見出し画像

KAWS TOKYO FIRST

展覧会に行った際は率直に感じたことを文章にして留めておきたいなと思っています。てなこともあり、今日は森アーツセンターギャラリーにて開催されているKAWS展に行ってきたので、その感想をnoteに書きたいと思います。

ただしKAWSが歴史的な文脈でどういった位置付けのアーティストであるのかと言ったことは僕の知識不足で理解していないので、美術批評を書くことはできません。あくまで自分自身が感じたことや疑問に思ったことを素直に書きたいなと思います。

KAWSというアーティストを知らなくても、目が✖️になっているキャラクターを目にしたことがある人は多いのではないでしょうか。

僕がKAWSを知ったのはお馴染みのキャラクター「COMPANION」の巨大フィギュアが世界中を回るプロジェクト「KAWS:HOLIDAY」がきっかけです。

KAWSのここが凄い

以前からKAWSのことを知ってはいたのですが、ごく一部の作品しか知りませんでした。その分、今回の展覧会では彼の作品が網羅的に展示されていたので多くの発見と感動を得ることができました。

まず、KAWSが色々なブランドとコラボレーション?(正式なコラボレーションかは分かりません)していることに驚きました。

DIESEL, Calvin Klein, Moschinoなどの世界的有名ブランドとのコラボレーション作品を出しています。

画像1

画像2

見事にKAWS化していることが分かると思います。

キャラクターという非現実的なものが現実を切り取った写真の中に混ざり込んでいる様に違和感を覚えることなく、一つの作品として上手くまとまっている点に凄さを感じました。

顧客の消費行動に対して、モデルの容姿が与える影響は非常に大きいですよね。だから2枚目のCalvin Kleinの作品では、顔がマスキングされていてモデルに影響を受けることがなかったので、いつもと違った形で衣服に目を向けることができたなというのが個人的な感想です。

またKAWSはスヌーピー・シンプソンズ・セサミストリート・ミッキーマウス・ピカチュウ・鉄腕アトムなどのアニメーション作品をモチーフにした作品を多く出しています。

画像3

画像4

画像5

画像6

✖️の目が与える印象が強すぎてオリジナル作品よりも記憶に残るような作品だなと感じました。

最悪目を✖️にすることだけでも作品をKAWS化することができることを考えると、「目が✖️=KAWS作品」という方程式が社会に定着しているという事が彼の影響力を物語っています。

✖️✖️が生む豊かな表情

ここで少し考えみたいのですが、✖️の目はどのような印象の変化を生み出しているのでしょうか?

目が✖️の状態は、目を閉じているけど、ただ単に閉じているだけじゃないはずです。ただ単に目を閉じているだけなら「➖」で良いはずです。そこであえて「✖️」を使っていることに大きな意味があるのではないでしょうか。

目を✖️にすることで色んな解釈の余地が生まれます。僕は日本のアニメ・漫画文化に触れて成長してきたので、✖️の目を見ると「あ、やっちまったー」「やられた〜」「どうしよ〜」みたいな意味が暗に含まれているように勝手に感じます。

画像10

目が✖️と言えばこんなのを思い出します

少し話が変わりますが、実際に展覧会に足を運んでみて、多くの若い女性が来ていたのが印象的でした。そして「かわいい」という声が多く聞こえてきました。

KAWS作品の可愛さがどこから来ているのだろうかと考えてみると、やっぱり先程あげた「やられた〜」「どうしよ〜」みたいに少し慌てふためいている様から来ているように思います。「かわいい」は仕草やそぶりから来るってよく言いますよね。

画像7

かわいい

また表情の解釈の余地という点では他の見方も考えられます。✖️の目は下半分だけ見ると^になり笑っているように見える一方で、上半分だけを見るとvになって泣いているようにも見えます。

画像9

笑っているように見える

画像9

泣いているように見える

目が✖️になる事で一見キャラクターの表情が無くなっているようにも見えますが、実はその逆で様々な解釈が生まれ、多様な表情を描いているのです。

骸骨は死を意味しており、本来表情を持ち得ない存在ですが、✖️の目によって多様な表情が描かれています。その矛盾にある種の不気味さを感じる一方で、どこか愛くるしくもあり、不思議と惹きつけられてしまいます。KAWSが世界的に人気な理由が少しわかった気がしました。

フェイク

最後に✖️の目にはどういったメッセージが隠れているのか考えてみたいと思います。次の作品を見てください。

画像11

ORIGINALFAKE COMPANION

体の半分が解剖模型になっています。

左半分のキャラクターのままの作品だとかわいいと思えるのですが、この作品ではかわいいより、むしろ怖さを感じました。その怖さは剥き出しになった臓器からではなく右目から来るものでした。

感情がなくただ真っ直ぐ先を見つめる右目と✖️で多様な表情を生み出している左目との差異に怖さを感じました。

この作品を見る事で、今まで可愛く思えていた目が✖️のキャラクター達全てに僕は何か騙されていた、欺かれていたんじゃないかと言う気持ちになりました。

「可愛さを装っているその表面の先で本当は何を考えているのだろうか」と、考えずにはいられません。

そういった怖さと同時にこの作品からは、KAWSのアーティストとしての現代社会に対するメッセージを感じることもできます。

全ての人がFAKEで生きる社会。それはSNSを中心とした現代社会に似ているとは思いませんか?SNSでは誰もが盛れている写真をプロフィールに使い、楽しかったことや自慢したいことのみを切り取って投稿します。本当は笑っていないのに笑っている顔文字やアイコン、スタンプを送り合ったりもします。デマやフェイクニュースが多くの人に拡散され、それがあたかも真実であるかのように振る舞います。

そういった実体の伴わない上っ面のみが動いている現代社会の様子をまさにKAWSの作品が表しているのではないでしょうか。

最後に

現代アートは「なぜ、こうなっているの?」と問いを立てて、自分なりの答えを探しながら鑑賞することに面白さがあるように思います。是非他の方の意見や感想も聞きたいです。

また、今回展示されていたKAWS作品は彼の作品のほんの一部です。次はもっとスケールの大きい作品を見てみたいなと思っています。

僕が紹介したのは全体の一部に過ぎないので、実際に足を運んで見ていただければと思います(AR作品とかもありますよ)。普段アートに興味の無い方でも、十分楽しめる内容になっています!

会期は10月11日(月)までらしいので興味ある方は是非!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?