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すべての人が、迷わず、SmartHRを使えるように。使いやすさを支えるUXライティングの仕事

世の中にまだまだ確立されていない「UXライター」という仕事。先駆けて、UXライターというポジションを設けているSmartHRだからこそ体現できる価値や働き方とは?クリエイティブディレクションやコピーライティングを経験して入社した、稲葉志奈さんに話を聞きました!

稲葉 志奈(@inaba)/UXライター
デザイン会社やブランディング会社でウェブディレクター、コピーライター、ライターなどの経験を積み、2022年8月にSmartHRのUXライティンググループに入社。現在は、SmartHRの「文書配付」機能を担当しています。

情報を整理し伝わる文章を書くことへの興味が、UXライティングの仕事につながった

──現在、UXライティンググループではどんな仕事をしていますか?

稲葉: SmartHRのUXライティンググループには、大きく分けて3つの仕事があります。

1つ目は、開発チームの中で、プロダクトの画面に表示するUI文言を作成すること。特定の画面における文言を考えることもあれば、プロダクト内で文言が揺れないようユビキタス言語と呼ばれる用語の定義をすることもあります。

2つ目は、プロダクトをよりお客さまに使ってもらうためのコンテンツを作成すること。具体的にはヘルプページがわかりやすいかもしれません。ヘルプページは操作を説明するコンテンツですが、ほかに活用場面を紹介するようなコンテンツも作成しています。
私は文書配付機能を担当する開発チームに所属しています。文書配付機能は、リリース当初は「雇用契約機能」という名前で、雇用契約書の作成・配付というユースケースに特化した機能を提供していました。2020年9月から、「文書配付機能」に名前を変え、あらゆる人事文書に対応できるよう機能を拡張してきています。しかし、雇用契約書を作成・配付する機能というイメージが強く、お客さまに使用してもらえる場面がなかなか広がらないという課題がありました。そこで、活用場面とその場面でよく配付される書類をまとめた記事をつくり、オウンドメディアに掲載しました。

育休時に配付する書類をまとめた記事の例

活用場面を知ったお客さまがすぐに使い始められるよう「書類テンプレート」の雛形もセットで公開しました。育休や退職時などいくつかの場面ごとに記事をつくったので、活用場面の幅広さを一覧で確認できる資料もまとめました。
そちらはセールスやカスタマーサポートのチームに活用いただいています。
稲葉さんが執筆した「文書配付」ユースケース記事の一覧

3つ目は、SmartHRのサービス開発に関わる人の学習コストを軽減するためのガイドラインづくりです。SmartHRは複数の機能を持ちますが、プロダクトごとに表現が異なると、ユーザーを混乱させる恐れがあります。そこで私たちは、どのように考えて、どのように書くべきかという判断基準をまとめることで、わかりやすさと開発効率を担保しています。 主にライティングガイドラインを作成していますが、デザインパターンを作成することもあります。

業務のなかで課題を発見しガイドラインを作成・更新しています

──稲葉さんは、どんなキャリアを経てUXライティングの仕事にたどり着いたのでしょうか?

稲葉:新卒では情報設計に強みを持つデザイン会社に入り、サービスデザイン、ウェブディレクションの仕事を経験しました。情報の設計や構造化に興味を持っていたため、その会社に就職したんです。
実はそのときはライティングに対して苦手意識がありました。苦手を克服したきっかけは元朝日新聞校閲の前田安正さんです。デザイン会社で社内研修の運営にも関わっていたのですが、著書「マジ文章書けないんだけど」を拝見して、研修への登壇を依頼しました。前田さんは快く引き受けてくださり、その研修を受講して「ライティングって情報設計と近い考え方なんだ!」と面白さを見いだせるようになりましたね。

その後、ウェブディレクターとしてブランディングの会社に転職しました。代表がコピーライターだったため、ライティングやコピーライティングに挑戦する機会がたくさんあり、経験を積みました。ただブランディングの案件の場合、コピーライティングの検討量よりもコピーを中心とした制作物の検討量のほうが圧倒的に多く、書く仕事のPDCAをより早く回したいと感じていました。
より書く仕事を増やそうと入社したのが前職の編集ファームです。ライターとして自ら記事も書きつつ、ディレクターの経験も活かしながら企業のオウンドメディアの立ち上げや運用支援などをしていました。

──SmartHRに入社を決めた理由は何ですか?

