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「大きな夢やイベントを追うのもいい。だけど、それだけじゃないよ」〜日常のかけがえのないひとコマを〜

大きな夢を抱き日々邁進する。
大きなイベントを控え準備に注力する。
これは素晴らしいこと。
だけど、それらがなくても、
人は感謝や幸福感を得られるという話。

1995年の米国映画「スモーク」の
DVDディスクを何度も観返してきた。

本作はブルックリンの煙草屋が舞台。
店の主人オーギー(ハーベイ・カイテル)は写真撮影を日課にしている。
毎日、街角の同じ所に三脚を立て、同じアングルで街の風景を撮るのだ。

店の客であり友人である作家のポールは、
オーギーのその写真を貼ったアルバムを見て言う
「どれも同じ写真だ」。

オーギーは、同じ構図ながら、
どれ1枚同じ写真はなく、
街全体や、通りゆく人の表情は
どれひとつ同じものはない、と返す。

そんなものかとアルバムのページを
めくり続けるポールは、ひたと手を止め、
急に泣き始める。

数多の写真の中に、
ポールの亡き妻の、
街を歩く姿を見つけたからだ。
わが妻の何気ない仕草と佇まい。
その写真の中に、彼女は生きていると。


2020年のピクサーとディズニーの映画に
「ソウルフルワールド」がある。
ニューヨークの学校の音楽教師、ジョーには大きな夢があった。ジャズピアノのミュージシャンになり、ステージで演奏すること。

ある日、彼にその夢が叶うチャンスが到来する。浮かれ気分の彼は街を跳ね歩き、不慮にマンホールに転落してしまう。
そこから、不思議なゾーンに迷い込む。そこは人がこの世に生を受ける前の世界だった。

ネタバレはここまでとして、彼はその世界で様々な経験を通し、知るのだった。
夢を追うことは大切だが、人生には、もっとかけがえのないことが存在していることを。

日常で、家族で食事をしたり、
おしゃべりしたり憩う時間、
恋人とカフェで過ごす時間、
大切な人と笑顔で街を歩く時間、
こもれ陽の中で木の葉が風に揺れ、
穏やかに道を落ちる時間。

特に大きな予定もない、何気ない日。
大切な人の笑顔や言葉、そして想い。
自然の風と光と音、趣味や旅、本、映画等。

日々の何気ない時間を楽しむことが
いかに貴いか、いかに得難い時間か。
当たり前の日常のかけがえのなさを
ともすれば、僕らは忘れてしまう。

煙草の煙のように。

この4月30日、
映画「スモーク」のシナリオを書いた
作家ポール・オースター氏が逝去。
心に沁みる数々のストーリーに深謝します。
合掌

今日もお読みくださり、
ありがとうございました。
どうか、かけがえのない今を!!

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