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詩を書くことが好きで読んでいただけたら光栄です。詩が好きです。群馬に住んでいます。司馬…

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詩を書くことが好きで読んでいただけたら光栄です。詩が好きです。群馬に住んでいます。司馬遼太郎や村上春樹をよく読みます。子供がいないので、子育てをされている方を尊敬し、かつあこがれています。小説や詩、随筆を書かれる方も尊敬しています。

記事一覧

エッセイ~川に消えた鯉

まだ祖父が生きていた頃、 よく祖父の離れの座敷に訪れては 話をしていた。 戦争の話しや近所の他愛もないこと、 祖父の子供の頃の話し。 薄明かりの座敷で祖父が布団に…

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1日前
10

夢の渚

生きていることは 辛い しかし楽しくもある もっとも素晴らしいのが まどろんでいる時 苦痛も後悔もなく 生の境界、夢の渚まで 走っているような 起きても仕方がない …

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1日前
3

孤独なレタス

鳥籠に差しのべられた レタスを啄んでいる 小鳥 眼を開き閉じしながら 嘴を緑色に染めて啄んでいる 彼は孤独か わたしは孤独のあまりに 彼を飼った できることなら 何者…

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1日前
1

孤独と罪と

孤独はひとを ひどく狂暴にもするし 孤独はひとを 深い安らぎに誘うこともある 元々 孤独自体には まったく罪はないものだから

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1日前
2

いかに大海の畔を気取ろうが 他者から見れば 我が 過去は水溜まり程の浅さしかない 海辺りに打ち寄せられた 木々や貝殻をぼんやりと眺めている 不意に我が過去の恥が思い…

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1日前
1

耳の宿

風に運ばれていくだけの ことば 誰の手に入ることでしょう できるなら あなたの手に触れておいてほしい あなたの耳に宿を借りて あなたの瞳に見守られ そこで過ごせたの…

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1日前
2

コーヒーカップ

この世界は コーヒーカップだ スコップいっぱいの 話を辺り一面掘っても 誰も気づかないが たったスプーン一匙の 詩を コーヒーカップに溶かせば 世界を十分に甘くさせる…

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1日前
2

埋め立て場501

しあわせとは 無知を知識で 埋め立てることではなく 新しい無知を この荒れ地に 探りあてること 探しあてること

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1日前
1

快楽より

苦しみを発散することは 快楽に繋がる しかし その苦しみに黙って耐えることは すべて終った後で より上質な快楽をもたらすことがある

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1日前
1

失わせるもの

苦しみは 自分のこころの痛みの 想像力は たくましくさせるが ひとのこころの痛みに 思いを馳せる 想像力は失わせる

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1日前
1

落語の台本~迷い子

町外れに善吉って男が住んでまして それはそれは優しい男なんですが 優柔不断なのかはっきりとものを言えない質で 今日も用あって家を出たのですが 橋の袂で一人の子供に…

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1日前
10

忘却の流れにおいて

ひとが赦すことができる ことには限りがある 赦せないことだってある だが時というものは わたしに 忘却をもたらす 赦すことのできないわたしに かわりに忘れることを 要…

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1日前
10

ハートの一部

この世が 何かの機械のように できているとは 思わない 皆なにかの部品だなんて わたしは血が通い 肉となる何かの 生き物の一部になりたい できることなら やさしいひと…

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1日前
6

足元にいることすらも 忘れられて 蟻 踏まれたか 何かで地面で死んでいることすらも 気づかれない 蟻 このわたしという 蟻が 巣穴に帰ってこないことに 誰にも気づかれな…

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1日前
2

路地裏の近道

異邦人になる一番の 近道は 自分の知らない話しを しているひとたちの 傍に立つことだよ どんなに耳をそばだてても 同じ日本語なのに 理解が出来ない そんな時 まるで異…

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1日前
2

ゆるしあえる

わたしがひどく 愛着を持つ相手は わたしより 少し不幸な人間だ そしてその相手も わたしのことを 自分より 少し不幸だと思っている時に 互いにこころを ゆるしあえる瞬…

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1日前
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エッセイ~川に消えた鯉

エッセイ~川に消えた鯉

まだ祖父が生きていた頃、
よく祖父の離れの座敷に訪れては
話をしていた。

戦争の話しや近所の他愛もないこと、
祖父の子供の頃の話し。

薄明かりの座敷で祖父が布団に潜り込み、
眠るまでの数十分、話をしていた。

今にして思えば
ほとんどがとりとめのない話しだった。

その奥座敷の隅に
隼の剥製が置いてあった。
松の木の枝に爪を立て
翼をしまい。まるで辺りを睥睨するかのような、
黄色い眼をしていた

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夢の渚

夢の渚

生きていることは
辛い
しかし楽しくもある

もっとも素晴らしいのが
まどろんでいる時

苦痛も後悔もなく
生の境界、夢の渚まで
走っているような

起きても仕方がない

しかし
わたしの瞳という
海から流れる涙は
頬を濡らす

起きてみるとそこに
魚の姿が打ち上げられていないのは
何故?

