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シリコンスロープス・テックサミット 〜著名人も参加する穴場テックイベント〜


ユタ州の壮大な山々の中心地に位置するシリコンスロープス・テックサミットは、革新と起業家精神の灯台として2016年以来毎年開催されており、急速に拡大しています。この年次イベントは、テクノロジー愛好家、業界リーダー、そして新進起業家が集まる場であり、テクノロジーとビジネスの世界における重要な拠点となっています。今回は、あまり知られていないシリコンスロープス・テックサミットに何故注目すべきかも含め、このイベントの魅了をご紹介したいと思います。

ユタ州のシリコンスロープ     出典:Cartifact

そもそもシリコンスロープスって何?

「シリコンスロープス」という名称は、Domoの創設者兼CEOであるジョシュ・ジェームズ氏がユタ州のテック業界ブランディングキャンペーンに使用した後に広く使われ始めました。ユタ州の山岳地帯、特にソルトレイクシティ周辺からプロボやリーハイ、パークシティにかけての地域に位置する情報技術、ソフトウェア開発、ハードウェア製造および研究企業の集積を指す言葉であり、名称の「スロープス(斜面)」部分は、ユタ州の地理的特徴、特に有名なスキー斜面や山岳地形を直接的に表しています。

ユタ州テック業界の成長を祝うサミット

シリコンスロープス・テックサミットは、ユタ州のスタートアップとテックコミュニティを支援し、学び、つながり、奉仕をする機会を提供するために始まりました。このイベントは、起業家精神と機会をすべての人にアクセス可能にすることを目的としており、501©(3)非営利団体として毎年開催サミットを開催しています。


Silicon Slopes Summit 2023の会場の様子 出典:cred

ユタ州で有名なテック企業が生まれ始めた2014年頃、ベンチャーキャピタルの1件あたりの平均投資額は、国内で最も高く、平均で1件あたり5,130万ドルでした。また短期間でテックコミュニティが栄えたところも見逃せません。シリコンスロープスのコミュニティは、10億ドル以上の価値があると評価されている企業を含む、6,000社以上の革新的なスタートアップやテック企業が存在すると言われています。その結果、シリコンスロープスの中心とされるリーハイ市の人口は、今では77,000人以上の大きな街に成長しました。

シリコンスロープスに本社を置く企業の例

Qualtrics :プロボに本社を置く、エスクペリエンス管理ソフトウェアを専門とする最も著名なテック企業の一つ。2022年の売上額14億5,860万ドル
Pluralsight : ドレイパーに本社を置く、ソフトウェア開発者、IT管理者、クリエイティブ専門家向けの様々なビデオトレーニングコースを提供するオンライン教育企業。2022年の売上額5億4400万ドル
Domo  :アメリカンフォークに位置する、ビジネスインテリジェンスツールとデータ可視化を専門とするクラウドソフトウェア企業。2022年の売上額2億5,800万ドル。
Vivint Smart Home :プロボに本社を置く、スマートホーム技術の主要な提供者。2022年の売上額16億8000万ドル
Podium: リーハイに位置するポディウムは、地元のビジネス向けのコミュニケーションおよび支払いプラットフォームであり、顧客とのやり取りを管理するのに役立ちます。2022年の売上額1億ドル
Overstock.com : 主にオンライン小売業者であるオーバーストック.comは、ミッドベールに本社を置いており、特に電子商取引とブロックチェーン技術における技術革新で注目されています。2022年の売上額19億3000万ドル
Ancestry.com : リーハイに位置する、家族歴を発見するのを助けるためにテクノロジーを活用している、系譜と歴史記録サービスでよく知られています。2017年の売上額1億ドル

ユタ州のテック業界は、カリフォルニアのシリコンバレーの成長と活力を反映しています。ソルトレイクシティで開催されるサミットは、単なる会議ではなく、今では地域のテック業界の急速な台頭を祝う場ともなっています。

多様なアジェンダ

サミットのアジェンダは、ユタ州の風景と同じくらい多様です。業界の巨頭による基調講演から、最新のテックトレンドに関するパネルディスカッションまで、AI、ブロックチェーン、働き方の未来など、幅広いトピックが取り上げられます。ワークショップやネットワーキングイベントは、参加者に学び、共有し、つながるための貴重な機会を提供します。

近年の目玉スピーカー

2020年:マーク・ザッカーバーグ氏(Facebook創設者兼CEO)、ジム・ブライデンスタイン氏(NASA長官)、キルステン・ウォルバーグ氏(DocuSign CTO)など
2021年:ティム・クック氏(Apple CEO)、スティーブ・バルマー氏(L.A. クリッパーズおよび元Microsoft CEO)、ボブ・ピットマン氏(IHeartMedia Inc.)など
2022年:ティム・クック氏(Apple CEO)、米国上院議員ミット・ロムニー氏など
2023年:ジム・ランゾーン氏(Yahoo CEO)、ウィル・グラニス氏(Google Cloud CTO)、ジミー・ピタロ氏(ESPN会長)、エド・バスティアン氏(Delta CEO)

Silicon Slopes Tech Summitに参加したティム・クック氏(Apple CEO)出典:AppleInsider

Silicon Slopes Tech Summitの魅力ポイント

  1. 地域と密着したアジェンダ: 多くのテックイベントが技術自体に主に焦点を当てるのに対し、シリコンスロープス・テックサミットは地域開発、起業家精神、リーダーシップ、政治的および社会的問題に関する議論も行います。

  2. 著名スピーカー: 他のサミットと比べ、主要なテック企業のトップエグゼクティブ、政治家、その他の影響力のあるリーダーから話を聞く機会が豊富にあります。

  3. 規模とスケール: メジャーなテックイベントと比較し、シリコンスロープスサミットは、トップクラスのスピーカーや出展者を惹きつけながらも、意味のあるネットワーキングと交流を可能にする程度に大きさを維持しています。

  4. 手頃な価格とアクセシビリティ: スピーカーやネットワーキングの質を考えると、チケット100ドルは非常にお手頃な金額です。

シリコンスロープスサミットは通常、毎年開催され、多くの場合、年の初めに予定されています。近年では、1月や2月に開催されることが多いですが、2024年の日程は未公開となっています。次回のシリコンスロープスサミットのタイミングに関する最も正確で最新の情報を得るためには、公式ウェブサイトを定期的にチェックすることをお勧めします。これまでのチケット価格は、最初の100人が100ドル(最低価格)、その後は150ドルに上がります。

来年は視野を広げるチャンス

シリコンスロープスサミットの経済的影響は過小評価できません。ユタ州はテック企業にとっての主要な場所として存在しているだけでなく、雇用創出や投資機会を通した地元経済を活性化、そして州を超えた影響力も持ちつつあります。テック企業のサミットというと、サンフランシスコを中心とした西海岸東海岸のイメージが大きい方も沢山いらっしゃると思います。しかし海岸部の勢いに匹敵するテックハブに今後注目を移し、来年は他州のテック系イベントにも参加してみてはいかがでしょうか。


トップ画像 出典:NPR

著者名:ホールドストック絵里花
役職:ビジネスコンサルタント
所属組織:スカイライト・アメリカ(Skylight America Inc.)
略歴:米国で修士を取得後、現地日系企業とAWSでの就労を経て、学生時代にリサーチャーとしてインターンを行っていたSkylight Americaに参画。米国企業と日本企業での過去の勤務経験を活かし、バイリンガルなコンサルタントとして活動。

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