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けや木の親分

公園の奥にある一番太い木
親分のように森の奥にいる
けや木

樹齢何十年だろう?
巨木はその図体のわりに
森の奥でみんなを見ている

そのけや木が親分なのは
すぐに分かる

通るひと
通るひとが
みな近寄ると

手で幹を撫でたり、
触ったり擦ったり、
抱きついたり

「おいおい、よせよ」
と言わない
けや木はまんざらでもないらしい

みな
けや木にさわり
エネルギーをもらっているようだ

何十、下手したら何百年蓄えたエネルギーを

わたしもたまに気が向くと
親分に挨拶しに行く

夏の暑い日にはひんやりする
身体を抱き

冬のさみしい誰かに降れたい日には
そっと触り

けや木の木は一年中来るもの拒まずで

立っている

でもふと思った
周りに沢山ある細い木々
たくさんあるのに誰もそれにはさわらない
挨拶もしない

椎の木や樫木、杉木

いつも親分の姿を眺めている
細い細い木々

わたしは急に可愛そうに思って
道なりにある
細い木々を触っていく

こんにちは

どう?調子は?

あっ、ざらざらしてる

最近誰かに触られた?

杉木なんか触られるのを
嫌みたいですごく触れると痛かった

「よぉ~皆の衆~」
親分がそう言って笑っているようだ

今まで触れられなかった
細い木々は顔を赤らめている

もっと大きく
もっと大きく

親分のけや木の木みたいに

木々にハイタッチして廻る

春先の森