社の魅力、事業の強み、今後の課題など候補者が知りたいことを、身をもってプレゼンできる
→社内で働く人の生の声を聴きたいと思っている候補者はとても多いです。採用サイトや面接での逆質問で、自分の事業での経験を生かしながら、会社のことを好きになってもらえるようなプレゼンができる”1人目人事”がいると、候補者の意向は大きく上がります。

3.社内でのリレーション構築が既に出来ているため、人事・採用を手伝ってくれるメンバーが増える
→これは予想外の出来事でしたが、事業経験での信頼関係が出来ているメンバーを人事に登用すると、「〇〇さんが頑張ってるから自分もサポートしたい」と手を挙げ、採用を自分事化するメンバーが増えます。
採用成功には事業部側からの協力が不可欠なので、このような好循環を生むためにも社内人材の登用は有効です。

 toridoriの実例でいうと、“1人目人事”は社内事業経験者でした。そして、その後も基本的には社内からのジョブローテーションで人事を登用しています。
直近では、「toridoriで人事として働きたい」とエントリーしてきた候補者に、「まずはビジネスサイドで会社のことをよく知って欲しい」と打診し、事業部のディレクターとしてジョインしてもらうことになりました。
このメンバーには事業部での経験を積み、toridoriへの理解が深まった1年弱が経ったタイミングで、人事・採用担当者へのジョブローテーションをしてもらいました。今では誰よりも事業部の今の課題を理解し、解決のために自走できる採用担当者に成長してくれています。


最後に

 役割分担が明確化され、スペシャリストとしての能力を求められる大企業の人事担当者と異なり、スタートアップ・ベンチャー企業の”1人目人事”にはマルチタスクとビジネスへの解像度が求められます。
 直近で「今必要な人材の採用」をするだけではなく、経営陣や事業責任者と同じ視座で「会社の未来に必要な人材採用・育成」にコミットできる”1人目人事”を探していきましょう!


 以上、「スタートアップの採用戦略」についてお話しました。
今回も、もし参考になったらSNSシェアやスキ!ボタンでの拡散などをいただければ大変嬉しいです!

 スタートアップでは、メンバー一人ひとりの採用が企業成長の礎になります。だからこそ、企業は、“1人目人事”の人選に本気で挑むべきだと思います。
 どうやって”1人目人事”を見つけていくか等、採用戦略のご相談も個人的にお受けしてますので、お気軽にメールやDMよりご連絡ください!

Mail:k_kaneko@toridori.co.jp
Twitter(X):https://twitter.com/kaneko_knt

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