いつか忘れてしまうから

時間が経てば全部綺麗に忘れてしまうんだ。時間しか解決できないことがある。と伝えたとしても君は「今が1番辛いから今、救われたい。未来なんてどうでもいい。」と言うかもしれないし思うかもしれない。感情はいつだって生ものだ。時間が経てば賞味期限が切れ、腐っていく。この感情はいつ買ったのだろうかといや買ったことすら忘れる日がいつかきっとくる。

綺麗な感情も、美しい情景も、書きたかった文章も、全部全部忘れてしまう。子どもころに人は忘れるから生きていけるのだと聞いたときはなんて陳腐な表現だと感じたが、言葉の重みに気づくのはいつだって大人になってからなのだ。

しかし忘れたからといって身体に刻まれていないとは限らない。時が経ってパンドラの匣が開くように、思い出される日がきたとして、その感情が貴方にとってプラスに作用するのかマイナスに作用するのかもわからない。

血と痛みに満ちた日常を記しておこう。かつてこんなに苦しんだ貴方がいたということを一つ残らず書き残しておこう。貴方はいつか思い出す。未来で幸せな日々を送っている貴方は過去の貴方を見つめて思い出す。その苦しさや辛さが大きければ大きいほど残酷なほど、返って現在の幸福をより一層噛み締めることができるかもしれない。
無論そうなってほしいが未来がどうなっているかは誰にもわからない。そう。生きてみねばわからないのだ。
きっとnoteに記事を書いていたことすら忘れてしまう日々が訪れる。書いた文章も全部全部忘れてしまうだろう。それでいいのだ。かつてそこには生を苦しんだ貴方がいた。掘り起こされるかわからない感情のタイムカプセルを埋めたのだ。

忘れたことすら忘れる日々の中で、綺麗なものを見たときの感動、楽しかったこと、恋、美しさ、孤独、苦しさ、辛さ、全部全部まるごと記して、いつか映画のエンドロールを見るかのように人生を思い出されたら。

貴方の映画と僕の映画を二人だけで観たい。

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