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「ザ・クリエイター/創造者」に対する怒り

つい先日の金曜レイトショーで「THE CREATOR/創造者」を見た。
あまりに視聴者をバカにした作りに怒りが収まらず、なのに「物語がおもしろい!」というレビューが少なからず見られたため、一度アウトプットしないと自分を抑えられないと判断して本NOTEに感情を叩きつけている。

この映画は、全体として、とにかくその場その場のビジュアルだけを重視しており、物語が成り立っていない。まるでCGアーティストのポートフォリオのようだ。ストーリーに一本太い軸がないものだから、キャラクターたちも「撮りたいシーン」に振り回されてしまって、それぞれの確固とした信念や行動指針というものがない。だから片っ端から全員が無能に見えるし、信念を打ち砕かれるようなシーンも作れない。
キャラクターがやっていることに共感できないし理念も理解できない(無い)から感情移入することもできず、かといって頭を空っぽにして楽しめるほどド派手なアクションシーンが続くわけでもない。
さらに悪いことに、シリアスなシーンで狙いすましたように謎日本語や謎ユーモアをぶつけてくるため、もう意図して映画に没入できないように作っているんじゃないかと疑いたくなる始末だ。
結局、私は腰を据える場所を見つけられないままスタッフロールにたどり着いてしまった。特に映画館においては「スタッフロールの余韻まで含めて映画だ」と思ってはいるが、さすがに席を立ちそうになった。立たなかったが。

それなのに、映画レビューサイトやX(Twitter!)で「ザ・クリエイター」を調べてみると、ある程度「物語が良かった!」「感動した!」「考えさせられた!」「最高のSFだ!」「インターステラーに並ぶ名作だ!」との評価を受けている様子が見られる。耐えられない

「それは言いがかりだろ」と言われてしまうような細かいところもある程度含まれると思われるが、全体を通して、視聴しながら(あるいは振り返ってみて)思ったおかしい部分を、作中の時系列順に書いた。一度劇場で見ただけのものを思い出しながら書いたので、間違っている部分もあるかもしれない。
THE CREATORを楽しめた人は本NOTEを読むべきではない。

ちなみに俳優・デザイナー・CG屋は最高の仕事をしている。
曲にはハンス・ジマーがいるのに全く印象に残らなかった。
脚本がひどすぎると、良い曲を楽しむことすらできないのだというのは衝撃だった。

脚本がひどすぎると良い曲も楽しめなくなるというよりは、脚本があまりに大雑把だった結果、ハンス・ジマーもテーマを持った曲を作れなかったのではないだろうか?

2023/10/31追記部分



ここからネタバレ





①序章

米軍の特殊部隊が、ジョシュアの潜むニューアジアに潜入するシーン。謎の青い光の線と共に侵攻する絵面は、この時点ではまだNOMADからのスキャナーだと分かっていないこともあり、いかにもかっこいい。ジョシュア側の描写も普通にハラハラでき、何が起きるのか先が気になる段階が2~3分程度は続く。
しかし特殊部隊はただの一般村人と一般シミュラントに簡単に見つかり、襲われ、普通に負け、ジョシュアの前に一人連れ出されてくる。なんと無能揃いな部隊か。
あとから考えれば、スキャナーレーザーがあの角度で特殊部隊の周りをスキャンしていたのだから、村の直上にはその時点でNOMADがいたはずである。以降の描写を見るに、ニューアジアの人々にとってNOMADは脅威であるというのは共通見解であるから、NOMADが直上にいるという時点で村人は警戒態勢に入っただろう。しかも『ここに侵入者がいるよ!』とスキャナを飛ばしてくれているのだから、そんなもの見つかるに決まっている。
(ミサイル爆撃が来るまでにNOMADが近づいてくる描写はあっただろうか?あったならば、直上にNOMADがいるから村人が騒ぐということもないかもしれないが、スキャナーレーザーの角度との矛盾が発生する。)
この時点で既に、ひと目見た時にかっこいいだけの画作りが第一の作品であることが分かる人には分かってしまうかもしれない。私はまだこの時点では騙されていた。何も考えなければ確かにかっこよかったもん。
なお直後、心変わりを疑われたスパイどころか送り込んだばかりの特殊部隊がまだそこにいるにも関わらずNOMADからのミサイル投下がほとんど即座に実行される。直撃を狙ったのは既に船上にいたニューアジアの人々に向けてではあったが、爆発規模から見て部隊が巻き込まれるのは明らかに予測できたはずだ。劇中のAIたちがまるでAIらしくないのもこの作品の特徴だが、この判断の冷酷さは米軍のほうがよっぽどロボットらしいというか。

