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感情に溺れる

おもむろに買ってきたばかりの袋から
彼は私好みのお酒とお菓子を取り出した

空いたばかりのグラスに
手慣れた手つきでカシスオレンジを作る

私はテーブルにあったもう一つのグラスを片付け
新しいグラスを彼に差し出した

眠気とお酒でボーっとしながら
ふわふわする頭で声のする方を向く
「友達来てたのにごめんな。
もしかして男だったんじゃ?」

確かに今夜は私の部屋で
男友達と一緒に飲んでたはずだった
テーブルの上の食べ終わった
ゴミを片付けながら
ちょうどさっき帰ったとこだと軽く嘘をつく

ほんとはウトウト寝かかってた友達
あなたが今から来るって電話してきたから
叩き起こして家に帰したなんて
言えなかった

いつのまにか手を握られてて
このまま朝を迎えても気まずかったので
ある意味タイミングはよかったのだけど

水滴がしたたるグラスに新しい氷をたして
濡れたグラスを持って乾杯する

ようやく目は覚めて、酔いも覚めかけた体に
甘酸っぱいオレンジが沁みていく
すでにお酒が入っていた私のために
リキュールを控えめにしていたらしい
そのほぼオレンジジュースを飲みながら
ようやく冷静に彼の顔を見る

どうやら彼女とうまくいってないらしい
だからって元カノのとこにくるってどうなん?
彼女が知ったら怒るんじゃ?
なんていじってみるけど
付き合ってた頃も、
付き合う前に友達だった時も、
そんな会話なんてできなかった

今の私たちの方が一緒にいて楽なのは
彼も同じだったのかもしれない

今の彼女は私も知ってるバイトの元後輩
私と彼が別れて自分が彼女になった途端
私を敵視するようになったので
関わることはない子だった

私が彼女を知ってるからなのか
うまくいってないってこと以外は何も言わずに
他愛もない話で盛り上がる

だんだんと口数も減ってきて
グラスの中に残った小さな氷を
口に中に流し込んで席を立つ

いやいやいや…
なんで行き先ベッドなの?w
そう言いつつも彼に甘い私
そのまま一緒に横に寝転がって
彼を甘やかす

彼女に悪いだなんてきれいごとを言いながら
嫌いで別れたわけじゃ無い彼の横顔を見つめる

朝まで一緒にいたって
何も起こらない私たちだけど
ドキドキしてしまうこの気持ちは
どうすればいいんだろう
平気なフリしてるけど
こうしているとあなたへの好きが溢れてくる
あなたは何を思っているのだろう…

明日、目が覚めたら
酔いと共にそんな気持ちは覚めてしまって
ただの勘違いなんだと気づくはず
だってそこには
恋人になってもうまくいかなかった現実がある

だけど今だけ…
私の空っぽの心を満たすために
ただ静かにこの胸の高鳴りを感じさせて

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