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言葉は人を動かす、言霊の幸ふ国

言葉は人を動かし、人は言葉に動かされる。古代より言葉には力があると信じられ、言霊と呼ばれた。  

私事で恐縮だが、かつて「君ならどこへ行っても大丈夫だよ」と上司から言われたことがある。世間に疎くて働いてきたと思っていただけに、意外だった。しかし、そう言われるとそういう気になるのが、言葉の力なのだろう。勇気づけられる言葉は、人生の道中手形のようなものだ。これで人生を旅していても大丈夫だという気がしてくる。

また、倉敷の土産物店の主人から「あなたはもうかっている。人に使われる人ではない。わたしは人相を見るから」と言われたことがあった。ずっとサラリーマンを続けてきた身には思いがけない言葉だった。自営業は考えたこともなかった。見当違いだと思いながらも、その言葉が心に残り、気になった。そして何かの意味があるのではと考えるようになった。「人に使われない人」という言葉は、人に支配されない人とも解釈できる。そう言われれば、人と合わせていくのが苦手であり、人と迎合するのは好きではない。人に指図されるよりは、自分の意のままにマイペースで働いてきた人間である。次第に当たっていないこともないなと思えるようになった。いや本当は反対だったのかも知れない。あの言葉がそういう風に私を動かしたのかも知れない。言霊に導かれて生きてきたのかも知れない。私の個性と言葉のどちらが親か卵かわからないが、結局は両者相互に作用したのだろう。

良い言葉は良い結果を生み、悪い言葉は悪い結果を導く。言葉は、人を活かし、また殺しもする。私たちは日常的に良い言葉を使っている。「こんにちは」は、「今日は良い日ですね」である。美しい言葉が美しい社会を作っていく。


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