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シャレン!インタビュー コーヒーを通じて互いに支え合う社会の形成へ 第三弾:大分トリニータ編

「一杯のコーヒー」がチームを支え、福祉を支える


このコンセプトを掲げ、2021シーズン、コーヒー豆の販売を開始したJクラブがある。

大分トリニータは、昨年9月に合同会社Special SUPPORTとソーシャルアクションパートナー契約を締結し、10月から「トリニータ|プレミアムコーヒーショップ」<https://trinita.special-support.com>にて販売を開始した。

トリニータプレミアムコーヒー
https://trinita.special-support.com/

トリニータプレミアムコーヒーと名付けられた本商品には、中深煎りされた豆そのものの状態と粉挽きの2種類があり、現在は200g税込2,200円で販売が行われている。ブラジルでしか成し得ないナチュラルな甘みと香りであり、苦味の中に際立つ甘さが感じられるコーヒーとなっている。飲んだ際に、上品でありつつも、コーヒーに疎い自分でも美味しいと感じるものであった。

またこれはJリーグが掲げるシャレン!活動でもある。シャレン!とは、「世界でいちばん地域を愛するプロサッカーリーグ」になるために、Jリーグ・Jクラブが地域の企業や団体と共に、社会課題や共通のテーマに取り組んでいる社会連携活動のことだ。まちづくりやダイバーシティなど、テーマは多岐にわたる。

中でも大分トリニータは福祉をテーマに挙げた。コーヒー豆の焙煎から袋詰め、発送までの作業を7つの福祉事業所で行うことで、障害のある方々とクラブが互いに支え合うことができるのだという。

さらに今回クラブが連携を図っているのは、地元大分の会社Special SUPPORTと福祉事業所であることにも注目したい。これは創設当初よりJリーグが掲げてきた理念である「地域密着」にも非常にマッチしているといえる。いわゆる「親会社」が存在しない大分トリニータだからこそ、シャレン!を通して地域との繋がりを深めていくことは、クラブとしての大切な活動の一つなのだ。

今回はコーヒー豆の販売に関わった中から3つの連携団体への取材を通して、彼らの想いを、大分トリニータサポーターに、全てのJリーグを愛する人たちに、そして福祉とスポーツとの関係を考える人に届けていく。


「地域のハブ」として地域にとって生活の一部へ


第三弾は大分トリニータ ソーシャルアクション事業部の内野良純(以下 内野)へのインタビューである。
インタビュー実施時期としては昨年の天皇杯決勝を控えたタイミングであり、チームに緊張感がある状態にも関わらず、今回のインタビューを受け入れてくれたことに、この場を借りて感謝したい。
また今回のシャレン!活動のみならず、大分トリニータの社会貢献全般に関する質問も行い、クラブとしての考え方を知ることができた。

地域に強く根付いたクラブとして、この活動に秘められた想いを紐解いていく。

Sircle:Jリーグ観戦者調査の結果を見ると、大分トリニータは地域密着度が高いことが分かります。そんな大分トリニータが社会貢献活動を行い始めたときのことや、そのきっかけなどを教えてください。

内野:最初は子どもたちへのサッカー教室のようなサッカーがメインの地域貢献活動を行っていました。
チームがJリーグに上がり、強くなり認知度が高まっていく中で、次第に地域の様々なイベントや活動へ呼んでいただくことが増えていきました。
そして受け身ではなく、我々自身が地域貢献活動にトライしていく必要性を感じ、様々な活動を行うようになりました。

幼稚園でのサッカー教室の様子

Sircle:年月とともに変化があったのですね。

内野:はい、2022シーズンはJ2降格が決まってしまいましたがJ1クラブの中でも資金力がなく、J1クラブ平均40億円の年間資金であるのに対し、トリニータはJ1平均の半分にも満たない17億ぐらいしかありません。
チームを維持するためには資金も必要で企業さんに色々な活動を一緒にやっていただけませんかと依頼して、スポンサーさんを通じてお願いをして、さらに次の段階へと上がっていったイメージですね。

Sircle:そこからシャレン!活動へと広がっていった経緯をお聞かせください。

内野:1対1の活動が多い中、三年ほど前からJリーグで「シャレン」が始まったことで三者以上の活動機会が増え、幅が広がったと感じています。
シャレン!の「三者以上の協力」という部分で広がりやつながりがさらに生まれていくということで、もっともっと取り組んでいきたいなと考えるようになりました。
シャレン!でトリニータをハブにして地域の皆さんに元気になってもらいたい、町おこしだったり、困ったときにトリニータをつかってもらいたいと思っていました。
今回のお話もSpecial SUPPORTの藤井さんから話をいただいて本当にありがたいなと想いながら取り組ませていただきました。

