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「コクリコ坂から」を観ました

 「ゲド戦記」から「コクリコ坂から」を観ました、ゲド戦記は正直言って物足りないし納得できないエンディングということもあったのですが、宮崎吾郎監督作を1つ観ただけではなんとも判断し難かったのです。

 そこで吾郎監督の2作目にあたる本作を観ることにしたのですよ、前情報は一切ありません。
 タイトルから内容を想像するのは難しいですね、ポスターを見ても女の子が1人いるだけです、一体どんな物語なのでしょうか?
 この雲をつかむような感覚は最近味わいましたね、宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」もどんな話か想像も出来ないまま映画館に行ったんですよ。
 本作は企画と脚本が宮崎駿さんです、親子合作というわけですね。

 さてここから良かったポイントと気になった点を挙げていきましょうか。


主人公が健気で好感が持てる

 主人公メルは下宿屋の娘、住人たちの食事も作ったりしながら高校に通う女子高生です。
 今時こんな苦労をしている娘さんはそういないでしょう、今だと未成年の就労問題になってしまうのかな? 時代的にこういうのは普通にあったことなのでしょうか。
 健気に働く主人公を見て好感を持ちました、私は真面目に頑張る人が好きなんです。

下宿の住人が個性豊か

 下宿に住んでいるのはほとんど女性です、これがなかなか個性豊かなんですよ。
 画家志望の女史・女医・世話好きのオールドミス・祖母・妹・弟です、それぞれに良いキャラクターですね。
 物語にはそれほど絡んでこないんですが、こういう脇役もしっかり描写しておくと作品に厚みが出ると思うんですよね、短い尺で下宿での生活感をちゃんと感じさせてくれました。

洋館カルチェラタンの趣き

 物語の半分は古い洋館カルチェラタンの取り壊し問題なのですが、これが外観・内装ともに趣があってとても良いんですよ、わびさびの世界です。
 カルチェラタンは文化部が部室に使っている古い建物です、老朽化に伴い解体が検討されているのですが、文化部の生徒たちが反対しているんです。
 活動内容がよくわからない謎のクラブが群生している様は楽しそうで良いですねえ、運動部とはまた違った青春を感じました。

街の風景と音楽がノスタルジック

 舞台は最初の東京オリンピックがあるという時代ですから街並みは何ともノスタルジックな雰囲気です、私は年齢的に直接見てはいないのですが、映画などで観た高度経済成長期の日本の風景に心を打たれました。
 本作はBGMは控えめなんですが、街のシーンにはその当時のイメージの曲を使っていましたね、坂本九さんの「上を向いて歩こう」がとても印象的でした。

 さて良かったのはここまでです、ここからは気になった点を挙げていきましょう。

劇中で何も起こらない

 これに尽きるんじゃないでしょうか、何かあるぞあるぞと思って見ていたら何も起こらずエンドロールが流れたという感じです。
 物語のテーマは2つ、メルとカザマ先輩の恋愛の行方とカルチェラタンの取り壊し問題です。

 まず恋愛の方ですが、2人はお互いに一目惚れのような感じで惹かれ合うんです、恋のライバルキャラも登場しませんからすんなりと両思いになります。恋のさや当てとか駆け引き的なことは一切ありません、実に話がスムーズですね。
 中盤で2人の父親が同じなんじゃないかという話になります、血がつながった兄妹では結婚できませんからね、2人にとっては大きな問題です。
 これは肉親の間の恋というテーマなのでしょうか、深い問題になりそうで力が入りました。
 でも何やかんやで父親が違ったということがわかってめでたしめでたしです・・・・・、何ですかこれは? ご都合主義にもほどがあるでしょう! 力が一気に抜けました。

 次にカルチェラタンの取り壊し問題ですが、中盤でついに取り壊しが決定してしまいます。
 決定を覆すべく生徒たちで埃だらけで汚い館内を掃除して、実物を見てもらおうと理事長に直談判するんです、そしたら理事長が来てくれて取り壊しは中止されます・・・・・、何ですかこれは? イージーすぎるでしょう! 良かったという感情より拍子抜けという気分でしたね。

 とにかく劇中で起こる出来事が少なすぎて起伏が無いんです、あまりにも物事が順調に行き過ぎて面白みがないんですよ、困難を乗り越えた先にある至福というものがこの作品にはありません。
 

 中身が薄いので指摘するポイントも少ないですね、では採点に行きましょう。

総合評価

・ストーリー 10点
 前述したように劇中で大きな事件は一切起こりません、問題はあるけど「なんとなく上手くいったね、めでたしめでたし」という感じです。観終わった後に頭の中に何も残らないんですよ、だって何も起きなかったんだもん。
 物語というのは起承転結が大事だと言われますよね、「起」つまり導入部は特に大切だと思うんですよ。空から少女が降ってきたり祟り神が襲って来たり何か大きな出来事があるものじゃないですか、それが本作には無いんです。

・ビジュアル 65点
 ジブリですから作画は良いです、キャラクターは特に印象に残らなかったですが洋館カルチェラタンの内装は良かったですね。
 街の情景も良かったですよ、なんだか懐かしいような気持ちになりました。

・音楽 45点
 下宿屋や学校で流れるBGMは控えめでした、特に印象に残る曲はありません。
 街だけ昭和の香りがするような曲が使われていました、うーんノスタルジック。印象に残ったのは「上を向いて歩こう」ぐらいですかねえ。

・キャラクター 55点
 下宿屋の面々はなかなか良いキャラクターだったと思うんですが、学校で会う人たちは描写が薄すぎるために個性を感じられません。
 主人公メルはあまり感情を表に出さないタイプなのですが、父親を亡くした心の傷やカザマ先輩への恋心などで苦悩する様子に共感できました。

・総合評価 55点
 いろいろ言ってたのに甘い採点だと思われるでしょうか? でもちゃんとした理由があるんです。
 ストーリー的には落第点ですよ、だって何も起こらないんだから。
 しかし映画にはいろんなタイプがあると思うんです、遊園地で例えるならびっくり仰天の物語を楽しむ映画がジェットコースターだとするならば、本作は景色を楽しむ観覧車のようなものでしょう。
 毎回世界の危機が訪れなくてもいいと思えば受け入れられなくもないでしょう、シャーロックホームズの冒険で言うなら依頼人が来なかった日という感じです。
 全部の映画がこうなっては困りますが、こういう映画があってもいいんじゃないでしょうか。


 宮崎吾郎監督の作品を2作見たわけですが、物語の起伏が少ないのが特徴なのかなあ? なんともつかみどころがないですね。

 さてここのところジブリばかりで飽きてきたので、次は気分を変えて全然違うジャンルのものを観ようかな。


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