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夜光おみくじ

夜の山を甘く見ていた。街灯のない山道は闇に包まれ、得体の知れないモノが足元から飛び立ってはパニックを引き起こす。既に2回尻餅を付いた私は泣き出したい気分だ。

「神社、そろそろだよね?」
「ん…」

今回のルールは男女ペアで裏山の神社まで行き、木に結ばれたおみくじを1つ取ってくること。こっちは気丈に振舞っているのに、聡は見た目によらず臆病で、ずっと顔を強張らせたまま全然言葉を発しない。ほんと最悪…

「あっ、鳥居だ!」

ノロノロ歩く聡をおいて神社に駆け寄り、目当ての木を探す。
早くおみくじを取って戻ろう。あれっ⁉
木の辺りで何かが青白く光っている…全身に鳥肌が立つ。
その時、背後の気配に振り返ると、白い顔をした聡が立っていた。

「見て」

目を凝らすと、暗闇に蛍光色でハートの形と私の名前が浮かびあがる。
聡が震える声で言った。

「俺と付き合ってくれ」

ははぁ、さては美樹たちもグルなのね。
でも残念ながら、この神社に縁結びのご利益はないんだよ、聡。


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