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#91 エマーソンの思想と賢治 その1【宮沢賢治とエミリィ・ディキンスン その29】

(続き)

○  エマーソンの思想と賢治 その1

エマーソンの思想が、宮沢賢治が法華経を理解する上での助けとなるような、東洋的な側面を持っていたのはなぜでしょうか。

エマーソンは、もともとキリスト教のプロテスタントの一派であるユニテリアン派に属する牧師でしたが、信仰に対して疑問を持ち、牧師を辞めました。イギリスのカーライルなどからの影響を受けると同時に、東洋思想にも深い興味を抱き、ブッダやヒンドゥー教の思想などに触れ、ヒンドゥー教の経典の1つである「ヴァガット・ギーター」は、エマーソンにとって重要な書物だったと言われています。そして、エマーソンの思想を支持したアメリカの人々や、当時エマーソンが住んでいたニューイングランド地方の人々も、エマーソンなどの影響から、東洋思想に興味を持っていたと言われています。

エマーソンに影響を与えた東洋的な思想に、神が、人間や宇宙、自然など、全てのものの中に存在するという「汎神論」という考え方があります。エマーソンが属していたキリスト教的な考え方では、神は、人間とは別に信仰の対象として存在するという考え方が主流であり、そのようなキリスト教的な考え方をエマーソンが信じることができなかった事が、牧師を辞めた理由の1つです。

(続く)

2023(令和5)年10月30日(月)

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