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クライミング・ゲマインシャフト

2023年5月。年末年始以来の大型連休を僕は待ち侘びていた。毎年、黄金週間はどう過ごすか悩むもの。今年は兵庫に2泊3日でツアーに行くことになった。

生野ボルダー。
最近、公開されたエリアだ。姫路から竹田城で有名な朝来市方面に向かって車を走らせ1時間弱。ゴルフ場や別荘、キャンプ場などが並ぶプチリゾートエリアの近くに岩が点在している。

最高の天気だった。日向は暑いが林の中は涼しい。風も相まって時間帯によっては寒いと感じたぐらいだ。高難度の課題は多くないものの、ちょうど良いサイズの岩からハイボールまで揃っていて十二分に楽しめる。

旧友との再会

僕はクライミングを2012年の5月に始めた。かれこれクライミング歴は11年にわたる。育ったジムは品ロキだ。品ロキでは8年近く登っていたが、その間に多くの人に出会った。

通称、トレ壁。今はサテライトボードという謎のシステムボードに切り替わってしまっているが、昔は130度ツライチのまぶし壁が常連の溜まり場だった。そこにファイル課題を量産するアカケンという男がいて、僕は彼の作った課題をよく登っていた。

8年という時間は振り返ると短いものだが、その間にいろんな出来事がある。クライミングを始める人もやめる人もいる。ライフステージの変化や転勤転職などでホームジムを変える人もいる。アカケンも転勤で兵庫に移り住み品川で会うことは無くなった。かくいう自分も今は東京ではなく愛知にいる。

かれこれアカケンとは5年近く会っていないが、兵庫のボルダーに行くのであれば、せっかくだからと思い声をかけてみた。するとアカケンはGWの事故渋滞に巻き込まれながらも可愛い子供を二人連れ、奥さんと一緒に岩場に来てくれた。

昔と変わりないアカケンと他愛のない話をしながら一緒に登る。お互い年を取ったりライフスタイルも変わったりしているけれども、岩場で過ごす時間は至極貴重だった。

ゲマインシャフト

わざわざタイトルには、ゲマインシャフトというドイツ語を使ってみた。コミュニティや共同体という意味を持つらしい。なんとなくコミュニティというよりゲマインシャフトの方がおしゃれかなと思いドイツ語を選択してみたわけだが、そんなことはどうでもよくて、僕はクライミングが提供してくれるコミュニティ機能に感謝をしているという話をしたいわけだ。

そもそも生野ボルダーには、品ロキ時代に一緒に登っていた仲間3人と行くことになっていた。このうち二人は現在京都に、もう一人は神奈川に住んでるもんだから、今は誰一人も品ロキでは登っていない。

そんな風に散り散りになりながらも、大型の連休に予定を合わせて岩に行く。岩で互いにディスりあったりマウントを取り合いながら、あーだこーだ課題をセッションしていくのが楽しかったりするもんだ。

クライミングをはじめていろんな人たちと出会ってきた。気の合う仲間もいたし、気に食わないやつも当然いた。こうした人との出会いの場・コミュニティをジムや外岩は間違いなく提供してくれている。このコミュニティ機能は、クライミングを続けていく上で大きな魅力だと思う。

強くなって成長を感じること、かっこいい課題を登って悦に浸ること、恐怖のマントルを乗り越えて生を実感すること。これはこれで魅力的だけれども、それだけではない。クライミングを続けることで得られる幸せは存在する。生涯スポーツとしてクライミングを長く続けていくことには価値がある。短く終えてしまうのは勿体ない。近視眼的に成果を求める時期があってもいいが燃え尽きない方が良い。

そんな風に思えたゴールデンウィーク。終わらないで欲しいけど、とりあえずまた来年会いましょう。