白い夢の渚を走って集めた貝殻は?

孤独なレタス

孤独なレタス

鳥籠に差しのべられた
レタスを啄んでいる
小鳥
眼を開き閉じしながら
嘴を緑色に染めて啄んでいる

彼は孤独か
わたしは孤独のあまりに
彼を飼った

できることなら
何者かにわたしの孤独も
啄んでほしかった

穴が開き減っていく孤独

彼が孤独をつつくと
わたしの孤独が減って行く気がして

鳥籠の網越しに
互いの存在を頼りにして
たった一枚のレタスを絆として…

孤独と罪と

孤独と罪と

孤独はひとを
ひどく狂暴にもするし
孤独はひとを
深い安らぎに誘うこともある

元々
孤独自体には
まったく罪はないものだから

汀

いかに大海の畔を気取ろうが
他者から見れば
我が
過去は水溜まり程の浅さしかない

海辺りに打ち寄せられた
木々や貝殻をぼんやりと眺めている

不意に我が過去の恥が思いよぎる
真っ赤な羞恥
まるでそれは

水溜まりの汀に
打ち寄せられたさくらの花びら

耳の宿

耳の宿

風に運ばれていくだけの
ことば

誰の手に入ることでしょう
できるなら
あなたの手に触れておいてほしい

あなたの耳に宿を借りて
あなたの瞳に見守られ
そこで過ごせたのなら

わたしが風に放ったことばは
季節を越えて
生き残れるでしょう

地面に散って忘れ去られる
ことばだってあるのだから

コーヒーカップ

コーヒーカップ

この世界は
コーヒーカップだ

スコップいっぱいの
話を辺り一面掘っても
誰も気づかないが

たったスプーン一匙の
詩を
コーヒーカップに溶かせば
世界を十分に甘くさせることができる

埋め立て場501

埋め立て場501

しあわせとは
無知を知識で
埋め立てることではなく

新しい無知を
この荒れ地に
探りあてること

探しあてること

快楽より

快楽より

苦しみを発散することは
快楽に繋がる

しかし
その苦しみに黙って耐えることは
すべて終った後で
より上質な快楽をもたらすことがある

失わせるもの

失わせるもの

苦しみは
自分のこころの痛みの
想像力は
たくましくさせるが

ひとのこころの痛みに
思いを馳せる
想像力は失わせる

落語の台本~迷い子

落語の台本~迷い子

町外れに善吉って男が住んでまして
それはそれは優しい男なんですが
優柔不断なのかはっきりとものを言えない質で

今日も用あって家を出たのですが
橋の袂で一人の子供に袖をつっと引かれましてね

かわいらしく
にかっ、にかっ、なんてその子供笑って

善吉は人がいいから
おどけて笑わせたりしてやって
その子供を可愛がっていたのですが

先方との約束の時分が近づいてきます

子連れで行く訳にはいかないし

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忘却の流れにおいて

忘却の流れにおいて

ひとが赦すことができる
ことには限りがある
赦せないことだってある

だが時というものは
わたしに
忘却をもたらす
赦すことのできないわたしに
かわりに忘れることを
要求するのだ

その要求は無理やりではない

毎晩夢を見て
朝日を見る度に

川岸が水で削れていくように
徐々に忘却の川幅は広くなり

時と共にすべてが
流れて行く
怒りや憎しみ嫉妬が
うそのように忘れて何処かに行くのだ

ハートの一部

ハートの一部

この世が
何かの機械のように
できているとは
思わない

皆なにかの部品だなんて

わたしは血が通い
肉となる何かの
生き物の一部になりたい

できることなら
やさしいひとの胸にある
ハートの一部になってみたい

蟻

足元にいることすらも
忘れられて


踏まれたか
何かで地面で死んでいることすらも
気づかれない


このわたしという
蟻が
巣穴に帰ってこないことに
誰にも気づかれないまま

路地裏の近道

路地裏の近道

異邦人になる一番の
近道は
自分の知らない話しを
しているひとたちの
傍に立つことだよ

どんなに耳をそばだてても
同じ日本語なのに
理解が出来ない

そんな時
まるで異国で
独りぼっちでいるような
感覚に襲われるんだ

路地裏の近道
老人たちの囁き声

ゆるしあえる

ゆるしあえる

わたしがひどく
愛着を持つ相手は

わたしより
少し不幸な人間だ

そしてその相手も
わたしのことを
自分より
少し不幸だと思っている時に
互いにこころを
ゆるしあえる瞬間がある