セナプロ時代から見えたもの

1988年のF1世界選手権は
最強のエンジンHONDAと、
アイルトン・セナ
選手、アラン・プロスト選手という
最強のドライバー2名を獲得したマクラーレンが
16戦中、15勝という圧倒的な成績を残しました。

このシーズンだったかは定かではないのですが、
アイルトン・セナ選手は速さはあるが「燃費が悪い」、
アラン・プロスト選手は「スピードが足りない」と、
HONDAがチームメイトに対して
違うエンジンを提供しているのではないかと疑心暗鬼になる
騒動も勃発しました。

HONDAとしてみると
同じエンジンを提供していたのですが
あまりにも両者の不平不満が募り、
HONDAは困り果てた末に
あらゆる箇所から蓄積していたデータを
両者へ公表することにしたのです。

そのデータを見たアイルトン・セナ選手は、
自分がここでこういう走りをしているときに
彼(アラン・プロスト選手)はこういう走り方をして
燃費を稼いでいたということを知ることとなりました。

アラン・プロスト選手は
たぶん過去のレース経験などから
どのようなレース展開をすれば
自分の走りで優勝できるか考えて掴んだ高等戦術が
コックピットの中での操作は、他の人からは見えず
ベールに包まれていたのですが
データを見られたことでアイルトン・セナ選手にも知られ、
結果、アイルトン・セナ選手の方が学びが大きく、
アラン・プロスト選手は損をしたと言われてきました。
(HONDAの名誉のために書いておきますが、
こういう騒動が起きなければ
HONDAは他選手へデータを
見せることはなかったともいえるでしょう)

ここで、もう少し、
アイルトン・セナ選手とアラン・プロスト選手を
知っていただきたいので、
Ayrton Senna da Silva Memorial Museumのウェブサイトより
引用させていただきます
------------------ここから------------------
セナを語る時に欠かせないのが、
「アラン・プロスト」というドライバーである。

彼もまたセナとは違ったタイプであるが
天才ドライバーの一人である。

セナが「速い」ドライバーなら、
プロストは「巧い」ドライバーである。

プロストは緻密で正確なレース運びにより、
16戦を通してチャンピオンを獲得するための
レース運びをする戦略家であり、
これがプロフェッサーと呼ばれる所以である。

(後略)

※原文⇒こちら
------------------ここまで------------------

なぜ今回こういう話をしたかと言いますと、
女子マラソンで昨年の世界選手権の代表選出について、
発表の会見でもめたのは
ニュースなどでご存知の方も多いでしょう。

日本陸連は
「タイムや積極的な走りを重視」と述べたのですが、
この“積極的な走り”って
アイルトン・セナ選手のように
アグレッシブな走りは評価をするが、
アラン・プロスト選手のような
緻密な戦略で勝つ走りは評価しないということか?
ということなんです。

どうしても人間は自分の好みや
自分の基準などで物事を見てしまう傾向が強いのです。

でも、何かを選考する立場の人であるならば、
自分はどういう傾向で物事を見てしまうか、歪みを把握し、
そして逆に自分が見落としてしまいそうな盲点を知り、
その盲点を克服する努力をしなければ
人の評価なんてきちんとできないともいえるでしょう。

ですから面接を複数の人で評価したりするのは
そういう盲点を消す努力とも
いえるかもしれません。

で、話を戻しますが、
アイルトン・セナ選手のような
“速さ”で勝利を積み重ねた選手も、
アラン・プロスト選手のように
“巧みなテクニック”で勝利を積み重ねた選手も、
それぞれの角度から、それ相応の評価ができ、
共に優秀なドライバーと認められるか!?
ということなんです。

で、酒井強化副委員長は
昨年の選考結果の記者会見で
「我々は現場のプロとしてやっている」と
発言したらしいですが、

この酒井強化副委員長が
アイルトン・セナ選手のような選手も
アラン・プロスト選手のような選手も
評価できる人ならば、
田中智美選手が巧みな戦略で優勝したレースを
「レース内容が物足りない(前半消極的だった)」という
発言にはならないということ。

ですから、その会見で質問した
スポーツジャーナリストの増田明美氏が
「すごく主観が入っているということですよね」と
なってくるのです。

昨年の話なので
思い出しきれない方は
スポーツニッポンのウェブニュース⇒こちら
J CASTニュース⇒こちら
などを参照にしてみてください。

酒井強化副委員長は
「我々は現場のプロとしてやっている」というのであれば
自分の歪んだ目を矯正する必要性があると私からは言えます。

先月(5月)下旬、来年の世界選手権ロンドン大会
マラソン代表の選考要項を決定したニュースもあり⇒こちら
少し触れておきたい内容なので
書いておくことにしました。

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