「実はジョシュアはニューアジアに潜入していた米軍のスパイであり、特殊部隊はジョシュアの味方だった」というのは面白い流れだと思うが、逃げるから準備してこいとマヤに伝え、彼女が一時的に離れたからといって、捕まえた米軍部隊の一人にその場で『なぜ来た!?バレちゃうだろうが!』と責め立てるものだから、自分がスパイであることがマヤにバレてしまうジョシュア。無能。確か5年も潜伏していたのに、思慮が足りなすぎる。そこまで大きい家ではなかったようだし、床や壁の防音性も低そうで、危険だから避難するにしてもそんなに荷物は多くならなさそうな生活であることは一目でわかる。マヤが戻ってくるまで1時間も2時間もかかると思ったのか?

後から思ったが、スパイなのだから、米軍からジョシュアにマヤの殺害を指示すればよかったのだ。5年間のうちに米軍から見たジョシュアがいまいち信用できなくなってしまっていたのならば、天涯孤独のジョシュアごとNOMADで消し飛ばせばよかったのだ。

5年後、ロサンゼルスの核爆心地で清掃に従事するジョシュア。そこに米軍が訪ねてくるシーンでは、ジョシュアが義手義足であることが積極的に示されるシーンが続くのだが、彼の義手義足が活躍するシーンは作中一度たりとも無い。ロボットAIと人間を描いたウィル・スミス主演の名作「アイ,ロボット」の主人公スプーナー刑事も義手であるが、彼の義手はここぞというシーンで大活躍する。ジョシュアの腕と脚はロサンゼルスの爆発で失ったと後に話される。爆発はAIによって引き起こされたということになっているから、ジョシュアがそれによってAIに対して憎しみを抱いているというのであれば、いかにも彼の動機を強めるものとして成り立つだろう。しかし彼は(5年間のニューアジア潜伏によって変わったのか、それとも元々そんな気持ちは持っていなかったのかはわからないが)AIに対しての憎悪を劇中で全く示さない人間である。それでいて後に活躍しないなら、別に家族と共に腕を脚を失ったことに物語的な理由は生まれないのだ。ならなぜ彼が義手義足であったかというと、取り付けたり取り外したりするシーンがひと目見た時にかっこいいからだ。

さらに『AIたちの脅威の新兵器が開発された。NOMADが破壊されれば、アメリカはニューアジアのAIたちに勝てなくなる。ニューアジアの目標の村に詳しいのはお前だけだ』とどうしてもジョシュアを連れていきたい米軍将校たち。「彼ら(米軍)自身がNOMADから発射したミサイルによって殺害されたマヤ」が生きているように見せかけてジョシュアを作戦に参加させるという悪意に満ちた行為に及ぶ。作中の米軍は悪役として描かれているので別にそれはいいと思うが、発振器付きの指輪をジョシュアに持たせてマヤに付けさせたのは当の米軍である。少し先の話になるが、冒頭に捕虜になったと思ったら5年間で普通にニューアジア一般市民として馴染んでいたドリューが持っていた発信機で水没した指輪が発見されてしまった。ジョシュアが作戦に対して従順でないのは最初からそうだったにせよ、せめてニセの映像のマヤから指輪を外しておけば、米軍がジョシュアを騙して作戦に参加させたことはバレなかった、ないしバレるのをもっと遅らせることができたのではないか。無能

