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エッセイ
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記事一覧

Lily 2022

 ちょっとゆうちゃん、なんでこんな変な動画ずっと流してるの? こんなの変えちゃってくださ…

kyritani
1年前
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Lily

「あなたの文章はどうしてそんなにも内側に向かおうとするのかな。私だったら小説に形を変えて…

kyritani
2年前
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冬が光るとき

冬が光るとき、世界に降ったあらゆる白が反射して、目を開けていられない。冬が光るとき、閃光…

kyritani
2年前
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supernova (summer of 21)

7月の終わりにはアスファルトにこぼれ落ちるくらい咲いていたノウゼンカズラが、今では数えら…

kyritani
2年前
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エレナの行き先

私たちが住んでいた学生寮は地下1階にランドリールームがあり、コインランドリーでよく見るよ…

kyritani
4年前
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愛より深い海 deeper than love

日本海側の小さな町には町を飲み込むほどの大きな海があり、穏やかな春の日には蜃気楼という幻…

kyritani
2年前
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ラプンツェルの三つ編み

2年前から伸ばし始めた襟足が少しずつ落ちて、肩を通り過ぎ、乳房の半分を隠している。2年で随分伸びたと思う。ここまで伸びたのはいつぶりだろう、10年以上遡らないと、この姿は私の歴史には見つけられないかもしれない。伸びた髪に手ぐしを通し、散りばめた茶色を探しながら会社のトイレの鏡でじっと、私は私の髪を見つめる。 ショートカットに紺色のワンピースを着せられて、居心地悪そうに夏の朝のグラウンドに立っていた少女の、足元に落ちた視線の重さをまだ覚えている。髪型と服の矛盾が棒のように細い

私のギャルはスウェットにサンダルで真冬を歩く

「動きにくい服を着て、きちんと着飾らないと、女の子は街に出てきてはいけませんよ」という圧…

kyritani
3年前
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父親と私

昔、故郷の酒の席で親戚たちが自分の父親について話していたことがある。 彼らが言うには、口…

kyritani
2年前
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嫉妬の焚き火で暖でも取ってろ

自分より年下の人が才能に満ち満ちていたり、私よりも教養深かったり、思慮深かったり、そして…

kyritani
3年前
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ハラユク

乾燥肌だと言われたので、薬局に行ってボディークリームを買ってきた。 まるいプラスチック容…

kyritani
3年前
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自分を好きになる方法

というタイトルの、本谷有希子による小説があったなとこれを書いていてふと思う。本谷有希子の…

kyritani
3年前
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「さびしさはめぐる」

最近は仕事がたくさんあり、会社を出る頃には帰路の飲食店は軒並み電気を消してシャッターを下…

kyritani
3年前
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彼女は夢を追いかけている

「わたし、彼女のこと大好きなんですよ。こういう、夢を追いかけている子が大好きなんです」 多分秋で、ケーキがおいしい店だった。というか、ケーキ屋に併設されていたカフェだった。 同期のシンガーソングライターのライブの前座として一人芝居をすることになったからと、空席を出すわけにはいかないからと、土下座ばりの蝶子の頼みを聞き入れて私は神戸元町の坂をのらくらと上がり、会場になったカフェの隅の席に腰を下ろしていたら程なくして蝶子がやってきて私の向かいに座った。「すごいな」彼女が言う。