稲葉:いろんなライティング手法をインプットするなかで「UXライティング」という仕事にたどり着きました。「人に伝わるように書く」ことや「言葉で再現性をもたらす」ことにおもしろさを感じていたので、UXライティングはやりたいことに近いのではと思いました。

ただ、まだ世の中に確立されていない職種なので、どんな価値が提供できるのか、どんな働き方が求められているのか、いまひとつ腹落ちできていませんでした。私は事業会社での経験もないので、開発の現場におけるUXライティングについては特に知見がありません。とにかく開発の現場で言葉を検討している人に話を聞いてみようと、UXライターだけでなく、プロダクトマネージャーやデザイナー、テクニカルライターの方に話を聞いて回りました。
UXライターという職種を募集している企業は日本だとまだ少ないので、当然のようにSmartHRのUXライターの方にも話を聞かせてほしいとコンタクトをとりました。これが最初の出会いです。話を聞かせていただき、開発チームの中でUXライターというポジションを確立されていること、それゆえにUXライターという職種に対する解像度が高いことを魅力に感じました。面接でお会いした方々の考え方も共感できるところが大きく、入社を決めました。

画面の操作だけじゃない、お客さまのSmartHR体験全体の課題を解決する

──稲葉さんの考える「SmartHRにおけるUXライターの役割」とは何ですか?

稲葉:「わかりやすさ」を支えること、でしょうか。画面の文言やコンテンツを通してお客さまが迷わず使える状態を作り出すことがミッションだと感じています。

UXライティンググループのビジョン

SmartHRというプロダクトをうまく使ってもらうためには、「操作がわからない」という課題と、「どんなシーンで活用すればいいかわからない」という課題の両方を解決する必要があります。SmartHR内でその両方の課題に向き合える職種が、UXライターなんじゃないかと。UXライターは、画面上で迷わず操作してもらうための文言やヘルプページを考えることもできるし、お客さまの業務プロセスの中で何をどうすれば使ってもらえるかを考えて新たなコンテンツを作ることもできます。
「UX」と聞くと画面デザインや操作性に関することを想像されるかもしれませんが、実は画面内のことに留まらず、お客さまがプロダクトを使う体験全般に関わる課題解決に関わることが大事だと思うんです。

──やりがいを感じるのはどんな時ですか?

稲葉:外発的なやりがいでいうと、自分が作成したコンテンツを使ってもらい、それが成果に結びつくことですね。ユースケース記事を一覧にまとめた資料を公開したあと、実際に資料のおかげで契約時期が前倒しになったことがあり、嬉しかったです。
内発的なやりがいでいうと、UI文言やガイドラインを作っている時は、証明問題を解いているような感覚で楽しいです。仕事をしていて「楽しい」と実感できる時間があるって嬉しいことだなと思いますね。

──証明問題を解いてる感覚ってどんな感じでしょう?

稲葉:例えば、画面上でオブジェクトを作成するボタンに配置する文言を検討するとします。「登録」「追加」「作成」などの言葉が候補にあがります。候補のうち、どれを使うべきかを考えるためにはさまざまな情報を集めてくる必要があるんです。具体的には、他画面でどの言葉が使われてるか、分類していくとどういうパターンがありそうか、一般的にはどんな場面で使われている言葉なのか、辞書での定義は……などです。そうした情報を抽象化しながら考えを深めていき、最終的にこれだ!と思える案にたどり着いた時にはすごく達成感がありますね。

さまざまな文脈や言語感覚をふまえて、より伝わる言葉を選ぶ

──仕事をするうえでどんなことを心がけていますか?

稲葉:作ったものをできるだけいろんな人に見てもらい、多様な視点からフィードバックをもらうようにしています。言葉は文脈やこれまでその人が養ってきた言語感覚によって意味が変わります。私自身にも固有の言語感覚があり、私だけの視点で最適解を考えきることは難しいと思っています。いろんな人からのフィードバックを活かすことで、できるだけ多くの人が懸念や不安なく使えるための言葉選びを心がけています。

──UXライティングという職種を経験して、自分自身の成長を感じるポイントはありますか?

稲葉:UXライターとしてプロダクトにどう貢献できるのかの理解が深まっていると感じます。理解が深まったことで、今まで培ってきたスキルをどう使うとよいかへの解像度があがりました。それと同時にもっとこのスキルを伸ばしていかないとという向上心も高まっています。

──UXライターは一般的にまだ新しい職種ですが、どんな方に向いているでしょうか?

稲葉:ライティングをする中で、文脈に合わせて言葉を選んだり、課題や目的に対する解決策を考えることが好きな方にとっておもしろい仕事だと思います。ウェブディレクション経験者や、インタビューのライティング経験者など、誰かの言葉を正しく伝わるために再編集することにやりがいを感じる方も、向いているのではないでしょうか。そういった方と、ぜひUXライティングのスキルを深めていきたいです。


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