ジョシュア含む部隊がニューアジアの目的の村まで潜入するシーン。
かっこいい飛行機から小型飛行機をかっこよく射出し、NOMADのスキャンレーザーの支援を受けながらカッ飛んでいくが、飛行に合わせてやっぱりNOMADが潜入部隊の直上にいるし、超低空をド派手に飛んでいくもんだから潜入どころか丸見えだし、高速で飛ぶ小型飛行機のすぐ目の前をスキャンし続けたところで障害物を避けたり人に見られるのを避けたりはできない。ではあれはなんのためのスキャンか?それはわかりやすい。絵面がかっこいいからだ。でもバレない。無能。そんなニューアジアの人々・AIたちが、後に出てくる戦車やNOMADを開発できる米軍の脅威たりうるのか?劇中全編通して言えることだが、「ザ・クリエイター/創造者」の描写はことごとく説得力がないのだ。

目的の村にたどり着いたが、研究所への入り口が分からないジョシュアたち。それなりに大きな村だったが、たった数人で堂々と村人を脅して占拠する行為に出た。そんなやり方ではひとりふたり逃がせば周囲にバレる(なんならあとから警察が来た)し、相手にはシミュラントが混じっているのだから、人質にした時点で連絡されてしまうのではないのか(本作におけるシミュラント=AIロボットは通信機能といったものは持たないようだが、あんなにも人を模した高性能な(?)ロボットを作るなら電話やネットワークの内蔵ぐらいしたっておかしくはない。よくわからない作りだ)。
さんざっぱら(子供を)脅したあと、唐突にジョシュアが仏像をひねると、目の前に開く大きなハッチ。「こんなものが開けば跡が残ってわかりやすいだろうが!」というツッコミはともかく、ジョシュアが仏像を入り口のキーだと怪しんだ理由がわからなかった。脅された村人が一瞬そちらに目を向けたといった描写があればよかったが、私が見逃したんだろうか?本棚の1冊を引っ張ると秘密のドアが出てくるような面白さを見せたかっただけか?
※子供が仏像を指さしたらしい。見逃したようだ。

研究所では、部隊が躊躇なく研究員を撃ち殺してまわる。それどころか、顔認証のドアを通るために殺した研究員の首を切り離したような描写すらされた。研究員たちにとって地獄のような状態のなか、ジョシュアは周囲の状況など知ったことではないと監視カメラ画面にマヤが映っていないか探している。シミュラントやその開発者に対して特に憎しみを持たない男が、5年間潜伏して、なかば自分の任務を忘れて心から愛した妻と暮らした国で、部隊の仲間が殺戮を行っている中でである。イカれている。主人公でありたいなら、少しは嫌な顔をするなり、仲間を止めるなりしたらどうだ。
途中、なんとかドアの向こうに逃げ込んだ研究員の怒りの叫びが、翻訳機により「あなたの母親と交尾してください」といったような内容になるシーンがあった。「Mother fxxker」や「Fxxk your mother」が直訳されて妙なことになったというのは分かるが、殺戮のさなかだぞ。どう考えてもユーモアで茶化すシーンではない。

目的の新兵器があると思われるハッチには「ステイバック/危険な場所に注意」の印字。作中には謎の日本語が映るシーンがいくつもあるが、覚えている限り1つ目はこれ(研究所内の壁にも「核」の文字があったが、意図が不明すぎたので一つのデザインとして飲み込んだ)。SFにありがちなおもしろ日本やおもしろ文字を楽しむ文化は確かにあるが、シリアスなシーンで出されると緊張を砕かれるというのが本当にわからないのだろうか。各所で日本語を出すのだから、日本人のアドバイザーを1人雇うだけで避けられる問題ではないのか。

侵入するためのハッキング(総当たりに見えた)装置を取り付けてから、研究所内の爆破をするために単独で行動して動けなくなった味方を助けにいった彼は、結局ハッチまで戻ってこなかったし、救助対象も普通に死んでた。さすがに部隊員の顔を全員覚えていられなかったのだが、彼は脱出挺に乗り込んでいたか?