Sircle:社会貢献やシャレン!はやはり地域や企業が深く関わる取り組みですね。先日の天皇杯の準決勝の試合を観戦させていただいたのですが、その際にも選手のあふれる想いという部分を感じ取ることができた試合だったかと思われます。
選手個人以上に、チームのため、クラブのためといったプレーが多くあり、そこにはこういったシャレン!活動や社会貢献活動を通じて地域と関わり合い、地域を代表しているという意識が選手にあるのではないかと考えました。

内野:そうですね。まず選手はこういった取り組みに非常に積極的ですね。お願いしたら、どんどんやってくれます。
また自分たちの影響力という部分についてもよく考えてくれていて、社会貢献の発信についてもとても協力的に参加してくれます。

Sircle:なるほど、選手も含め素晴らしいクラブですね。しかしその一方で以前は、2009年の債務超過や2015年のJ3降格といった苦難があったわけですが、それらを経て現在の大分トリニータの地域とのつながりの変化といったものはあったのでしょうか。

内野:まず債務超過の直前に2008年のナビスコカップ(現在のルヴァンカップ)優勝があり、地方クラブが優勝したということで、メディアにも多数取り上げていただきました。
そのため経営危機の際には、クラブ名は県民の皆さまに浸透しており、「チームがなくなるかもしれない」ということに注目してくださり、(クラブが)残ってほしいという要望をたくさんいただくことができました。
またJ3降格の際は、降格したにも関わらず、前年のJ2シーズンよりも平均入場者数が上回っていました。
そういった意味では県民の皆さんは降格をしても変わらず応援して頂けました。さらにスポンサーの方たちも、普通は降格すればスポンサーの数が減ってしまうわけですけれども、そのときはほぼ変わらず支援して頂けました。
そういったところで、債務超過やJ3降格ということがあっても変わらず応援してくださったことは私たちとしては非常にありがたかったことでした。

2008年のナビスコカップ優勝

Sircle:チームの困難をもサポートをしてくれる県民の方やスポンサーの方たちの想いが表れていますね。
それでは、今回のコーヒー事業や今までの社会貢献活動を通して、サポーターや地域の方の反響といったものはクラブの方々はどのように受け取っていらっしゃいますか。

内野:そうですね。そういった活動をして、皆さんが共感していただいてくれる、応援してもらえるということはクラブとしても、さらにやっていこうという気持ちにもなりますし、クラブも(シャレン!や社会貢献活動を)もっとやっていこうという話が出ています。
自分たちはサッカークラブですけれど、サッカーだけをしていればいいというわけではなく、サッカー以外の活動を通して地域に貢献していかなければならないという想いがあります。
またそれが私たちのような親会社を持たないサッカークラブの生き残る道であり、チームの存在価値や意義を地域の皆さんにも共有していただくことが大事だと思っています。
そして私たちがナビスコカップの優勝や天皇杯準決勝での勝利の際にはサポーターの皆さんからたくさん応援していただきました。大分という地方からでも大舞台で勝つといった形で、サポーターの皆さんからは勇気をもらった、元気をもらえたと言って頂けました。私たちとしてはそういったことも一種の「社会貢献活動」になるのかなと思っています。

Sircle:サッカーにおいても、サッカー以外でも、社会貢献はあふれているのですね。では、そんな地域との関わり合いなどを通して、大分トリニータは今後どんなクラブになっていきたいと考えていらっしゃいますか。

内野:皆さんに応援してもらえることはもちろんなんですけれど、トリニータが生活の一部としてなっていきたいと思っています。食卓の会話で「トリニータ負けちゃったね」「あの選手イケメンだね」でもいいので、生活の中に溶け込んでいくということがチームとして目指しているところでもあります。

Sircle:素晴らしいあり方ですね。地域はもちろん生活の単位でも「大分トリニータ」があふれる姿は楽しみですね。本日は天皇杯決勝を控え、大変お忙しい中ご対応していただきありがとうございました。決勝も応援しています。

大分トリニータ ソーシャルアクション事業部の内野さんへのインタビューを終えて

いろいろな苦難を経た市民クラブである大分トリニータというチームへのインタビューを行えたことはJリーグを知り、学ぶうえでも非常に貴重な機会であったと改めて感じる。
また今回のシャレン!活動でも、大分トリニータらしく、選手が積極的に関わる姿があったことは、クラブがまさに「一枚岩」である証拠だと感じた。
こういった社会貢献に対し積極的に取り組むことだけでなく、試合に勝つことも勇気や元気を与える「社会貢献」だという考えは、当たり前のようで気づけなくなってしまうことでもあると感じる。
昨年の天皇杯準決勝、大分トリニータは川崎フロンターレの猛攻を必死に防いだ。その姿に「社会貢献」の意味があったことを踏まえて、本記事のあとにぜひもう一度観戦してもらいたい。


トリニータプレミアムコーヒー販売HP

トリニータ|プレミアムコーヒーショップ (special-support.com)


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