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還暦おやじのスタディアブロードWith ウクレレ㉕

なんてこった!マニラでの最初の英会話レッスンの先生は、頑固者のフィリピーナ⁉


 疲れていたので途中で目が覚める事もなく朝まで寝てしまったが、変な夢を見たものだ。
 道路を歩きながらしゃべっている声で目が覚めてしまった。多分外壁は薄っぺらなのだろうから、この部屋でウクレレを弾いたら間違いなく通行人に私の弾き語りが聞こえちゃうだろう。

 もしかしてウクレレ好きな人が声をかけてくれて、一緒に練習することになったりしてなんて妄想していた。この部屋には窓がなく天気も時刻も分からないので、スマホで確認してみると現在の時刻は6時だ。

 この時期のマニラは乾季なので雨が殆ど降らずに毎日快晴のはずだが、毎朝の習慣なのでスマホで気温を確認してみる。

鍵:「OK google. Good morning. Could you tell me, what the weather today?」 おはよう。今日の天気を教えてくれる?

G:「It’s a sunny day today. 」

と答えてくれた。ついでに気温も聞いてみる。

鍵:「What’s the temperature today in Celsius?」今日は摂氏何度ですか?

G:「The minimum temperature is twenty-four and the maximum temperature is thirty. 」最低気温24度で最高気温30度。

鍵:「Is it going to rain today?」今日は雨が降りますか?と、日本にいる時と同じように訊いてみた。

G:「No, today in Manila is no chance of rain.」いいえ、マニラでは今日は雨が降りません。

鍵:「thank you.」ありがとう。

G:「Happy to help.」お役に立ててうれしいです。

  最適気温24度なのですっぽんぽんのままでいても少しも寒さを感じない。ベッドに腰かけて毎朝のルーティンをやってみる。
  まず、ウクレレのストラップを肩にかけてチューニングをして、左手で基本的なコードを押さえてゆっくり弾いてみる。それから、ドレミファソラシドからドシラソファミレドと何回か繰り返す。

  そして、ソロで♪ハッピバースデイ♪、♪ハイホー♪、♪上を向いて歩こう♪を弾いて、弾き語りで、吉田拓郎の「結婚しようよ」とジョンデンバーの「カントリーロード」、ベン・E・キングの「stand by me.」を弾き語りしてから、ウクレレと楽譜を箪笥の上に戻した。

  この中で、英語の曲はカントリーロードと「stand by me.」。カントリーロードの正式な曲名は「Take Me Home Country Roads.」日本語に訳すと“家まで連れっていって故郷の道よ”だが、曲名が長いのでいつも単にカントリーロードと呼んでいる。

  そのことで私が冷や汗をかく羽目になろうとはこの時点では夢にも思わなかった。それからスマートフォンアプリのニック式英会話ジムで英会話の練習を15分。今朝は、レッスン動画の “奇跡の応用法”を見てから音読で“パーティーに来ない”、“映画を観に行こう”、“どんな男性が好き”などを練習した。
 
  今日から英語の授業開始、一時限目は午前10時から10時50分で2時限目が11時から11時50分。先生のシフトについては今朝の朝食時にもらえる事になっている。そして午後は14時から14時50分で4時限目が15時から15時50分。先生は全員女性と聞いているので、どんな先生に会えるのか今から楽しみだ。

  そろそろ朝食の時間なので食堂に向かうことにする。いつものルーティンでカギを締めて、突起物に左手を添え無事に狭い道から道に出て、しばらく塀沿いに歩いてスクールの門を通って、スリッパを脱いで建物の入り口から室内に入った。

  高齢者テーブルにはまだ誰もいないがニューフェイスとしては、遠慮して端っこにリュックを置いてビュッフェの列に並んだ。

 「Good morning. Shigeki.」事務職員で私のお気に入りのフルーツが声を掛けてくれた。私は「Hi!」と答えたら。先生のシフト表を渡してくれた。

  そして「The teacher will go to your room at 10 o’clock.」あなたの部屋に10時に先生が行きますって説明してくれた。この表によると、1時限目はジャム先生だ。

  料理をトレーに山盛りに乗せて高齢者テーブルに腰を下すと、このテーブルを指定席にしているメンバーが階段を下りてきた。ハイ!モーニングなんて挨拶を交わしながら料理の並んだ列に並びトレーを持って、夫々が指定席に座った。

  一番真ん中の席は玉ねぎさんで、それを囲むようにご夫婦と女性が3人。砂さんは、私の隣に座って黙って食事をしている。玉ねぎさんの箸が止まると筆談が始まった。きっと昨夜のマッサージの事を話しているのだろう。今朝は砂かけさんがノートを持って来ていて私に質問をしてきた。

砂:「今日のあなたの先生はだれ?」

私がシフト表を見せると。

砂:「ジャムかぁ。」

鍵:「どうかしましたか?」

砂:「あたしジャムを別の先生にチェンジしてもらったのよ。」

鍵:「なにがあったのですか?」

砂:「私、彼女とケンカしちゃった。」

鍵:「どうしてですか。」

砂:「自己紹介をパスしようと思っているのに、やらなければダメって言われたのよ。」

鍵:「どうしても嫌だったらやめたら良いじゃないですか。」

砂:「そうしたいけど、ジャムからやらなかった人は今まで一人もいないって言われたの。」

鍵:「そうか。自己紹介は全員やらなければならないってことなのですね。」

怒らすと怖い!

砂:「そうそう、それで英語で自己紹介を書いてくれたので、読んでみたら鼻で笑われたのよ。彼女は、私の発音がカタカナ読みで何を言っているか全く分からないっていうのよ。失礼しちゃうわよね。それに、ナイス トウ ミイト ユウって言ったら、トは発音しない。なんて、きつく言われたのよ。私は初心者だから優しく教えてほしいのにケンカ腰なのよ。」

鍵:「それはひどいな。そのことを事務の人に話したのかい。」

砂:「そうなの。あまり腹が立ったから事務長に話して、2時間目の授業は事務員のフルーツに教えてもらったのよ。」

鍵:「事務長も対応が速いな。私もフルーツに教えてもらいたいな。」

砂:「それはだめらしいわよ。私の場合は、直ぐに代わりの先生が見つからなかったので、フルーツに教わることになったけど。彼女は、事務員として契約しているので教える事はだめらしいわよ。それに彼女は日本語がペラペラなので、英語の質問の答えに生徒が困ると直ぐに日本語で教えてしまうので、先生としてはダメらしいのよ。」

鍵:「そうか。残念だ。ジャムがそういう先生なら私が書いてきた自己紹介文は見せないようにするよ。見せて紹介文を大幅に訂正させられ、読んで発音の間違いを細かなところまでダメだしされたら自信なくしちゃうし。それこそ、自己紹介をしたくなくなるから。」

砂:「その方がいいよ。ガンコでナマイキな子だから。あなたも気をつけてね。」

頑固で生意気なフィリピーナ

鍵:「アドバイスありがとう。」
それにしても頑固で生意気なフィリーピーナってこんな子かなぁ。怒らすと怖いだろうなぁ。想像しただけで恐ろしい。

  砂さんはノートを閉じて「Good luck!」ごきげんよう。と言ってトレーを持って立ち上がった。私は「You too. See you soon.」あなたもね、またあとで。と言って親指をたてたが、もしかしたら砂さんの英語のレベルは私より低いかもしれない。

  午後の先生であるマーガリンの事について、昼食の時に聞いてみようと思いながら周りを見渡すと、高齢者テーブルもその他のテーブルにも生徒の姿はない。9時から授業が始まる人が多いのだろう。私は10時からだからまだ時間がある。

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