ハッチが思ったよりも早く開いたので、そこにマヤがいるかもしれないから味方を待たずに先に侵入するジョシュア。この時点ではマヤがニルマータであるとは知らないので、彼から見ればマヤは研究施設にとっての重要人物ではないのだが、何をしているのやら…。
その後、ハッチの奥でアルフィー(この時点では名前はない)を見つけるジョシュア。アルフィー、なんでこんな監禁じみた扱い受けてるんだ?
アルフィーを逃がすためにジョシュアに銃撃した研究員のおばちゃん、1発だけ当ててからアルフィーの出口を開けてどっかへ逃げていったが、アルフィーを守るならちゃんとジョシュアにとどめを刺しに行くか、あるいはアルフィーだけ脱出口から逃げた時点で閉じなければいけないはずだ。まあでも彼女は軍人ではないので、それを無能と言うのは酷。

地上ではやっぱり警察にバレた部隊員の女性。第一波への対処は面白かったが、第二波への対処法を持たず防戦。ただし彼女は車の影に隠れているだけなので、警察シミュラントは制圧射撃を行いながら左右に回り込めばよかったのだが、なぜだかそれをしない。無能。超高性能なAIとロボットの体のくせに無駄な射撃をいつまでも行っているのもマイナス。研究員のおばちゃんは一発でジョシュアに命中させたので、人間より射撃下手。せめて脱出艇に向かって駆け出したタイミングでは当ててくれよ。
背中に粘着式爆弾⇛時間差で脱出艇ごと爆破は悪くないと思う。でも彼らは悪役なので、背中に爆弾がついた味方を蹴落とそうとするぐらいのことはしてほしかった。しかし、着弾即爆発のグレネードランチャーは持ってないのか?

このあたりで大問題なのが、ジョシュアたちが地上に戻ってくる直前に、劇中通してずっとなんか偉そうな女性将校が『(捜索に行ってくるから)3分経っても戻らなければ先に脱出しろ!』と脱出艇から離れていくくせに、直後に「1分後にNOMADからミサイルが投下される」ことが分かるところですかね。女性将校は作戦分かってる立場の人でしょ?3分じゃ間に合わんじゃん。無能
というか、新兵器でNOMADを墜とされかねないから先に部隊潜入させたんじゃないの?新兵器の破壊も確保もできてないのにNOMAD来ちゃうの?なんで?
部隊が全然仕事できなかったから焦土にしようとした?

②THE CHILD / 子

NOMADからのミサイル至近弾を2回受けてなお大きな怪我もなく生き残っているジョシュア、アルフィーと共に農家に潜伏。なんでアルフィーがジョシュアについてきているのかはよくわからない。家に帰ってきたシミュラントとのやり取りにもツッコミどころはあるのだが、この直後の描写が衝撃的すぎるので端折る。
銃声を鳴らして警察に追い込まれるジョシュアとアルフィーは車で逃げようとするが、起爆までの時間が2年ぐらいありそうな手榴弾を投げ込まれて絶体絶命。と思ったらその家の飼い犬が手榴弾を咥えて警察のところまで持っていき、全滅させてくれたのだ!万事解決!バカか。
部隊の味方はニューアジア警察に囲まれてるし、すぐ横には今にも死んでしまいそうな味方が1人いるし、ユーモアを見せるタイミングじゃないんだよ。というか、これがおちゃらけ系の作品でないのなら、ユーモアで危機を脱しちゃいけないんだよ。しかもシミュラントと人間の間に全く差異がないように意図して描かれている作品なのに、体の一部が吹き飛ばされた警察シミュラントが「めがねめがね…」ってやってる様子を見てどういう感情を持てと?
せめてこの飼い犬とついさっき破壊したシミュラントが直前に棒を投げたりして取ってこいで遊んでいるシーンがあれば少しは説得力が生まれたろうに。

