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教職志望の方へ⑩ー履修についてー

 「教職志望の方へ⑧ー欠課時数についてー」を書いたとき、履修は別の回に、と書いたのですが、その後、説明するのに苦労していました。
 思い返すと、制度の運用自体が試行錯誤だったので、説明がすごく難しいのです。
 その上、履修は修得とセットで説明されるのですが、修得の規定は学校によって違います。
 できるだけ履修に絞って、述べたいと思います。

【履修の規定】
 履修の要件は、授業時数の二分の一以上の出席です。法定授業時数は35週×単位数で、運用上、それにしたがって、内規で履修に必要な時数が決められています。つまり概ね35週×単位数÷2です。
 ただし、学校の授業時数の設定の関係で、学校によって微妙に違うこともあり、確認が必要です。

【履修が問題になる時】
 そもそも、必履修科目を履修せずに、学校規定の卒業単位を取っても、卒業できません。これは「必履修」が、内規ではなく、高校卒業について、国が決めた規定であるためです。
 かなり昔のことですが、ある学校で、卒業間近の高校三年生で世界史の未履修問題が発覚したことがあります。その学校は進学校だったのですが、世界史を設定していなかったがために、普通なら大学入試のために三年生が登校しない1月から3月の卒業式までに、世界史の補講を行わなければなりませんでした。これは、学校のカリキュラム(教育課程)の不備の問題です。
 とある学校でもカリキュラムの二重帳簿があるという話も聞いたことがありますが、それは学習指導要領が指針であった頃の話で、今は学習指導要領が法的準拠を持つことになっているため、学習指導要領に逆らったカリキュラムなどはまずないでしょう。
 今、考えられる厄介なケースは、たぶん次のようなパターンです。「1単位ぐらい落としてもいいや」と思った生徒が「保健は捨てた」などと言って「保健」だけ欠時数オーバーになっても休み続け、さらに授業時数の二分の一を超えて休んだ場合です。「保健」の履修がアウトになります。
 学年制の高校では、必履修だからと言っても、下の学年の科目を取りに行けないので、それを再履修させるため、1単位未履修だけで留年が決定することになります(昔よくあった、校長が校長決裁というウルトラCを決めれば別ですが、今は未履修だと法律違反になるので、無理かもしれません)。

【履修と修得】
 そもそも、かつては「登録、即、履修」だったのですが、2001年頃に、履修規定についての話が(文科省→教育委員会→教務部へ)降りて来たと記憶しています。

 履修という考え方が導入された最初の頃には、履修でアウトになった場合、下の学年に必履修科目を取りに行く、といった学年制と単位制のミックスのような方策も取られました。
 ただし、たくさんの科目を未履修ないし未修得したなら、もう一度その学年をやり直すほうが早いわけで、学校にもよりますが、大体4科目以上未修得で留年(原級留置)となります。
 そして、留年するほどではないが未履修科目をいくつか出した場合には、学年制の学校では次の学年に進む前に「年度内追認」として、欠単位科目の課題や試験を経て進級が認められるか、または次の学年に「仮進級」して、次の学年の授業を受けながら、補講や課題をしたり試験をしたりして欠単位科目の追認を行います。
 しかし、履修に関しては年間の半分の授業を受けなければ履修が認められないので、理論上、3単位の場合3×35週÷2=約53時間以上、2単位で2×35÷2=35時間以上、1単位でも約18時間以上の授業を受けなければならないことになります。
 こんなに多くの時間数を、生徒が次年度の学年に居ながら補講を受けることは無理ですし、教員にとっても、未履修の人々のために開講することは不可能です。
 このため、履修問題が始まった最初の頃、未履修を出した生徒は下の学年に履修のために加わることになったのですが、次の学年の修得や履修の妨げになるので、単位制的な運用をするのは、当初1〜2科目の未履修についてのみということになったのでした。
 しかし、ただでさえ落とした科目なのに、後輩のいる学年に1〜2科目だけ混ざるので、当人の神経がもたず、取りに行った科目の時間に所属学年の必履修科目が被ったりする問題や、座席数(家庭科室やパソコン室の座席は定数ギリギリ)などの問題もあり、途中で立ち消えになり、結局、単位制の擬態は諦めて、学年制に戻ったと記憶しています。

 もちろん、単位制高校ならば、必履修だけ半分超出席して、あとは必要な単位数を揃える、という方法もあります。
 しかし、文科省の学習指導要領(法的拘束力がある)に従うと、一年目(学年制の第一学年)はほとんど必履修科目になります。
 一年次の必履修科目が履修だけということになれば、修得はできていないわけですから、卒業単位数との兼ね合いから、3年で卒業するのはかなり難しくなります。
 そんなこんなで、高校の場合、完全に単位制になると、どうしても4年次以降に生徒が大量に溜まってくるのだと聞きました。

なかなか上手く行かないものです。

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