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【推し活】あの娘のSNSをみてしまったから

会社の昼休み、不意打ちするようにSNSが飛び込んできた。彼女のアカウントだった。
彼女は同担で古参だ。それだけ個サポ歴も長い。リアルであったことがあるけど、深い付き合いはしていない。SNSがつながってるぐらいしかない。ちなみにnoteもやってないので、気付きもしない。ただ、会ったら挨拶をする程度。
こちらが勝手に拗らせた同担拒否をしているだけ。アカウントを見ると辛くなるし、胸が痛くなる。
ひどくならないうちに上へスワイプする。他の人のアカウントが出てきて、逃げ出せたような錯覚に陥った。

きっかけは、多分推しが配信でつぶやいた言葉だったかもしれない。
「ありがとうね」
悪気はなかったかもしれない。多分、市内にあるチームの事務所経由で何かを送ったのだろう。それが推しの好物でもあったから、喜んでいたのを知ってる。それを言う前から、推しがSNSで写真を上げているのを見た。
推しが幸せそうにしている表情が好きで、それ以前のプロセスなんてわかっていないから「うんうん、かわいいね」なんて言えちゃってた。でも、それが何なのかわかった時点で「……抜け駆けしないでよ」という言葉に変わる。気を遣う感じで公開練習日の時に会って、渡せたらいいなと思う程度のものしか出せない腹立たしさも募る。

このところ彼女にリアルで会うことはないが、SNSの世界で撒き散らしているのを見かける。アウェイ遠征で行った時の記念に取った1枚の写真、過去の推しが写っているタペストリー…流れてくるだけで死にそうになる。
フォロー解除すれば楽かもしれないが、そんな勇気すらない。大人だから、リアルに会えば挨拶をするだけで十分。ベタベタとした付き合いは似合わないから、距離をおいてるだけ。オンラインのときに会ったら、上っ面で笑って推しを見てるだけにする。

昼休みに飛び込んだ写真は、推しの背中から見た姿だった。「私はこの角度が好き」といったのは事実だろう。好きなのは認める。同担だから、一応。
でも、えぐるような写真は辛くなるから不愉快。もっと若かったら、同担拒否なんかしてたかもしれないけど、人生の折り返しも近づいてるような人間はそんなことをするほど出来ていないから、スルーすることにしている。
もし、私が出来た人間だったら「わかるよ!それ!!」って言ってたかもしれないが、彼女の存在自体が無理になってるから何も言わない。
――共感できるほど、強い大人じゃない。

多分、「お前は推しのリアコじゃないのか?」と聞かれたら、「そうでしょうね」としか言えない。知らぬ間に彼のことが好きになっていて、もっと早く出会えたら、つながっていたら運命は変わっていたかもしれないから。けれど、出会った時の彼は既婚者で、私は単なる社会人のツラをしたアラフィフのファンで…彼の幸せと活躍を祈るしか出来ない存在だと思ってる。2次元(2D)の世界が好きなリアコたちは、結婚してようと何してようと好き勝手に世界を描いている。それがフィクションだと思っても、「これが現実」と置き換えて生きているのだろう。ログインしようが、何しようが世界とつながっているだけ。
しかし、リアルな人間を好きになって、永遠の片想いを続けていると拗らせてしまうだけで終わってしまう。そのギャップと板挟みになって苦しくなって、世界を描くことができなくなる(それでも3Dの世界で描ける人がいたら教えて)

彼女はどう思っているか知らないけど、私は彼のことが好きでたまらない。だからザワザワさせるものに対して、許せない感情も湧いてくる。以前のnoteにも書いたけど、妄想だけは得意分野だったからどこかで線引きをしないといけないと思っている。だから、リアルを知ってる人に向けては何事もなかったように振る舞い、「(彼が好きだから)練習を見に行くんだ」と公言し、ここの世界でしか感情をぶつけるしか出来ない。気づかれたら、頭のおかしい人だと認識されてしまうから。

夕方になって、彼女のSNSが視界に飛び込むことはなかった。「彼はいい男だし、人気だから仕方ないね」というしか呟けなかった。ただ、心に残ったのは私は彼に、永遠の片想いをし続けていることがはっきりと分かったことだった。

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