翻ってニューアジア警察に逮捕された米軍部隊の二人だが、そりゃあ一般的警察ぐらいには勝てる実力はあろうが(序章の部隊は一般ニューアジア人に負けたけど)、シミュラント相手に首を極めに行ったのが謎。呼吸器系や血管の作りまで人間を模して作られてるわけじゃないでしょ。あと、ああいう護送車って後方と運転席が分かれてるもんじゃない?降りずに運転席を占領できるの納得いかない。いや、そういう車だったんだよで終わる話なんだけど、一応現代社会から地続きの作品っぽいのに、理屈なしにわざわざ危険な作りにしないでしょ。

ジョシュアを追う途中で死亡した隊員を見つけた二人、死亡直後の脳をスキャンしてシミュラントに読み込ませるという限定的ネクロマンスを実行。
正直この発想にはびっくりしたし、すごくいい要素だなと思った。ちゃんとした活躍がこの1回だけじゃなければ
死体とシミュラント、せめて横じゃなくて縦に並べてあげなよ。そりゃ家族に電話させてくれってなるよ。可哀想に。
あとちゃんと覚えてないんだけど、確かこのグロテスクでシリアスなシーンが次に切り替わる直前に、先んじて曲が切り替わった。ジョシュアたちがハイジャックした一般ニューアジア人の車から流れる、陽気なラジオの曲だ。この監督は雰囲気を壊すのが本当にうまい

この時点でジョシュアがニューアジアの都会を目指して移動しているのは『頼りになる友達がいるから』ということだったと思うが、潜入終了からおそらく5年間アメリカに戻っていたジョシュアが、捕虜になってからなんでかニューアジアに帰化したドリューの居場所を知っているのはなんでだったか。説明あったかな?シミュラント憎しの米軍特殊部隊員が、ボコボコにされて捕虜にされて、5年間のうちにあんなに馴染むことあるか?

③THE FRIEND / 友

即座に目に飛び込んでくる龍角散ダイレクトと「WANTED 募集中」の文字。龍角散ダイレクトは「まあこの時代まで商品が残ってるのかな…」でスルーしていいんだが、募集中は擁護できない。ちゃんとした監修が入れば、「WANTED 指名手配」になるはずだったろうに。謎翻訳は謎翻訳であって、おもしろ要素になるかどうかは作品全体の持つ方向性によるのだ。THE CREATORにおいては、単に雰囲気を壊す行為だった。

唐突になんか天国について話し合うジョシュアとアルフィー。アルフィーがジョシュアに頭を預けるように寄りかかるが、ここまで二人の間に信頼関係が生まれるシーンなんてなかった気がする。唐突だなって思った。

アルフィーの耳穴(耳穴?)をピンセットっぽい何かですこしなぞりながら見るだけで『このシミュラントは成長するし、遠隔操作の能力も強くなっていくぞ』と即座に看破するドリュー。お前がニルマータか?
『何がほしい?』と聞かれて『AIの自由』と答えるアルフィー。唐突だな。少なくとも君が生まれてからずっといるニューアジアの地では、シミュラントは相当自由にやってると思うぞ。

募集中だったジョシュアとアルフィーがドリューの部屋にいると分かるや否や、元捕虜現一般人のドリューとその彼女シミュラントどころかアルフィー自体を巻き込みかねないのに、特に制御もなく爆弾を送り込むシミュラント警察。無能
一度は背後を取ってホールドアップしたのに、急な振り向き撃ちに不意を突かれて普通に負けるシミュラント警察。無能。人間じゃねーんだぞ。

作中ずっとそうだが、せっかくAIなんだから、少しは機械らしい有能さの一つぐらい見せたらどうなんだ?
AIの持つ脅威どころか人間とまったく同じものとして描くなら、そこにはなんのテーマも生まれないじゃないか。

唐突に尋ねてきたジョシュアのせいで彼女を爆殺された不憫なドリュー、それでもジョシュアを連れて指輪の反応のところまで車を走らせてくれた。いいやつ。
ようやく現地に到着したと思ったら、防護服着て降りてる。放射線対策してんの?NOMADの投下してるミサイル、戦術核だったの?シミュラントが核を爆発させたことに対する報復・防衛装置として作られたNOMADが、事あるごとに戦術核を落としてるの?
というか核を落としたあと人間が自由に動けない環境になってしまっているのなら、核を落とすという行為自体がシミュラントにとっては有利に働く要素があるんじゃないの?

ジョシュア、ここで指輪を発見したことで米軍のウソが露呈。しかもたらたらしてるもんだから警察に追いつかれ、ドリューが撃たれて死亡。まじで不憫。
ここで(だっけ?)マヤこそニルマータであったと判明するが、ニルマータって襲名制なんすか。ニルマータを殺しても次のニルマータが生まれるならば、ニルマータが単にシミュラント開発超技術者のことを指してしまうなら、米軍の目的はニューアジア全体を焦土にすることでしか達成されないじゃないか。いや、ニルマータから次代ニルマータにのみ受け継がれる技術みたいなのがあるんだろうけど、そんな一朝一夕で伝えられるものなの?アルフィーを作ったのがそれだというなら、マヤは先代ニルマータと頻繁に会ってないとおかしいんじゃないか。
マヤがニルマータを襲名したのも、マヤがアルフィーを開発したのも、ジョシュアがそばにいた時点でのことだという。気づけよ無能
その後、渡辺謙に確保されるジョシュア。ドリューは問答無用で撃たれたのに。

④THE MOTHER / 母

なんか雑談みたいなノリで、「ロサンゼルスの核爆発は人間のミスであってAIのせいじゃない」みたいなことを渡辺謙が言うが、衝撃の事実!とするには根拠がない。なんで渡辺謙が知ってるのかもわからない。ニューアジアにおいては周知の事実なのか?なんで?

とりあえず撃っておけばいいのに物音に誘われて甲板に上がる渡辺謙、撃っておかないもんだからジョシュアに逃げられる渡辺謙、AIのくせに川に飛び込んだジョシュアに向けて適当に乱射する渡辺謙、AIのくせに船底にしがみついたジョシュアの音に気づかない渡辺謙。
ここもさ、かなり体力のいる状態になってるジョシュアが、主に義手側でしがみついているとかやればさ、少しは義手の意義が生まれたろうに。

このあと、渡辺謙に連れて行かれたアルフィーをジョシュアが取り戻すわけだが、その方法がまさかの「寝ているシミュラントにこっそり近づいて首の後ろのスイッチを触ってスタンバイ状態にし、抱えられているアルフィーを連れ出す」というもの。近づいていく段階で死ぬほど床が鳴っているのに、高性能なAIロボットなのに、近づく脅威に気づかず簡単に電源スイッチを触られてしまうシミュラント。ポンコツにも程がある。

2023/10/31追記部分

そこそこニューアジアの奥地のハズなのに、いきなり超重量級の戦車突撃させてくる米軍。
あの戦車もやっぱりビジュアル的にはかっこいいが問題あり。貼り付け爆弾で簡単にぶち抜かれる装甲、「ロックしました!」表示を出しつつ発射まで時間がかかる小型ミサイル。
ロックされてるのに人間を巻き込むまいと立ち止まって破壊されるシミュラントとか、シリアスなシーンやってるつもりなんだろ。なのに犬に続き活躍する猿。バカじゃねーの。じゃあもう雉も出せよ。雉の出演を期待したのに最後まで出ね―じゃん。どっちかにしろよ。

襲われているニューアジアの村を見捨てて逃げられないから走って戻るアルフィーはわかるよ。ジョシュアはなんで川に飛び込んだんだよ。まだ全然間に合う距離なんだから走って追いかければいいだろ。

あと自爆くん。あれビジュアルは面白いけど、やっぱり出すタイミングのおかしいユーモア。AIを嫌う米軍が開発したものなのに「あなたと戦えて光栄でした」って言わせないだろ。米軍のスタンスをちゃんと考えないで、仲間のロボットが自爆しに走っていくというシーンをやりたいだけで撮るからこういうヘンテコが起きる。
1台目が狙うべきは前線で銃を向けてきているやつらだろうに、なんか奥まで走り込んでったのは何で?2台目が突撃してきたときに『撃てー!』って言ってるのに全然撃ち始めないのは何で?アルフィーが現れて『やめろー!』って言うまで一発も撃ってないでしょ。

ジョシュアが川に飛び込んだのも、アルフィーが2台目の自爆くんを止めるシーンがやりたいがためにジョシュアが簡単に追いついちゃ困るからそうなったんだろ?わかるよ。撮りたいシーン重視で「このときこのキャラクターはどう行動するのか」が詰められない。PSO2のストーリーみたいだ。

ライフルを持った4~5人のシミュラント対ハンドガンを持った人間1人で互角になるのも意味不明。何度も書くが、シミュラント無能すぎ。人間より射撃が下手。

その後、5年間昏睡していたマヤに再会するジョシュアだが、シミュラントはニルマータを殺害できないので、生命維持装置につなぎ続けるしかなかったというチベット僧シミュラント。ニューアジアはシミュラントと人間が共存してるんだから、死なせてあげたかったなら信頼できる人間に頼めばよかっただろ。少なくともいきなり現れた米軍籍の男に任せることじゃないだろ。
自分が昏睡状態に陥り、お腹の子も死んでしまうとはかけらも思っていなかったはずのマヤがアルフィーを作っていたこともいまいち納得がいかなかった。

ただ生かされているだけのマヤを天国に送ってあげるジョシュア。
これでニルマータは死亡したので米軍の目的のひとつは達されたはずだが、なんでか脳をスキャンする将校女性。いや、まあ何らかの役には立つんだろうけど。そして2回目の背中粘着爆弾で爆散する将校女性。2回目はだめ。なんも面白くない。というか、米軍はシミュラントを破壊していいんだから、ランチャーを構える渡辺謙に『動くな!』なんてやらなくていい。すぐ撃たないから将校が爆散することになるんだ。行動が一貫してない。
そして問題なのが、ここでチップを回収してしまうジョシュア。これをしっかり映すから、今後何が起こるのかはこの時点で分かってしまう。伏線の張り方が下手。

米軍に捕まって、将軍から『抵抗されたからお前に任せる。アルフィーを破壊しろ』と任されるジョシュア。意味わかんない。米軍から見れば、ジョシュアはアルフィーと一緒に逃げてた裏切り者だぞ。どう考えたって素直にやるわけないだろ。遠くから一発撃てば終わりだろう。
案の定オフじゃないスタンバイだで周囲を騙すジョシュア。周囲に影響を与えるぐらいにチャージしたEMPガンを直撃させたのは事実だと思うんですけど、アルフィーはなんもダメージ受けてないんですね。

月行きのシャトルをジャックしてNOMADへ乗り込むジョシュア。巻き込まれた一般人たち。可哀想。不用意に乗り込み、無重力無酸素の空間に放り出される一般米軍男性。可哀想。
あまりに迂闊なミサイル配置をしているNOMAD、1発爆発させれば全部誘爆して墜ちるよねを実行しようとするジョシュア。ミサイルごとジョシュアが発射されてしまう直前にNOMADを停止させるアルフィー、再起動後にミサイル発射装置だけ再起動しないご都合展開、ギャンの盾みたいなミサイル配置してるせいでやっぱり爆散していくNOMAD。
はやく逃げろと言われているのに、感動のエンディングの準備のために、反AI国の空中基地のNOMAD都合よくいっぱいあったシミュラント素体の中から都合よくすぐ見つかったマヤコピーにチップを挿入してから脱出へ向かうアルフィー。

ちなみに私はここまで、NOMADの強みは「自由に空中を移動し、直上から地面をスキャンすることで超正確に直下ミサイル爆撃が行えること」だと思ってたんだけど、ここにきてニューアジア全域にミサイルを発射し始めたので、「NOMADのスキャナー、ちゃんと大事な特徴」説について深く考えることをやめました。なんかミサイルが地上すれすれまで落ちてから目標まで超低空飛行してるし。なんで?

人間の操る謎の触手ロボットと戦ったあと、アルフィーを緊急脱出ポッドに入れて自らはNOMADに留まるジョシュア。
自分の任務と責任を放棄してマヤを探したいがためにいろんな人を巻き込んだ上、最終的にまだ脱出できていない人だっているであろうNOMADの破壊をしようとしている彼はどう考えても幸せになってはいけないので、NOMADと共にジョシュアが散るのはいい。

でもシミュラントの形でマヤが復活して幸せに抱き合って終わりはありえない。だって、マヤからすれば序盤でジョシュアを見限って脱出しようとし、NOMADの爆撃を受けた直後のはずなのだ。あそこでジョシュアと出会ったからといって抱き合うはずがないし、何より寺院でマヤを天国へ送ってあげたシーンの意味が完全に失われる。何やっとんじゃ。

ネクロマンス機の仕組みはよくわからないが、失血死した隊員の脳を急いでスキャンしてから横のシミュラントを使用して起こしていたことから、「脳の作りを正確に読み取り、シミュレートできる形でチップにデータとして焼き付け、空のシミュラントに読み込ませる」というものだと思う。
マヤの体に大きな欠損がなかった点を見ると、彼女が昏睡していたのは脳のにダメージを負ったことによる意識不明、あるいは脳死であったのではないか。そうすると、そもそも脳の働きをシミュレートしたところで昏睡するシミュラントが出来上がるだけなのでは?

さらに言えば、このマヤはいわゆる「スワンプマン」のそれである。行動・思考を完全にシミュレートした複製体は本人であるのかというのはSFにもよく用いられる問題であり、なんならこれをメインに据えた作品だってあるぐらいなのだが、本作ではこんなにも軽く取り扱った。SFが好きな人間なら、なかなかできることではない。

2023/10/31追記部分

NOMADが墜落したあとのアルフィーのシーン、何で笑っとんじゃ。両親巻き込まれて死んでるねんぞ。あの規模じゃ、NOMADの残骸で巻き込まれた人だっていっぱいいたろ。
NOMADが落ちたことでアメリカとニューアジアの対立はより深いものになった。この後全面戦争じゃない?どうすんの?

そして誰もが気づいたはずの、NOMADが墜落するという作中最大の見せ場において左下に映る

「もういや遊牧民」のプラカード。

バカが。最後の最後にまた雰囲気壊しやがって。
「NO MORE NOMAD」とか「NOMAD反対」の意味だろうとは思うけどね。
日本語訳がゴミなのは大前提として、プラカード持ってるお前がいるその場はニューアジアの奥地で、ついさっきまでNOMADからミサイルが降り注いでいたタイミングだろうが。アメリカとの国境付近でデモやってんなら分かるが、そんなプラカードを持ったやつが何やらやってるわけないだろうが。


TENETのJ・D・ワシントン、
インセプションの渡辺健、
ノーラン作品で超有名なハンス・ジマー、
これだけの超大御所を連れてきてこんな脚本の映画を作ってしまうのなら。

ギャレス・エドワーズ、お前もう映画撮んな。






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